『ゾンビ3.0』日韓同時刊行！　世界が注目のミステリー・ホラー

　正直、ゾンビに興味などありませんでした。というか、グロいものが苦手なので、ゾンビ映画はほとんど観ていません。コメディとしてのゾンビものは、まあ、アイデアは嫌いじゃないし、『ショーン・オブ・ザ・デッド』は監督がエドガー・ライトだから観たけれど、人間がゾンビに襲われるシーンになると目をそむけていました。自分がゾンビに関わるとしたら、ハロウィンの時の仮装くらいですかね……。──という私のような方が多いのではないでしょうか、世の中。

　そんな私がなんとラストまでうっかり楽しく（！）読んでしまったのが、この『ゾンビ3.0』なのです。なにしろ「小説」なので、残酷なシーンが出てくると脳内映像化想像力を最小限にして、ぼんやりと「なにか汚いもの」が襲ってくる、撃たれて倒れる…くらいにしておく、ちょっとグロくなりそうな時は薄目で速読する…などの対処法で精神的ダメージを受けずに読み進められるのですね。ところが思ったほど「ひっ」と目を背けたくなるようなシーンはなく、むしろ主人公をはじめとする登場人物たちの人間ドラマが熱くて、そちらに目が釘付けに。

　えええ、この人たち、か、かっこいい……。

　登場する研究者の香月、下村、加瀬たち研究者たちが、警察が、みんなプロとして立ち上がり、自分の能力値限界を超えて挑戦し、己のエゴや嫉妬などを捨て協力しあう。そこにあるのはゾンビ化の原因解明と科学者としての探求心のみ。手に汗握る緊張感！　なんということ！　ゾンビ小説でうっかり感動してしまったではないですか。そんなこと、聞いてなかったです、石川さん！

　この『ゾンビ3.0』が単なるゾンビ小説としてではなく、物語として非常にリーダビリティーの高い作品になっているのには、なんといっても単にゾンビが登場するだけでなく、ゾンビ化の原因を探るその経緯が一種の謎解きとなっていて、「ミステリー小説」として読み手が一緒にゾンビ化の謎に迫っていけるところにあります。

　映画の場合、ゾンビを登場させた時点で「ゾンビ映画」として成立するので、ラストがもやもやしたままのものも多いのですが、小説の場合は映像による衝撃や恐怖で読者を満足させることはできないので、ストーリー性が大切になります。まさに、『ゾンビ3.0』にはそれがあるのです。ゾンビ化の原因を探るミステリーをタテ軸に、襲われる恐怖、タイムリミットに挑む緊張感、誰かひとりの活躍なのではなく、皆が知恵を出し合い、集合知として敵に向かっていく高揚感……。ミステリー＋人間ドラマ＋バイオ・ホラーとして優れたエンターテインメントになっているのです。なにより、銃撃戦などの力技でゾンビを退治し、とりあえずめでたしめでたしなのではなく、ゾンビ化の原因にきちんと向き合って著者なりの結論をきちんと出しているので、読後感もすっきり。しかもその結論は、あの名作『パラサイト・イヴ』の瀬名秀明さんのお墨付き、となればこれはもう読むしかない！ですよね。

　単なるゾンビものではなく、一級のエンターテインメント小説として楽しめる『ゾンビ3.0』、ゾンビ好きもゾンビに興味ない人も、読書の秋にぜひ。お勧めします！

「呪いでもない。ウイルスでもない。ではなぜゾンビ化する？　

生命科学者なら誰もが知りながら誰も正面から書かなかったアイデアに感嘆した。
これは『パラサイト・イヴ2.0』でもある」──瀬名秀明氏に絶賛され、さらにKゾンビが好調な韓国からのオファーによって日韓同時刊行を果たした、ゾンビファン注目の書下ろしホラー長編！