テレビドラマへの思い

文字数 1,026文字

 NHKの連続テレビ小説・通称朝ドラに対抗するような民放の昼ドラも一時期、新人女優の登竜門だった。
 僕は昼放送のTBS系のポーラテレビ小説『やっちゃば育ち』で中田喜子が実質デビューを飾ったことをよく覚えている。この帯は丘みつ子、岡江久美子、名取裕子、宮崎美子、賀来千香子などを輩出している。
 またTBS系の花王愛の劇場では樋口可南子の『愛の旅路』に引きこまれた。
 夕方にはドラマの再放送もよく観た。団令子、中村竹弥の日本テレビ『嫁ゆかば』は夢中になって観ていた。
 江夏夕子の『お嫁さん』も忘れがたい。尾崎奈々、早瀬久美などシーズン7まで続いた。 当時の子供たちは当然のようにテレビドラマを観ていた。
 今はテレビ以外の娯楽が増えてテレビドラマ視聴に費やす時間は減った。もちろんNetflix(ネトフリ)などのストリーミング配信サービスやWOWOWなどの有料放送で有力ドラマの製作は続いているが昔のように放送の翌日に学校でドラマをみんなが話題にするような浸透力はなくなった。
 多様になった娯楽の中でもスマホの出現は大きい。スマホで地上波ドラマ、ネトフリ、WOWOWドラマを観る人もいるだろうが、やはり多くの時間はドラマ以外のゲームや動画サイトなどに費やされるのではないだろうか。
 そんな状況の中で現在もテレビドラマは作られ続けている。
 全盛期に比べると視聴率はかなり下がっているが地上波に加えBS放送や有料放送、ストリーミング配信サービスなどもドラマ製作に参入している。
 本作は不可能犯罪を二編収めた本格ミステリ作品集ではあるが奮闘を続ける過去から現在に至る無数とも言えるテレビドラマにエールを送った作品ともなっている。



鯨統一郎(くじら・とういちろう)
1998年『邪馬台国はどこですか?』でデビュー。傑作・怪作・奇作・話題作を連発する、本格界随一のトリック・スター。著書に『努力しないで作家になる方法』『作家で十年いきのびる方法』『女子大生つぐみと邪馬台国の謎』『三つのアリバイ 女子大生桜川東子の推理』『徳川埋蔵金はここにある 歴史はバーで作られる2』『金閣寺は燃えているか? 文豪たちの怪しい宴』『カルトからの大脱出』などがある。

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