【前編】胸熱! レジェンド作家たちが童心に帰る「怪獣お茶会」に潜入!

文字数 3,617文字

夏も盛りの8月某日、リモート回線を通して、秘密裡にとある「お茶会」が催されたという。

参加していたのは、綾辻行人、有栖川有栖、京極夏彦――。

レジェンド作家たちが前のめりに語り合っていたのは、あの二大怪獣が激突したハリウッド映画についてだった!?

観てきましたよ! 「ゴジラVS.コング」

綾辻  有栖さん、「ゴジラvs.コング」は観にいったんですか?


有栖川 観てきました。2、3日まえに。京極さんは?


京極    観ました。観て3日後くらいというと、いちばん語りたい衝動が濃ゆい時期じゃないですか。


有栖川 そうですね~、正直言うと良くも悪くも「期待通り」だったという感じです。


綾辻   僕は文句なしに楽しめました。ワクチン2回目を接種して2週間待って、「よし、行くぜ」という感じで小野さんと一緒に行ったんですが、2人とも大満足。


有栖川 2大スターだから、ゴジラについてもコングについてもよく知っているじゃないですか。怪獣ものの醍醐味のひとつ、未知のものと遭遇するわくわくはなかった。


綾辻   それはそうですね。コングの設定は「髑髏島の巨神」で描かれているし、ゴジラは「GODZILLA ゴジラ」と「キング・オブ・モンスターズ」の2作がある。3作観ていれば、それぞれの背景はもうわかっているから、説明は最小限でいい。そのぶん両雄の闘いに全力集中できていて、なんとも清々しいというか、痛快でした。コングは基本、殴る蹴るだけの怪獣でしょう?


京極   まあ、頑張っても囓るくらいですね。


綾辻   そのコングとゴジラがどんなふうにやり合うんだろう、と心配していたんだけど、迫力のある肉弾戦でしたね。それをベースにしながら、いろいろ工夫も凝らしているし。


有栖川 闘うシーンって飽きません?


綾辻  飽きなかったですね。もっと長く観ていたかったくらい。怪獣が出てきて暴れる、2匹以上いれば戦う、これを大画面大音響で観られれば、それでいいじゃないですか。細かいことは気にしない、というか、気にならない作品でしたね、「ゴジラvs.コング」は。


京極   ふふふ……CGで有島一郎を出して欲しかったですが。


有栖川 今回、闘いの舞台はまた香港でした。ビルは大きくなってましたね。


京極   また派手なビルでしたね。フレームとかピカピカしちゃって。香港から地殻直通のゴジラ放射線流はちょっと無理筋ですごいなー、と思いましたがね。


綾辻   きょうび「地球空洞説」を真面目にやっているところからして、このシリーズは可笑しいよねw


有栖川 地球空洞説を信じている人、世界中に今もいるらしいじゃないですか。


京極   まあ、天動説支持の人もいるくらいですから。います。

怪獣たちとのファーストコンタクト

京極  綾辻さんはファーストゴジラはなんですか?


綾辻  最初は……なんだったかなあ。テレビで観た「三大怪獣 地球最大の決戦」かな。いや、「モスラ対ゴジラ」だったかもしれない。


京極   僕は劇場で「怪獣総進撃」を観たのが最初の動くゴジラです。予備知識はあったんですが。東宝チャンピオン祭版の「怪獣大戦争」が最初かと思ってましたが、絵日記に描いたのでたぶん間違いない。


有栖川 私もはっきりはわからないけれど「三大怪獣」かもしれないですね。幼稚園のとき「ウルトラQ」を観て、小学校1年生のとき「ウルトラマン」の放送が始まったんです。リアルタイムで「少年マガジン」でウルトラマンのグラビアを見て、「何これ? 一体何が始まるん?」と思っていたら、あれが始まった——というわけで、絶妙の年齢で強く影響されました。


綾辻   僕は有栖さんより1つ年下なんだけど、最初の怪獣体験は「ウルトラQ」でしたね。「ゴメスを倒せ!」のゴメスとリトラ。


京極   記念すべき第1話じゃないですか。


有栖川 幼心に怪獣が刷り込まれているんですよ。空を見たらラドンが飛んできそうだし、船に乗ったら「今襲われるのはいちばん嫌」と思ったり、ビルを見たら「あの陰から怪獣が出てきて、このビルに体当たりするんだろうな」と思ったり。そんな妄想が自動的に発動するような子供時代でした。結構大きくなってからも想像したりしてましたよ。恐怖とロマンが一体化したようなものです。地中から奴ら、きますからね。


