よく知る二人、気になる二人/後藤拓実(四千頭身)×加賀 翔(かが屋)対談③

文字数 3,795文字

「小説現代」誌上での人気連載エッセイを書籍化し、『これこそが後藤』を刊行した四千頭身後藤拓実さん。

また講談社から自身初となる小説『おおあんごう』を刊行したかが屋加賀翔さん。

今最も旬なお二人の豪華すぎる対談が実現!


『有吉の壁』のあんなお話(!)から、創作論、お互いのプライベートにいたるまで、仲良しトークが盛沢山です!


3月9日から3日間に分けて、毎日12:00に大公開!

本日いよいよ最終日です!


【構成】西澤千央 【写真】松井雄希

『壁のオープニング』にて

後藤 『壁』でも実は加賀くんとのコラボはあんまりないんだよな。

加賀 たしかにないね。『壁』ってほんと見ていると先輩たちのやりとりとかチームワークに感動しちゃうんだけど、いざ自分がってなると全然ダメで……。(三四郎)相田さんがいつも『壁』のオープニングで前に行くじゃない? 相田さんがあの時カメラ前に出すものを探しているって以前話してたので、もし良かったらって一応本とポスターを持ってたの。

後藤 おおー。

加賀 自分から言うといやらしいかなと思ってたんだけど相田さんが「今日これ出そうかなと思って」って、本をご自分で用意してくれてたんですよ。最終的に大きいポスター出した方がいいだろうってことになったんだけど。それでいざ本番になって、相田さんちゃんとやってくれて、(パンサー)向井さんもそこに乗っかってくださって。実は僕も『おおあんごう』の表紙のプリントされたTシャツを服の中に仕込んだりしてたんです。で、向井さんが裸になったので「風邪引きますよ」つって、自分の小説のプリントされたTシャツを……っていうのが理想だったんです。

後藤 どうなってんだ。

加賀 向井さんが、うわーって裸になって叫んだところでタイミングを逸して……。そこからスタートになっちゃって、行けなくて……。

後藤 ああ、悔しい。

加賀 Tシャツだけ着たまま、ドックン、ドックン、ドックンってして前に出れなくて。もっと普段から向井さんと話しとけばって。関係を詰めれてないから思い切って行けなかった。

後藤 難しい。

加賀 だからさ、後藤とこれからも一緒に仲良くやって。いつか十何年目ってなったときに、先輩たちみたいなチームプレイができるようになったらっていう気持ちはすごくある。

後藤 なっていたいですよ。いまいないもん、横が。

加賀 助けたいけど、何ができるか分からない。

後藤 ちょっとまだね、僕ら助けられる側なんですよね。僕が助けに行っても助からない。

加賀 関係性ってほんと大事だよね。だから10年後も『壁』あって欲しいですよね。

後藤 交代制度にして。だってもうレジェンドじゃないですか、いま出ている方たち。

加賀 本当にあり得ない人と一緒なことあるもんね。逆に後藤が『人志松本のすべらない話』や『IPPONグランプリ』に出るってなったときは、こっちが緊張しましたもん。ああー、ああーって。頼む、頼む、後藤……!! って。

後藤 『IPPONグランプリ』と『すべらない話』を比べたら、『すべらない話』の方が緊張しなかったんですよ。

加賀 いや、それも意味分かんないんだよね(笑)。

後藤 松本さんは、なんて言うんでしょう……ゴッド。そんな神に持ってきた話を聞いてもらうわけだから、なんとかなるだろうと。もう『IPPONグランプリ』とかは、ある程度出演者がどういう人たちかを知っていて。なんていうの、より近い神なんですよ。

加賀 より近い神が隣に座っている。

後藤 その神と勝負しなきゃいけない。左に(千原)ジュニアさん、右に(千鳥)大悟さんがいて。

加賀 そっか。いや、すごいよ。

後藤 何に緊張したって、目の前にR‐指定が座ってるんですよ。

加賀 いや、それ別の緊張だから(笑)。

後藤 もうちょっとかたい韻踏んだほうがいいのかとか。

加賀 ラッパーの発想(笑)。

後藤 僕はパンサーさんが好きで、なので、パンサーさんに会えたときが一番緊張したんだよね。

人のせいにして生きてきた後藤

加賀 去年の『壁』の年末スペシャルで、モノボケバスツアーやったじゃない。ファーストステージから最終ステージまで何個かステージがあって、面白くなかったら脱落していく。ファーストステージで5人脱落したんですけど、そこに僕ときつねさんとかいる中で、普通に向井さんもいて。めっちゃ数打ってたのに負けてて、僕すごいなと思ったの。ここで僕らと同じ感じで悔しがってくれてるのもすごいし、圧倒的に打席にも立ってて面白かったのに負けて、「モノボケなんかもう、一生うまくなんねえよ!!」って叫んで、その負けが面白く見えてるのもすごかった。後藤のエッセイにも「負け」が結構出てくる。スベったこととかも平気で出てくるし。これを読んで印象が変わる人って結構多いんじゃないかなって思う。天才のイメージはついちゃってると思うんだよね。もっと負けるところがこのくらい見れたらなっていう。

