「ポエムじゃんw」と笑わば笑え。「照れ」の向こう側に行けた頃。

文字数 1,838文字

なんやかんや暑い季節になってきましたね。もう真夏?って感じ。


洗い物(というか家事全般)ができないことに定評のある健屋ですが、そんな私でも魔法瓶に冷たい飲み物を入れて持ち運んだりなんかしています。

暑い日にゴクリと流し込む冷たい麦茶、風流ですねえ。


というわけで、はい皆さんお加減はいかがでしょうか。

にじさんじ所属バーチャルライバーの健屋花那です。どうもこんにちは。


読書家というわけでもなく、文字書きというわけでもなく、人生で書いた文章はレポートと夢小説だけみたいな人間の書評コラムなぞ一回で打ち切られるのではないかとヒヤヒヤしていたのですが、担当の方からのあたたかいGOサインのおかげでありがたいことに第二回を迎えることができました。感謝!


今回は文学って感じの本を選んできました。

『寺山修司 少女詩集』です。


寺山修司、ご存知でしょうか。「田園に死す」「あゝ荒野」「われに五月を」など、タイトルだけなら一度は聞いたことがあるという方もいらっしゃるかもしれません。その道の方ならお前に言われんでも知っとるわい!となるかもしれませんね。スミマセン。


少女という響きはなんだかとても透明に光っている感じがして好きです。健屋は心根が子どもなので、星とかガラスとか夜景とか、キラキラしたものが大好きです。


そしてこの詩集には、海とか、死とか、なんとなくちょっと薄暗いような、でもどこかキラキラしていて、そしてハッとさせられるような詩が多い気がします。ま、健屋が暗い詩ばかりを好むのでそういった印象が強いだけ説もあるけどね。バイアス、あります(韻を踏んだ)。


私がこの詩集を知ったのは、ちょうどお芝居を学び始めた頃でした。

寺山修司の好きな詩を自由に表現する、という課題が出たのです。


それまでは全員が同じ台本をもらって発表し、先生に評価してもらうことの繰り返しだったため(もちろんそれはそれで勉強になるし面白いんですが)、自分で好きな台本を選べるこの課題はとても魅力的でした。


少女、という言葉で思い出すのは、この時一緒にお芝居を学んでいたとある女の子のことです。

彼女は私の一つ年上で、好きなものは竹久夢二の作品、好きな本は「蜜のあはれ」、好きな花は椿、鈴が鳴るような声で、お人形さんみたいに大きい目をしていました。あとBLはアホエロが好きでした。


自分がこの課題でどの詩を選んだのか思い出すのには少し時間がかかったのですが、彼女が選んだものはすぐに思い出せました。「ダイヤモンド」という詩です。


「淋しいという字をじっとみていると 二本の木が なぜ涙ぐんでいるのか よくわかる」

彼女はたくさん工夫をして、他の生徒とは(もちろん私とも)一味違った、印象に残る表現をしていました。

私は素直にすごいと思ったし、また同時に悔しいとも感じました。


でも彼女は先生に評価をもらった後、「もっとこうすればよかった」と泣き出してしまったのです。

彼女の大きな目に涙の膜が張って、キラキラ光っていました。それがこぼれ落ちていく瞬間を、とても鮮明に覚えています。


詩的なものというのは、現代において「ポエムじゃんw」といった感じである種バカにされることも多くなりました。でもあの頃の私たちは、熱く夢を語り合って、ちょっとしたことで傷ついて、何より芝居に夢中だった。


そういった照れを取り払った先にしか見えない景色が確かに存在し、そして少女詩集は私に、とても詩的なこの体験を引き連れてくるのです。

あなたにとっても、そんな大切な景色を見せてくれる詩が、この中にあるかもしれません。


ちなみに彼女は何年か経って、すっぱりお芝居を辞めました。「もうやれるところまでやりきったから」と笑っていました。私は今もみっともなくお芝居の道に未練タラタラでしがみついていますが、そんな私のことを応援もしてくれています。


そして彼女はその後TIGERに就職して魔法瓶を売っているそうです。これ、よく冷えて軽くて、とてもいいんです。と、魔法瓶の写真と共に久しぶりに彼女にメッセージを送ったら、「それZOJIRUSHIだよ!笑」と言われました。ほ、ほんとだ……!?もう一回り小さいものも欲しいので今度はちゃんとTIGERを買います……。

『寺山修司 少女詩集』寺山修司/著(角川文庫)
健屋花那(すこやかな)

にじさんじ所属バーチャルライバー。

病院で働く女の子。彼女の笑顔で健康になった人は多い。世界中の人々を元気付けようと、ライバー活動を始めた。不器用で、採血は苦手。

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