2022年1月の新刊!

文字数 1,675文字

敏腕出張書店員・内田剛さん(人呼んで「アルパカ」さん)に、今月の文庫新刊が分かるリリカル・エッセイを書いていただきました! 月一更新です。お楽しみください!(tree編集部)

書き手:内田剛


アルパカにしてブックジャーナリスト。POPを描き続け、王の称号を得る。最近では動画にも出たりして好きな小説を布教しているらしい。


Twitter:@office_alpaka

年明け早々『電気じかけのクジラは歌う』。



『十七八より』お年寄りまで大騒ぎの幕開けだ!

さあ五十嵐貴久『スタンドアップ!』。待ちに待った年明けだ。宇佐美まこと『熟れた月』には永井路子『寂光院残照』。今年こそは素敵な一年になりますように。青山文平『跳ぶ男』になりたいと初詣に行けば中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』の大行列で群ようこ『じじばばのるつぼ』。そのまま町内会の寄り合いになだれ込んで三上延『同潤会代官山アパートメント』のネタから原田ひ香『おっぱいマンション改修争議』に突入。しかし松尾清貴『ちえもん』は一人もおらず、話はいつも稲垣栄洋『一晩置いたカレーはなぜおいしいのか』となる。阿川佐和子『いい女、ふだんブッ散らかしており』これ以上は埒があかず、奥田亜希子『彼方のアイドル』と岩井圭也『永遠についての証明』を考えながら赤川次郎『交差点に眠る』しかないだろう。


竹本健治『狐火の辻』は青崎有吾『早朝始発の殺風景』。街にはマッシミリアーノ・ヴィルジーリオ『見捨てられた者たち』や重松清『木曜日の子ども』があふれて瀧森古都『悲しみの底で猫が教えてくれた大切なこと』を唱えている。寅年だけれども朱川湊人『アンドロメダの猫』だけでなく他の動物たちも元気だ。逸木裕『電気じかけのクジラは歌う』ことをやめずに堂場瞬一『犬の報酬』を待っている。これは『どうぶつえんの怪人』でも登場しそうな勢いだ。気分転換に高野史緒『大天使はミモザの香り』を嗅いで恩田陸『歩道橋シネマ』でも観ることにしよう。


寒い真冬にはあさのあつこ『烈風ただなか』。風は若竹七海『みんなふこう〜葉崎は今夜も眠れない』へと吹いている。蒼月海里『怪談物件マヨイガ』から赤川次郎『幽霊解放区』に抜け出たもののスティーブン・キング『心霊電流(上下)』から逃れられない国木田独歩『運命』だ。小川糸『針と糸』は安全なはずだが木原音瀬『コゴロシムラ』もあるのでここはもうロアルド・ダール『少年(新訳版)』から乗代雄介『一七八』にかけてハーラン・コーベン『森から来た少年』へと一気に遠野遥『改良』し、石田衣良『不死鳥少年 アンディ・タケシの東京大空襲』になるしかない。しかし肝心の染井為人『正体』は三国美千子『いかれころ』の赤松利市『ボダ子』が新庄耕『地面師たち』を恐れてこざわたまこ『君には、言えない』。白井智之『そして誰も死ななかった』ことだけがせめてもの救いだ。


年明け早々バタバタすれば空腹も堂場瞬一『ピーク』となる。人は誰もが坂木司『おやつが好き お土産つき』。円地文子『食卓のない家』もあるから遠田潤子『ドライブインまほろば』に立ち寄ってのどが渇いたら難波里奈『純喫茶コレクション』をはしごしよう。今村夏子『父と私の桜尾通り商店街』には掘り出し物もありそう。山本文緒『パイナップルの彼方』には谷瑞穂『めぐり逢いサンドイッチ』が待っている。なんだか森沢明夫『ぷくぷく』気分になってきた。


いろいろあってもやはり2022年も頼るべきは本。金子ユミ『水底図書館 ダ・ヴィンチに手稿』を探したあとに藤崎彩織『読書間奏文』で目星をつけて伊坂幸太郎『夜の国のクーパー【新装版】』に浸ろう。畑野智美『大人になったら、』読もうと思っていたいぬじゅん『いつかの冬、終わらない君へ』のメッセージはきっと久和間拓『エースの遺言』。佐藤雫『言の葉は、残りて』も中江有里『残りものには、過去がある』。佐藤愛子『凪の風景』が見えればアーナルデュル・インドリダソン『厳寒の町』にも春が来るけれども、池田清彦『もうすぐいなくなります 絶滅の生物学』ので筒井康隆『人類よさらば』。


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