◆No.5.神遊の舞台とテーマ曲

文字数 1,225文字

応仁の乱後、将軍義尚が幕府に背いた六角氏征伐のために湖南の鈎に陣を敷くと、甲賀忍者の三郎兵衛たちは甲賀山中でゲリラ戦を展開する。甲賀忍者の最強無敵の忍術「神遊観」をめぐって甲賀、伊賀、そして幕府が絡み合う……! 甲賀忍者と許されない恋を描いた忍者エンタメ小説『神遊の城』執筆の裏話を、著者・赤神 諒氏が語ります!

物語にも登場する三上山は『近江富士』と呼ばれています。

東海道新幹線に乗って京都から東京へ向かうとき、右手に見えます。

京都駅を出発して間もなく現れる、すっきりした形の三角の山で、すぐに分かります。

物語でも新蔵人に語らせていますが、見る位置により、三上山は「うそ!」と言いたくなるくらい、全然違って見えます。

でも、「富士」と呼ぶなら、やはり山の西にある鈎御所から見る形でしょうか。

鈎御所は、今ではあまり何もなくて、鄙びた田舎にあります。

夢の跡のほうが、いろいろ想像しやすくて、いいでしょう?

衰えたとはいえ、国を統治する将軍の政庁が置かれた場所を「首都」と呼ぶなら、この地は日本史において一年余りの間、首都が置かれたことになります。

ずっと南へ行けば『三雲城』があり、物語に登場させている野洲川ももちろん実在します。

八丈岩は見ごたえあり。忍者たちのように登るのは無理ですが、登らなくても良い眺めを楽しめますよ。

ちなみに作品では夕菅の花を登場させていますが、実際にはないと思います。

一生懸命探しに行かれた方、すみません。

(そんな人、いないって)

少し南の甲賀市へ行くと、近くには『甲賀の里忍術村』や『甲賀流忍術屋敷』もあり、甲賀忍者の雰囲気を楽しめます。

さらに南の『油日神社』は、忍者の聖地。物語では進行の都合上、地の文でちらりと登場させただけでしたが。

最後になりましたが、本作のテーマ曲は Acid Black Cherry の『シャングリラ』です。

物語の最終章を「桃源郷へ」としているのは、そのためです。

執筆しながら耳でしか聴かないため、ABCがビジュアル系なのだという常識を、実は途中まで知りませんでした。現代日本には優れたアーティストが各分野にぞろぞろいらっしゃいますが、yasuさんは稀有の吟遊詩人だと思います。

残念なことに、体調不良のためここ数年、活動を休止されていますが、この場をお借りし、一ファンとして、元気に復帰される日を心待ちにいたしております。

※近江富士と野洲川

赤神 (あかがみ・りょう)

1972年京都府生まれ。同志社大学文学部卒業。私立大学教授、法学博士、弁護士。2017年、「義と愛と」(『大友二階崩れ』に改題)で第9回日経小説大賞を受賞し作家デビュー。同作品は「新人離れしたデビュー作」として大いに話題となった。他の著書に『大友の聖将『大友落月記』神遊の城』『戦神』『妙麟』『計策師 甲駿相三国同盟異聞』 村上水軍の神姫』北前船用心棒 赤穂ノ湊 犬侍見参』『立花三将伝』などがある。

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