刊行まで毎日更新試し読み⑤ 『三茶後藤①』
文字数 2,158文字
人気お笑いトリオ・四千頭身の後藤拓実さんによる初エッセイ『これこそが後藤』が、いよいよ9月8日に発売! その刊行を記念して、本書に収録されているエッセイを1日1本、7日まで毎日特別公開いたします!
毎日がちょっと楽しくなる魔法のエッセイーー色んな後藤を召し上がれ!
写真:森 清
三茶後藤①
秋が終わって冬が始まる。その感覚は人それぞれでよくないですか? 後藤です。
そんな僕ですが一人暮らしをして1年が経とうとしております。僕がお世話になっているこの三軒茶屋ですが、かなり気に入っております。
なぜ気に入っているのか、どんなところを気に入っているのか。
安心してください、いまから書きますから。
三軒茶屋を気に入っている理由は、カッコつけた言い方をすると渋谷が近いから、ですかね。
ごめんなさい噓なんです。僕、渋谷にあんまり行きません。
でも三茶に住んでると言うとたまにこう言われるんです。「三茶いいよねー、渋谷近いし」。この言葉がなんだか気に食わないんです。たしかに渋谷は便利ですが、みんなにとって中心だと思うなよって思うんです。
しかも三茶を気に入ってる理由として他の地名が出てくるのって、失礼じゃないですか?
例えば自分がAちゃんと付き合ってるとして、友人にAちゃんと付き合ってるって言ったときに、「Aちゃんいいよね、Bちゃんと仲いいし」って言われたら、はぁ!? という風になりませんか。みんなのアイドルBちゃんと仲良くなりたいからAちゃんと付き合ってるみたいな。
失礼ですよね。それと一緒なんです。
三茶を好きな理由として渋谷が近いと答える人はひどい人です。
じゃあ渋谷に住めよ! そう言い放っていいと思います。もめたくなかったら、なるほどねーと言っておけばいいと思います。
僕が三茶を好きな本当の理由は二子玉(二子玉川)が近いからです。二子玉が本当にいいところで大好きで、少し時間が空くとお邪魔してます。駅前にお店がたくさんあって、映画館もあって、すこし歩くと大きな川も流れてるんです。最高ですよ。
え、なんですか? じゃあ二子玉に住めって?
いやいやそれは違うんですよ。少し時間をかけて行くからいいんですわ。三茶に住むのは最高なんですよ。二子玉も渋谷も近いしで。
三茶の好きなところはまだまだあります。芸人のお友達がたくさん住んでいるところです。
すみません、またカッコつけてしまいました。
噓です。たしかに周りに住んでる芸人多いですが、別にそこは関係ありません。
でも三茶に住んでると言うと、たまにこう言われるんです。「三茶いいよねー。芸人いっぱい住んでるし」。
この言葉も気に食わないんです。暇さえあれば芸人と飲んでるみたいな。たくさん遊び回れるみたいな。
三茶を好きな理由に他の人も住んでるって意見て、三茶に失礼じゃないですか?
例えば自分がAちゃんと付き合ってるとして、友人にAちゃんと付き合ってるって言ったときに、「Aちゃんいいよね。芸人たくさん住んでるし」って言われたら意味わからないじゃないですか。Aちゃんが何股もしてるのかなとか変な考え方とかしてしまうじゃないですか。だから気に食わないんです。
僕が本当に三茶が好きな理由は、芸人さんがたくさん遊びに来てくれるからです。時間があって連絡すると、誰かしら来てくれるので毎日楽しいです。
三茶を好きな理由はもっともっとたくさんあるのですが、三茶って呼び方、少し失礼ですよね。
え、誰に失礼なのって思われた方たくさんいると思います。
誰に失礼かというと「軒」と「屋」です。
三茶三茶ってみなさん略しますよね。僕も略してしまってました。
これやめにしましょう。三軒茶屋なんです。
最寄り駅どこって聞かれたら三軒茶屋ってちゃんとみなさん答えてください。三茶じゃだめです。三軒茶屋です。マストで全員です。
練習しましょう。
──最寄り駅は?
三軒茶屋。
いま声に出しましたか? ここだけ音読マストです。よろしくお願いします。
みなさんの最寄り駅は三軒茶屋です。三茶じゃありません。三軒茶屋です。ばっちりですありがとうございます。
すみません、大切なこと思い出しました。
これあれですね、東京から離れたところで読んでくれてる方、全然ぴんと来てませんよね。
そもそもどこだよって人いますよね。
そうですよね、すみません。
乞うご期待!
97年岩手県生まれ。16年、都築拓紀、石橋遼大とともにお笑いトリオ「四千頭身」を結成。おもにツッコミとネタ作りを担当している。YouTubeに四千頭身公式チャンネル「YonTube」を開設し動画を配信中。FM-FUJIにてレギュラー番組「四千ミルク」を放送中。
人気お笑いトリオ・四千頭身の後藤拓実による初エッセイ!
色んな後藤を召し上がれ!
楽しかった中学時代、しんどかった高校時代、楽しくやりたかった草野球がちっとも楽しくなかった事、新幹線のイスを倒せない事、そして四千頭身の一員である事――。
後藤拓実の24年間の軌跡は、日常を楽しくする「笑い」の魔法に溢れている!
「小説現代」で連載されていた超人気エッセイが、作家・武田綾乃さん、俳優・ムロツヨシさんとの豪華対談も収録して待望の書籍化!