また会う日まで! 千手學園少年探偵團

文字数 1,153文字

 今作『千手學園少年探偵團 また会う日まで』でシリーズは一区切りとなる。執筆は日本の近代という興味深い時代に分け入るきっかけになった。機会をくださった光文社さんには感謝の気持ちでいっぱいである。
 これまで「時代背景」を負ったキャラクターを創造したことがなかったので、執筆にあたり、まずは大正時代を調べることから始まった。何しろ学園設定が「日本の特権階級の子息たちが集う」である。当時の情勢と世相を知らなければ、登場人物たちにセリフの一つも喋らせることができない。「もうちょっと庶民寄りの設定にすればよかったか……?」とも思ったが、後の祭り。
 とはいえ歴史を知れば知るほど、永人を始めとする登場人物たちが「どう生きていくか」をつくづく考えさせられるようになった。それに伴い、彼らの希望や執着、悲しみや愛情も次々見えてきて、一人一人が驚くほど自我を持ち、生き生きと動き始めた。著者は彼らと個人面談し、「そっかあ~キミはそうしたいんだね!」と確認した上で文章に起こしたに過ぎない。すべては、彼ら自身が決めてくれたことである。ありがとう千手學園のみんな。
 作品内世界では、まだ第一次大戦は終わっていない。この後、関東大震災、二・二六事件、日中戦争、そして第二次世界大戦……日本のみならず世界は大きく動いていく。永人らはこの激動の世の中で、何を考え、どう行動するだろうか?
 しかし、子供たちの未来ために何かしたい。そう願ったのは永人自身である。この国の未来のために身命を賭す。そう誓ったのは東堂自身だ。彼らの未来は、彼らが決める。だから著者の私は、この先も本人たちと語り合い続けるだけだ。そして読者の皆さまの心にも、これからの彼らが生き続けてくれたら、こんなに嬉しいことはない。
 
 一区切りの今作。探偵團にも変化が訪れた。
 叶うことなら、もう少し先の彼らの未来も描きたい。そう願いつつ、関わってくださったすべての皆さま、読者の皆さまに心からの感謝を込めて。
 また会う日まで。



金子ユミ(かねこ・ゆみ)
『アナタを瞳でつかまえる!〜天然女子はカメラアイ⁉︎〜』(コスミック出版)でデビュー。ゆみみゆ名義でボーイズラブノベル、漫画原作を手がける。幼少の頃より、江戸川乱歩や横溝正史など、妖しく艶やかな世界観に耽溺。他の著書に「千手學園少年探偵團」シリーズ(光文社キャラクター文庫)、『メールヒェンラントの王子』(光文社文庫)、『水底図書館 ダ・ヴィンチの手稿』(ポプラ文庫ピュアフル)などがある。



登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み