学生が読んだ!瀬那和章『パンダより恋が苦手な私たち』②

文字数 1,546文字

現役の大学生が本を読んで、率直な感想を語ります!

今回は瀬那和章さんの『パンダより恋が苦手な私たち』です。


どんなお話かは、漫画で読む『パンダより恋が苦手な私たち』でチェック!

『パンダより恋が苦手な私たち』感想/ M.K


歌や小説、映画に漫画、ゲーム演劇に至るまで、古今東西、この世の娯楽の多くには恋愛というものが絡んでいる。多くの人の関心を長きにわたって集め続けている恋愛という巨大コンテンツ、そのパワーを認めざるを得ない。


『パンダより恋が苦手な私たち』はまさにそうした恋愛ど真ん中、恋愛相談コラムを書くハメになってしまった主人公のお話だ。大筋としては、野生動物の求愛行動にしか興味を示さない俗に言う「残念なイケメン」で大学教員の椎堂司と、仕事に悩む雑誌編集者、柴田一葉が出会って互いに変化していくというもの。読む前は恋愛づくしの設定から推測してラブコメディーなのだろうか?と思っていたが、読了後の今、これはいい意味で簡単にジャンル分けできない作品だと感じる。


本作が「ラブコメだ」「恋愛小説だ」と簡単にジャンル分けできないのには、いろいろ理由があるだろう。例えば作中で描かれる一葉の感じている行き詰まり、かつては時の人だったモデルの秘密、椎堂先生の過去など、しっかりと登場人物各々がこれまで歩んできた人生など、恋愛の枠には収まらない部分が描かれていること。一葉だけではなく、一葉の友人や姉そして職場の先輩など、お互い好きだから簡単に、はい解決とはいかない恋愛事情が描かれていること。また、一葉が恋愛大好き!というキャラではなく、どちらかというと世にあふれる恋愛に胸やけしてしまうタイプである点も、本作に「恋愛小説」というラベルが似合わない要因だと思う。恋愛観や仕事観で彼女に共感しながら読める人は多そうだ。


そしてなにより、本作最大の「恋愛小説」とは大いに離れた特徴が、野生動物の求愛行動について、テレビなんかでなかなか触れないニッチな情報を知れることだ。動物園・水族館で役立つこと請け合い。したり顔で家族友人に動物知識を披露しよう!


そんないい意味でジャンル不明の『パンダより恋が苦手な私たち』、嬉しいことに2巻も刊行予定だ。椎堂先生と一葉のこれからはもちろん気になるが、果たして次巻はどんな動物たちの求愛行動が登場するのだろうと思うと待ちきれない。こうして読者がまんまと椎堂先生化していくのだ。

ちょっと高校時代の生物の教科書探してくる……。

変人に、恋をした!

仕事のやる気ゼロ、歴代彼氏は1人だけ。
編集者・一葉は恋愛コラムを書くはめになり、「専門家」に取材を申し込むが――!?


雑誌編集者・一葉は悩んでいた。
憧れのモデルに恋愛コラムの連載を依頼するも、原稿を代筆する羽目になったのだ。
交際経験が少なく自信がない一葉は、
「恋愛を研究するスペシャリスト」の噂を聞いて大学を訪れる。
だが、そこで出会ったイケメンはとんでもない変人で!?
恋のヒントが詰まったシリーズ第1作!

☆登場人物紹介☆
柴田一葉:カルチャー雑誌の編集者。ファッション誌志望で、今の仕事にやる気が出ない。
椎堂 司:大学教員。「野生動物の求愛行動」にしか興味がない変わり者。イケメン。
灰沢アリア:伝説のスーパーモデル。女王様気質で、周囲をたびたび振り回す。


瀬那 和章(セナ カズアキ)

1983年兵庫県生まれ。2007年に第14回電撃小説大賞銀賞を受賞し、『under 異界ノスタルジア』でデビュー。真っ直ぐで透明感のある文章、高い構成力が魅力の注目作家。他の著作に、「花魁さんと書道ガール」シリーズ、『雪には雪のなりたい白さがある』『フルーツパーラーにはない果物』『今日も君は、約束の旅に出る』『わたしたち、何者にもなれなかった』などがある。

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