後藤 いや、本当は負けたくないんです。

加賀 そうね、負けたくないね。絶対に。

後藤 負けるほうが面白いってことがわかってても、嫌ですね。

加賀 俺もそうなの。ぐっ……てなっちゃう。今日も朝起きて、思い出して「はあー」っていうのが1個あってさ。佐久間(宣行)さんのYouTubeに呼んでもらったんですよ。100ボケ100ツッコミっていう企画で。今日朝起きて10分後ぐらいにそれを思い出して「ああー」「うーん」ってなってた(笑)。

後藤 それ普通寝る前になるやつ。

加賀 ああ、そうだな。

後藤 効率いいでしょうけど。寝れてるから(笑)。でも僕もめっちゃありますよ。人のせいにして生きてきたこととか。

加賀 見出しになっちゃうよ?(笑)「人のせいにして生きてきた後藤」って。

後藤 ええ。それで大丈夫だったんですけど、だんだんそういうわけにはいかなくなってきてしまった。納めている税金の額とかを見てれば、そうはいかない。

加賀 自分が払ってる税金?

後藤 そう。もう俺のせいじゃないですか。誰が稼いだわけでもない、自分が稼いだお金で税金で。これはもう完全に俺のせいだって。

加賀 すごいな。税金で思うんだ。でも確かに後藤は友だちがワタナベコメディスクールに願書を出しちゃったんだよね。

後藤 ええ。

加賀 ジャニーズ入所あるあるみたいな感じでワタナベに入ってるから。俺も友だちに誘われてNSCに入ったけど、入学する前にその友だちが「俺、やっぱ建築士になる」って言い出して。

後藤 そうだった(笑)。おもしろい。

加賀 お互い誰かのきっかけでこの世界に入ってきて。でもやらざるを得ない瞬間っていうのはあったよね、たぶん。

後藤 ありました。

加賀 一緒に来る予定だった子がやめるっていう時点で「俺も帰りたい」って母親に泣きついたの。でも母に「帰ってくんな」って言われて。燃え尽きて、これ以上できないっていうところまでやって戻ってこい。じゃないと、もう帰ってこさせないって。そこででも一つ火がついた。「じゃあ、気合い入れてやろう」って。

後藤 お母さんめちゃめちゃカッコいいな。そう、僕いまラップやってて。ロッソ・ビ・アンコっていう2人組ユニット。いや、僕じゃないっていうあれなんですけど。

加賀 「僕じゃないというあれなんですけど」っていう説明も、もう種明かしすぎるから(笑)。

後藤 「ロッソ・ビ・アンコの2人はどこで出会われたんですか?」っていう質問に、「同じコンビニで僕ロッソが昼働いてて、ビ・アンコさんが夜で。お互いラップが好きっていうのを知った店長が飲み会を開いてくれて意気投合した」って答えたんだった。

加賀 完全にかが屋結成エピソードだろ!!

後藤 ちょっとこれ加賀くんに確認取るの忘れてたことを思い出しました。

加賀 ロッソ・ビ・アンコファンが「なんか、かが屋さんにそっくりなエピソード話してましたよ」って言ってきて俺はそれを知るという。

後藤 バレてたんだ(笑)。

本対談は、「小説現代」2022年3月号に掲載されたものです。

後藤拓実(ごとう・たくみ)

1997年岩手県生まれ。2016年、都築拓紀、石橋遼太とともにお笑いトリオ「四千頭身」を結成。おもにツッコミとネタ作りを担当している。YouTubeに四千頭身公式チャンネル「YonTube」を開設し動画を配信中。FM-FUJIにて四千頭身でのレギュラー番組「四千ミルク」を放送中のほか、日本テレビ系列にて「宮下草薙」の草薙航基とレギュラー番組「ハネノバス」を放送中。

加賀 翔(かが・しょう)

1993年岡山県生まれ。マセキ芸能社所属のお笑い芸人。2015年に加賀壮也とお笑いコンビ「加賀屋」を結成。「キングオブコント2019」では決勝に進出。ラジオ・バラエティ番組の他、趣味の短歌と自由律俳句のイベントにも出演し、マルチに活躍中。

『これこそが後藤』 後藤拓実


「小説現代」誌上にて2020年3月号から21年9月号まで連載された同名エッセイを書籍化。単行本化にあたり、ムロツヨシ、武田綾乃との対談も収録。


定価:1375円 講談社

『おおあんごう』 加賀 翔


岡山の田舎の小さな町で、細いゴリラのような父に振り回され、繊細な心を削られて生きる「ぼく」。凛とした母、ふんわりしたおばあちゃん、無二の親友との心の交流を描く、自身初の小説。


定価:1540円(税込) 講談社

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