#30秒後にホロリSNSばなし①

文字数 2,356文字

あるドッキリ動画を生配信してしまったばかりにアイドル炎上!

ネットの情報は何が本当で何が嘘なのか? SNSが持つ怖さを多くの読者に突きつけたサスペンス『#柚莉愛とかくれんぼ』(真下みこと・著)が講談社文庫より刊行されました。


怖いとわかっていても、便利さを知ってしまった今では、SNSはなかなか手放せないもの。そこでみなさんに一服の清涼剤をと、SNSでの素敵なエピソードを編集部での雑談とあわせてご紹介しましょう。


本書読了後にコラムを読んでホロリとするか、コラム読了後に本書を読んでゾクッとするか。読む順番はあなた次第。

【WさんのSNSいい話】

10歳で海外に引っ越し、20数年ぶりに帰国した。


初恋の人とどうしても再会したくて、昔住んでいた場所に行ってみたりFacebookを検索してみたりしたが、もう昔の知り合いはどこにもいない。


しょうがないよな、と一度は諦めたが、それから数年、ふと思いついてTwitterで情報募集したところ、昔の同級生から連絡が! 


同級生を通じて、初恋の人と再会した。彼はおじさんに、私はおばさんになっていたけれど、私は昔、この人が大好きだったんだなぁ、としみじみ思った。


会えてよかった。ずっと幸せでいてね。

(編集部の片隅で)

A「最近、自分史を書くという人が増えているらしいんだって。目的は自分の人生が好きになるためだっていう説明がとあるサイトにあったんだけど」

B「最近、もの覚えが悪くて、自分の人生なんてたどるのが大変だよ」

A「だから、WさんみたいにSNSで友人を探して、思い出すのって効果的じゃない?」

C「このエピソードって、初恋の人との再会の喜びだけじゃなくて、会えてよかった、ずっと幸せでいてねと言っているところが素敵だわ。Wさんはぜったい素敵な人生を歩んでいる人なんだと思う」

A「WさんにとってSNSはご自身の人生が好きだと気づけたツールになったかもしれないね」

B「まぁ俺が初恋の人と再会したら、背徳の香りプンプンさせるけどな」

C「ぜ~ったいSNS使うなあああ

【MさんのSNSいい話】

コロナで保育園が閉園になり、シングルマザーの私は子供を抱えて毎日、家に二人っきり。


子供は可愛いけど、どこにも行けず、誰とも会えず、世界が壊れるんじゃないかとすら思った。


そんな時、知り合い程度のママ友に誘われて入った、SNS上の情報交換場。


正直、ドラマや小説のイメージがあって、ママ友と本気で話せるなんてまったく思っていなかったが、みんなが親身に話を聞いてくれて、本気で慰めてくれた! 


彼女たちの存在がなかったら、あの孤独な数ヶ月は乗り切れなかったと思う。

(編集部の片隅で)

C「通天閣の<射っちゃダメだよ>ってSNSで広がったデマ画像、ひどくない?」

A「信じてしまった人から抗議があったみたいだね。巧妙すぎて本当に困るよ」

C「震災の時だってコロナで外出控えていた時だって、SNSで流れてくる情報におどらされてばっかりだったでしょ」

A「何を信じていいのかわからなくなるから、ますます孤立してしまうし」

C「だからSNSだったとしても、顔を知っている人たちとの交流は大切よね」

B「絶対そう!」

A「Mさんがママ友とつながることができて本当によかった。同じ立場で同じ苦労もあっただろうからね。苦しい時のお互いさま精神、SNSって捨てたもんじゃない」

B「お互いさまって素晴らしい! みんなも毎日SNSでつながるべきだ!」

A「BさんがSNSの良さに気づくなんて感無量。Cさんもぜひぜひ!」

C「お~い騙されるなあああ、リモート飲み会やりたいだけに決まってるぅぅ

【OさんのSNSいい話】

飼っていたイグアナがまさかの脱走! 


慌てて家の周りを探したが、見つからない。

イグアナの行動範囲なんて限界がありそうなものなのに……。


中学生の息子に言われ、半信半疑(いや、1割信で9割疑くらい)でSNS上で捜索願を出した。


でもイグアナだし、特徴もないし……と思っていたのだが、ものすんごい勢いで拡散され、無事に発見! 


ネット民舐めんなよ、と心から思った。

(編集部の片隅で)

A「今でもたまに電柱に貼られたペット探しの紙を見かけるよね」

C「もしその子を見かけたら連絡してあげたいなって思うんだけど、どうしてもすぐに忘れちゃって……」

A「だから誰もが手元で情報を見られるSNSでの捜索願はお見事。やるなあ、息子さん」

C「知らない人たち同士がOさんのペットを捜したって一体感になんだかウルっときちゃった」

A「ほんのわずかな事件のせいで、ネット民がマイナスのものとして捉えられることが多いでしょ。いい話もどんどん拡散してほしいよね」

B「よしっ、『#柚莉愛とかくれんぼ』の面白さも拡散してもらおう」

A「ええええ、ここで宣伝ぶっこんでくるかあ」

C「許す!

真下みこと『#柚莉愛とかくれんぼ』

第61回メフィスト賞受賞作、ついに文庫化!

3人組アイドルグループのメンバー・青山柚莉愛。

メジャーデビューを目指すも売り上げ目標を越えられず焦る日々。

ある日マネージャーの提案で動画配信ドッキリを実行し、ファンの混乱がSNSで広がっていく。

騙されたファンの怒りの矛先はマネージャーや事務所ではなく柚莉愛本人に向かってしまい――。

真下みこと(ました・みこと)

1997年埼玉県生まれ。2019年『#柚莉愛とかくれんぼ』で第61回メフィスト賞を受賞し、2020年デビュー。著書に『あさひは失敗しない』がある。またアンソロジー『Day to Day』に掌編小説「40分の1」が収録されている。シンガー・みさきとの「読む音楽」と「聴く小説」を届けるボーダレスデュオ「茜さす日に嘘を隠して」では小説執筆と作詞を担当、活躍の場を広げている。

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