先生、僕って文才ありますかね? 後藤拓実×武田綾乃 【中編】

文字数 2,703文字

人気お笑いトリオ・四千頭身後藤拓実さんによる初エッセイ『これこそが後藤』が、いよいよ9月8日に発売! その刊行を記念して、書籍にも収録されている作家・武田綾乃さんとの対談を、3日連続でチラ見せします!

 

ミステリーも手掛ける武田さんが驚愕!?

後藤さん、〇〇トリック、使ってますよ…!


構成:瀧井朝世 写真:森清 場所:講談社

叙述トリック、使ってます。

武田 最初、巻頭ではなくてぱっと開いたところを読んだんですね。それが「お酒後藤」だったんです。震えました。だってこれ、叙述トリックをやっていますよね。ミステリのテクニックを使っている。


後藤 えー? やってました僕?


武田 そう。テクニックだけじゃなくて、内容もすごく面白くて。「草野球後藤」の回は哀愁があって純文学っぽいし、「三茶後藤」は、私だったらこんな発想できない。私、小説を書く時、感動で泣いちゃうとか、恐怖で驚くという展開を作るのはなんとかなるんですけど、読者の方を笑わせるのは本当に難しいなって感じるんです。でも芸人さんは、どんどん笑わせるネタを書き下ろしているじゃないですか。すごいですよね。


後藤 作家さんにそんなふうに言われる日がくるとは。お笑いとか好きじゃない人たちなんだと思ってましたよ。


武田 いえ、作家もお笑いが好きな人は多いと思いますよ。


後藤 作家さんって頭がいいじゃないですか。僕は高卒なもので。


武田 いや、後藤さんはどう考えても頭いいですよ。


後藤 勉強できなくて、クイズ番組とかに出ると、引かれちゃうんです。


武田 クイズ番組のクイズは私だってできないですよ。勉強は好きだったけど、暗記は大嫌いだったし。


後藤 勉強は好きだったんですか。


武田 数学とか、パズルゲームみたいなものは解けるのが楽しくて好きでした。憶える勉強は嫌いでしたね。


後藤 全然勉強してこなかった作家もいるんですか?


武田 いますよ。勉強は関係ないですから。


後藤 えっ。


武田 職業としては、作家も芸人さんに近いですよ。夢追い人というか。作家の仕事だけで食べていけるようになるまでは会社にも勤めて兼業の人が圧倒的に多いですし。


後藤 作家一本になるには時間がかかるんですか。


武田 今のご時世ではそうですね。


後藤 武田さんは作家一本ですか。


武田 一本ですけれど、私は全然大したことないので。


後藤 本を書くのは楽しいですか?


武田 楽しくない時もありますけれど、他のことをやるよりは全然楽しいです。


後藤 うわー、いいことだな。


武田 ものを作るのが好きなので、小説以外でも、漫画の原作などもやってます。飽き性なのでつい色々とやっちゃいますね。


後藤 実家は東京ですか?


武田 京都です。大学卒業のタイミングで上京しました。


後藤 京都にいたら作家の仕事ってできなかったんですか。


武田 できますよ。ただ、やっぱり東京のほうが取材が受けやすかったり、打ち合わせがしやすかったりするので。東京に来てよかったです。


後藤 こうして後藤とも対談して。


武田 本当に(笑)。東京に来てなかったら、ありえなかったですよね。


後藤 その選択は間違ってなかったですね。それがあったから、僕も『愛されなくても別に』に出合えたわけですよね。


武田 いいご縁です。普段、原稿はスマホで書いていますか、それともパソコンですか。


後藤 飛行機に乗っている時とかだとiPhoneですね。でもパソコンのほうが集中できます。iPhoneだとパワプロくんとかに誘惑されるし、LINEとかもくるし。


武田 ああ、それは「あるある」ですね。


後藤 パソコンには余分なアプリケーション入れてないんですよ。で、ノートパソコンをまな板の上に載せて書いています。


武田 まな板の上?


後藤 家にちょうどいいテーブルがないんです。キッチンで書くにしても高さがちょっと足りないので、まな板の上にパソコンを載せて打っているんです。


武田 ええっ。独特な執筆スタイルですね。


後藤 武田さんはパソコンですか?


武田 はい。仕事用のデスクに画面を二台置いて、デュアルディスプレイで。片方でYouTubeで四千頭身さんの動画とかを流しながら、片方でプロットを書いたり原稿のチェックをしたりします。


後藤 それで書けるんですか?


武田 動画が面白いとそっちに集中しちゃうので、もう内容が分かっているものを何回も流すんです。漫画家さんもそういうスタイルの人が結構いますよ。


後藤 YouTubeはやっていますか?


武田 見るのが好きなだけで、自分ではやっていないです。でもこれからもYouTuberの小説を書きたいので、動画編集の勉強をしてます。


後藤 ゲーム以外は何をするんですか? 外に出ないんですか?


武田 美術館とか博物館は行きますけれど、スポーツとかはあんまり。引きこもりなので、なかなか外に出ないです。


後藤 ご飯食べてます?


武田 食べてます。出かける日数を減らしたいので、自分で作ってます。出かけないと歩く体力がなくなるので、「リングフィット アドベンチャー」とかもしてます。


後藤 あれやってるんですか。意外。

気になる続きは、明日の【後編】で!

武田綾乃(たけだ・あやの)

1992年京都府生まれ。第8回日本ラブストーリー大賞最終候補作に選ばれた『今日、きみと息をする。』が2013年に出版されデビュー。『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ』がテレビアニメ化され話題に。同シリーズは映画化などもされ人気を博している。『愛されなくても別に』で第42回吉川英治文学新人賞を受賞。その他の著書に、「君と漕ぐ」シリーズ、『石黒くんに春は来ない』『その日、朱音は空を飛んだ』『どうぞ愛をお叫びください』などがある。


後藤拓実(ごとう・たくみ)

97年岩手県生まれ。16年、都築拓紀、石橋遼大とともにお笑いトリオ「四千頭身」を結成。おもにツッコミとネタ作りを担当している。YouTubeに四千頭身公式チャンネル「YonTube」を開設し動画を配信中。FM-FUJIにてレギュラー番組「四千ミルク」を放送中。

人気お笑いトリオ・四千頭身の後藤拓実による初エッセイ!

色んな後藤を召し上がれ!


楽しかった中学時代、しんどかった高校時代、楽しくやりたかった草野球がちっとも楽しくなかった事、新幹線のイスを倒せない事、そして四千頭身の一員である事――。

後藤拓実の24年間の軌跡は、日常を楽しくする「笑い」の魔法に溢れている!


「小説現代」で連載されていた超人気エッセイが、作家・武田綾乃さん、俳優・ムロツヨシさんとの豪華対談も収録して待望の書籍化!

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