●インタビュー 高岡ミズミ先生&沖 麻実也先生「VIP」2ndシーズン完結記念!

文字数 4,757文字

「VIP」2ndシーズン完結記念
高岡ミズミ先生スペシャルインタビュー

−−10冊をかけ、ついに2ndシーズンが完結です。ずばり、今の気持ちをお聞かせください。

高岡ミズミ(以下高岡) たぶん緊張の糸が切れた状態です。思えばなにをしていても頭の隅っこに「VIP」がずっとあったんですが、それがなくなったことに最近気づきました。既刊の付箋がほとんどなくなったのと似たような感覚でしょうか。「VIP」から離れるわけではないし、現在進行形で書いてもいるんですが、やはり最終巻だな、と。ほっとしたというより、気が抜けたと言ったほうがいいかもしれません。きっと発売日が近づくと、一気に緊張すると思いますけど。

−−2度目の大きな区切りですが、ストーリー展開は先生の予想(計画)通りでしたか?

高岡 1stシーズンは確か『VIP 蠱惑』のあたりでラストシーンと久遠の台詞を決めてました。久遠の入れ札の結末やBMが焼失すること、区切りになる10冊目の『VIP 残月』というタイトルもわりと何巻も前から考えていました。2ndシーズンでは変化をと意図的に真っ白な状態で書き始めました。おかげで毎回どきどきでした(『VIP 抱擁』を書く際には和孝が海外へ行くことは決めていて、今巻『VIP 祈り』で重要になってくるキャラの名前を出しているのですが)。担当さんに提案や助言をしていただきつつ、その都度修正を加えて道筋を定めていった感じです。そういう意味では流れに任せたとも、予想どおりとも言えるかもしれません。『VIP 残月』の巻末SSのタイトル「月の雫」をバーの店名にしているのは、ささやかなお遊び? こだわり? です。

−−2ndシーズンでは和孝は転職し、1stシーズンと比べさらに成長や変化が見られました。執筆に関してなにか心がけたことはありますか?

高岡 変わらない部分のほうを意識していたかもしれません。数々のトラブルを乗り越えてそれなりに学習して、自分の城を持って、仲間を得たことで立場も考え方も変わった和孝ですが、やはり根っこの部分は暴れ馬なので。相手が誰であろうとムカついたときは悪態をつくし、久遠に愚痴をこぼすし、一度こうと決めたら突っ走ります。久遠もずっと変わらないようで、和孝の変化によってやはり接し方はずいぶんやわらかくなったと思います。『VIP 接吻』で記憶をなくして以降は、中身は半分25歳を心がけました。あと、全体的なことを言えば、ラブとのバランスでしょうか。特に後半にいくほど裏社会パートの比重が大きくなってしまいがちだったので、そうならないよう気をつけました。

−−久遠は大変な困難の中でも揺らがない姿が印象的です。どんなところに気をつけて書かれたのでしょうか?

高岡 揺らがない部分は存外書きやすい半面、その久遠が揺らいだときにどういう反応になるかのほうは気をつけました。慌てたり狼狽えたりしないけど、じつは自覚している以上に衝撃を受けているという部分が伝わっていることを祈るばかりです。

−−2ndシーズンで、お気に入りのエピソードを教えてください。

高岡 一巻にワンシーン、お気に入りのエピソードと台詞を作る努力をしています。それがあるのとないのとでは自分のテンションが変わるので。……全編通してだとどこだろう。ここはあえて沢木や上総のパートを上げておきますか。近い人間が複雑な思いを持ちながらも主人公たちを見守っているというシーンは好みです。ふたりの場合は完全に久遠側に立っているというのがポイントかもしれません。

−−2ndシーズンのカバーや挿絵で、特にお気に入りの一枚を教えてください。

高岡 カバーイラストは『VIP 流星』……と迷ったすえ『VIP 抱擁』です。と答えたいところですが、今巻『VIP 祈り』を拝見したあとではとても決められなくなりました。どれもふたりの表情や空気感に、胸がきゅうっとします。言葉は不要って感じがしてとても素敵ですよね♥ 挿絵はたくさんあってさらに迷うのですが、ここはやはり『VIP 熱情』115ページを上げておきます。あと『VIP 溺愛』の83ページもすごくないですか? 立っているだけでこの迫力。そして、榊と田丸の格好よさには「こんなキャラにしてごめん」と謝りたくなりました。

−−さあ、気になる続編です。電子オリジナルの新シリーズが4ヵ月連続で登場です。

高岡 過去に配信された電子オリジナルとはちがうものにしようと担当さんとコンセプト等を話し合いました。これまでは本編の補充メインだったのですが、今後は『VIP 祈り』のその後を書いていくスタイルになるかと思います。短編のよさを生かしつつ、バー「月の雫」(12月24日配信の『電子オリジナル VIP 女帝の純情』でやっとオープンします)を軸にして進めていけたらいいなあ、と。あと、ずっとリクエストいただいていた上総(と谷崎)の話も入れていきたい所存ですので、和孝や久遠、脇キャラに会いにきてくださるととても嬉しいです。どうぞよろしくお願いします。

−−読者の皆さまへメッセージをお願いします。

高岡 一口に10巻と言いましても、2ndシーズンが始まって3年と4ヵ月。1stシーズンからだとざっと16年以上。これほど長い間おつき合いくださった皆様には感謝してもしきれません。初ノベルスから5年目になる節目の年に第1巻が発売されたので、私にとってはこれまでのBL作家人生そのものだと言えるシリーズになりました。これもすべて手にとってくださる皆様と担当さんに恵まれたおかげだと、自身の幸運を噛み締めているところです。「VIP」のような長きにわたるシリーズは最初で最後だと思うと感慨もひとしおですが、ここでおしまいではありません! ひとまず来月、電子オリジナル第1弾が配信される予定になっていますので、今後の展開にも注目していただけましたら幸せです。いままで本当にありがとうございました。そして、これからもぜひ見守ってやってくださいませ。

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「VIP」2ndシーズン完結記念
沖 麻実也先生スペシャルインタビュー

−−毎回、美術絵画のような美しさと評判のカバーイラストです。インスピレーションを得る秘訣はなんでしょうか?