京極   奴らはどこにでもいますからね。


有栖川 偏在してるんですよ。街の中でも山へ行っても、海へ行っても。ヴァンパイヤやゾンビはいない空間あるけど、怪獣だけはどこからでも出てくる。


京極   僕は「ウルトラセブン」の27話あたりで小学校に入学しました。「ウルトラマン」「キャプテンウルトラ」は小学校に入る前ですね。「ウルトラQ」は再放送だったはずです。物心つく前にはどうも時代劇を見ていたようですし。


有栖川 京極さんの年齢だと「仮面ライダー」の世代ですよね。


京極   それはそうですね。「帰ってきたウルトラマン」「宇宙猿人ゴリ」に端を発する

第2次怪獣ブームが、仮面ライダーの人気拡大に伴い等身大変身ヒーローブームへと移行していく、そのただ中にいました。僕が小学校4年生になったくらいの頃ですね。巨大ヒーローものが粗製乱造の末に徐々に下火になっていった感が、リアルタイムであります。


有栖川 スケールダウンしているのがなあ。ショッカーの怪人ではビルは潰せないでしょう。なんか空想がちょっと小さくなった気はしますね。


綾辻  等身大の仮面ライダーは子供が「ごっこ遊び」をしやすかった、というのがありそうですね。ブームの要因として。


有栖川 確かに。


京極   放映開始当初「仮面ライダー」は怪奇ドラマでしたけどね。


有栖川 改造人間というのがすごく陰惨な感じがしました。


京極   陰惨ですよ。陰惨と孤独が売りだったんですから。仮面ライダーには、いわゆる「怪獣魂」はありませんから。あれは別の魂。


綾辻   出た、怪獣魂!


京極  いやいや、綾辻さんにも有栖川さんにも怪獣魂はあるはずですが。


綾辻   前にその言葉を聞いたときから気になっていたので、きょうは京極さんに怪獣魂の定義してもらおう。

レジェンド作家たちに宿るという「怪獣魂」とは――!?

気になる続きは明日公開! 乞うご期待!

綾辻行人(あやつじ・ゆきと)

1960年京都府生まれ。京都大学教育学部卒業。同大学院修了。’87年9月『十角館の殺人』で作家デビュー。「新本格ムーヴメント」の嚆矢となる。「館」シリーズで本格ミステリシーンを牽引する一方、ホラー小説にも意欲的に取り組む。’92年『時計館の殺人』で第45回日本推理作家協会賞を受賞。2018年度第22回日本ミステリー文学大賞を受賞。

あのとき、僕は何を見てしまったのか?


兄の急死に不審を抱いた医学生・翔二は、元予備校講師・占部の協力を得て事件の真相を追う。「ね、遊んでよ」……謎の言葉とともに残忍な犯行を重ねる殺人者の正体は? 翔二の心に封印されてきた幼い日の記憶の、恐るべき真実とは? 「館」シリーズと並ぶ人気シリーズの第三弾、新装改訂版で再登場!

有栖川有栖(ありすがわ・ありす)

1959年大阪府生まれ。同志社大学法学部卒業。’89年『月光ゲーム』でデビュー。’03年『マレー鉄道の謎』で第56回日本推理作家協会賞、’08年『女王国の城』で第8回本格ミステリ大賞、’18年「火村英生シリーズ」で第3回吉川英治文庫賞を受賞。本格ミステリ作家クラブ初代会長。近著に『濱地健三郎の幽たる事件簿』、『論理仕掛けの奇談』など。

殺害現場から消えた一枚のメイプルリーフ金貨が、

臨床犯罪学者・火村英生を真相に導く。


倒叙形式の表題作「カナダ金貨の謎」ほか、火村とアリスの出会いを描いた「あるトリックの蹉跌」、

思考実験【トロッコ問題】を下敷きにした「トロッコの行方」など趣向を凝らした五編を収録。大人気〈国名シリーズ〉第10弾!

京極夏彦(きょうごく・なつひこ)

1994年『姑獲鳥の夏』でデビュー。’96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞受賞。この二作を含む「百鬼夜行シリーズ」で人気を博す。’97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、’04年『後巷説百物語』で直木賞、’11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞を受賞。’16年遠野文化賞、’19年埼玉文化賞受賞。

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