必読《必死すぎ新人物書きの七転八倒》

文字数 1,147文字

 俄然、気張った。崇め奉る中山七里先生も寄稿されているコーナーに自分のような新人にも原稿執筆の依頼がきたとあっては。
 たかが800字。中山七里先生なら、右から左へとさらりんちょと書き抜けてしまうかもしれない。しかし、この800字、ぼくにとっては「我が力の全てを今こそ全集中一点投下すべき人生を賭けた戦い」である。
 深夜3時、必死に考えた。
 何を描けば、自分の記事が最優先で読まれるか?
 参考にしようと思って開いた記事のタイトルは「ムチャぶり光文社ふたたび」。そして書き手は図らずも中山七里先生であった。さすがである。どんなタイトルをつければ読者の目を一撃必中で引き付けるのか、ここでも先生のリーダビリティの真髄を見た気がした。
 そこで、ぼくはこの記事タイトルを「必読〈必死すぎ新人物書きの七転八倒〉」とした。
 どんな七転八倒か、人はそこに興味を喚起されるに違いない。ならば自分のあがく姿をそのまま描けばいい。しかも姑息なことに「必読」の文字まで入れた。人は選択肢が多すぎて迷ったとき「必読」と言われれば素直に従ってそこをクリックしてしまうに違いない。
 はい、このページを開いたあなた、ぼくは今、数多ある記事の中から、あなたの思いを引き付けることに成功したのかもしれません。だとしたら、そんな物書きがどんな小説を書いているか今、多少は興味が湧いてきたことでしょう。
『ドール先輩の耽美なる推理』は言わばDOLL界のシャーロック・ホームズが活躍する連作短編ミステリーです。様々な人形に絡む推理があり、論理的な絵解きがあり、真摯なドラマへ着地します。読んでください。ぼくは皆さんに読んで欲しすぎて、PVも自作して各SNSやYouTubeで公開中です。敬愛する創作人形作家・清水真理先生にも帯コメントを自らお願いしたほどです。なぜお前はそんなに必死かって? ここに面白い小説があるからです。お人形という、誰もが知っている、でもよくは知られていない、とても魅力的な世界があるからです。ぼくとあなたの間にはご縁があったと思って今すぐお迎えください。ドール先輩を広めてください。どうかお願いします。



関口暁人(せきぐち・あきひと)
2019年エブリスタ小説大賞、第1回光文社キャラクター文庫大賞を本作の《後日譚》となる『ドール先輩の修復カルテ』で受賞。
好きなミステリーは「古畑任三郎」「シャーロック・ホームズ」「明智小五郎」の各シリーズ。最初の1ページから最後の1行まで引き込む小説を好む。他の作品に、亡き大切な人を生き返らせてくれる刑事が活躍する推理小説「神様刑事」シリーズ(TOブックス)がある。

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