沖 麻実也(以下沖) まずはいただいた小説をじっくり読ませていただきまして、そこから出てくるもの(特にキャラクター達)を絵にできたら……と思っております。あと、時折編集部の方からテーマ的なお題を頂くこともあります。そういうリクエストは、楽しくてかなり燃えます(笑)。いつも、読者の皆様や関係者諸氏が喜んでくださる絵を描きたい、描ければいいな……と願っております。

−−2ndシーズンからのイラストのご担当は難しい面もあったかと思いますが、「VIP」の装画でいちばん心を配ったのはどんなところですか?

沖 久遠さん! 久遠さんを渋く格好良く描くこと(ツヤ消し&マットな感じで)。他のキャラにも言えることですが、前任の方の渋くて格好いいイメージからあまりに離れすぎては……と思いつつも、自分の絵柄的にどうしようもない所もあるので、そこはもう高岡先生や編集の方々の「大丈夫ですよ」というお言葉を信じて描かせていただいておりました。それでも一番最初の方は、久遠さんなど今見ると「……あれ、ちょっと違うかも」と思うようになったので、そこはもうホントに申し訳なかったなあ……と。

読者の方々には、長年脳内でセッティングされインプットされたビジュアルがあると思うので、それがガラッと変わってしまうのはしんどいしストレスだろうなあと申し訳なく思いつつも、色々な諸事情があって二代目を任されたからには、皆様にも作品にとっても「これはコレでありかな」と、少しでも受け入れていただければ良いな~、と思ってまいりました(それでも無理ーという方もいらっしゃるかもしれませんが、そこは『VIP』が本になって読めるなら、まあ仕方ない」と思って隠していただければと思います、スミマセン)。

−−登場人物の中で、お気に入りキャラは? また、描きやすいキャラ、逆に難しかったキャラはというと?

沖 宮原さん。単にもう立ち位置とかビジュアルが私のドストライクな方なんです。キラキラ金髪なアルフレッドも描きやすかったので、1本目がスピンオフの『VIP 桎梏』だったのは良かったかなと。あと、ボンも榊も描きやすかったです。……みんな長髪キャラですね(笑)。

特に描きやすいわけではないけれど、和孝くんは楽しいです。最初の頃はちょっと可愛くなりすぎてしまった気がするので、「格好よくてスマートでめちゃくちゃ顔のいい20代の男」という外枠をより意識するようにしてました。久遠さんの伴侶という自覚がしなやかに逞しく育っている今、彼は(ビジュアル的に)もっと化けてもいいかもな~と思い始めてます。逆に難しかったのは前述のとおり久遠さんです。ホントはもっと色んな表情をしていると思うのですが、外向けの顔は常に不動のイメージなので、やっぱり難しいなあと。

−−このキャラのここ、実はこう描いています……のような、内緒のこだわりがあればぜひ教えてください。

沖 実はというか、実は始めの頃は、沢木と津守を描く時にはうっかり似ないように……と (^^; あと、キャラではないのですがせっかく極道モノですので、そっち系スーツのオッサン達が絵に入る時は俄然もえました。ロングの久遠さん然り。思ったよりイケイケなチンピラは描けなかったのですが(いないし笑)。

−−2ndシーズンのカバー・挿絵で、それぞれお気に入りの一枚とその理由も!

沖 え、一枚……(ツラwww)。トータルでみて『VIP 接吻』かなと。候補は3つ、『VIP 溺愛』『VIP 渇望』『VIP 接吻』。『VIP 溺愛』はカバーデザインとイラストが最高にマッチして嬉しかったし、肩の力がちょっと抜けてくれたきっかけになった一枚で、『VIP 渇望』はその流れでイメージできた解放的な一枚でした。そして、いただいたお題が意外すぎて困惑&逆に楽しくなってしまった『VIP 接吻』。あ、カバーデザインが帯まで最高っていうのだったら『VIP 流星』もありました(4つやん……)。

モノクロは、秒で脳裏に浮かんだのが『VIP 溺愛』の83ページでした(スミマセン)。俯瞰でみた若頭の久遠さんの格好いい雰囲気を出したいと常々と思っていたので、描きたいイメージの立ちポーズが描けて嬉しかった一枚です。

−−この年末からスタートの「電子オリジナル VIP」シリーズのカバーも進行中ですね。

沖 終わっちゃったなあ……と思っていた時にいただいたお話だったので、またもう少し彼等を描かせていただけるのがとても嬉しいです。またタロット風とのお題を頂きましたので、そこも活かした楽しい絵になれば……と思っております。
(編集部注:4ヵ月連続ということで、4枚1組のタロットカードをイメージしたイラストをお楽しみに!)

−−読者の皆さまへメッセージをお願いします。

沖 上記にもいろいろ綴らせていただいておりますが、挿画では二代目担当の私を快く受け入れて下さった高岡先生をはじめ、選んで下さった編集部の方々、また戸惑いつつも受け入れて応援して下さった読者の皆さま方、本当にありがとうございました。己の未熟さに悶絶しつつも精一杯頑張らせていただきましたし、描かせていただけて光栄でした。少しでもお気に召した絵がありましたら幸いです。

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