第8回/男が孤独な夜になにをしているか

文字数 1,551文字

こちらはインターネットに生息するふしぎないきもの・にゃるらがインターネットと独り暮らしとそれ以外について深夜に執筆している画像付きエッセイです。→@nyalra


第1回はこちらから

 一人暮らしの男が、孤独な夜になにをしているか。これはもう単純明快でして、答えは「えっちな画像・動画集め」です。確実に、そうです。みんな月の光にあてられてちょっとポエミーな気持ちになりつつも、結局はタイムラインに流れてきたえっちなイラストを保存しています。めちゃくちゃブルーになってオレは終わりだ……となっていても、連日の労働に疲れて倒れる直前でも、タイムラインにえっちなイラストが流れてきたらとりあえず保存します。それは確実。


 ボタンを押したら低確率でバナナが落ちてくる装置を前にした猿が、狂ったようにボタンを押し続けるようになった実験を知っていますでしょうか。うろ覚えすぎて細部は適当ですが、とにかくそんな感じの実験があるそうです。インターネットもそれと同じで、際限なくえっちなイラストや動画が流れてくる。僕は三次元のエロコンテンツに興味を持たない二次元限定だけれども、タイムラインを更新するたび扇情的な表情をしたキャラクターのイラストが必ず何枚か表示されます。無論、気に入ったら保存ボタンをタップして「迎え入れる」。その快楽を覚えてしまうと、バナナを求めてボタン連打する猿と同じで、どんどんえっちなイラストを求めてネットサーフィンを開始しちゃうんです。あまりに自分好みすぎる作品に出会う確率は極稀ですが、だからこそ数自体は無限にある電子の海に飛び込んでいく。深夜の男性は、だいたいこんな感じのことを繰り返すうちに朝を迎える。


 授業中ぴくりとも表情を変えない鬼教師も、今をときめく天才クリエイター様も、夜に一人になったら、ふとしたタイミングで自然とえっちなイラストを集める旅に出てしまう。なんなら締め切り前の作家も、恋人と別れる直前で死にたさあふれる少年も、静まり返った夜には、とりあえずえっちなイラストをチェックする。全ての鬱や悲しみも、まずはそれから考える。ボタンを連打するより先に自分が動いた方が早くバナナが手に入ると知っていても、目の前に存在する「ご褒美の可能性」を探究する腕が止まることはない。それすらできなくなっていたら、かなり精神を病んでいる証拠なので、まずは病院へ診察を受けることをお勧めします。


 SNSの中毒性の理由の一つに、「ちょっと利用すると即アダルトなコンテンツにぶつかる」ことが、程よい刺激になってしまうことはあると思います。Instagramは違うけど。TwitterとTikTokは、もう……。自分から「えっちなものを探すぞ!!!」って気持ちではダメなんですよね。あくまで、タイムラインを更新したらたまたまリツイートが目に入った。この偶然性が重要なんです。数あるどうでもいい発言の中から、急にお宝が出現する快感。次の瞬間、再び同じ刺激を得ようと必死でスマホに張り付く。なんと悲しい生き物なのだろうか……。深夜特有のポエミーな文章を投稿したというのに、僅かな待機時間で視界の端に映ったえっちなイラストをきっかけにして、次の瞬間にはもうえっちなイラスト収集に夢中になっている。悲しい……悲しいけれど、これが生物として正常である証なのだから、こんな夜こそが真に大切なものとも言えますね。

【プレステやサターンのソフト】

大事に保管してあるプレステやサターン時代のソフトたち。ほとんどギャルゲー。好きなRPGなどは急な再プレイ欲を我慢できるから売ってしまったけれど、思い出のヒロインには、急に会いたくなるたび即ディスクを取り出して起動してしまう。

来週も月曜深夜に更新予定です。それでは、おやすみなさい。

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色