『茜さす日に噓を隠して』企画始動前夜のことば(真下みこと)

文字数 1,376文字

小説家・真下みこととシンガー・みさきによるデュオ「茜さす日に嘘を隠して」(=アカウソ)。

これまで5話にわたり、現代を生きる10代~20代を主人公とした小説と楽曲をリリースしてきました。

7月1日(金)には、全話をまとめた、待望の書籍『茜さす日に噓を隠して』が刊行されます。

それを記念して、このデュオの歌詞と小説の執筆を担当した、真下みことの「企画始動前夜のことば」を公開いたします!

小説家が、歌詞と小説の両方を担当する前代未聞のこの企画。

どのような思いで、執筆に臨んだのでしょうかーー?

 小説を書いていて、登場人物が嘘をつくことがあります。 

 他の人や私に対して嘘をつくだけならいいのですが、自分自身に嘘をつくことがあり、その場合は少し困ります。その嘘に、作者である私が気付くのが遅れてしまうからです。

 しかし魅力的な登場人物は、必ず嘘をつきます。小説世界の彼らに気づかれることなく、その嘘に気づく方法はないだろうかと悩みながら、これまで小説を書いてきました。

 そんな中、今回のお話をいただきました。楽曲の歌詞と小説、両方を書かせていただくことになりました。

 さて、私にとっての小説の執筆と歌詞の執筆の違いは、両手を使うか右手だけ使うか、 です。小説はパソコンのキーボードで執筆しますが、歌詞はスマートフォンのフリック入力を使います。小説と比べて文字数が少ない歌詞はスマホを使った方が早いから、という理由だったのですが、思わぬ副産物がありました。

 作詞をするときに初めて気づく登場人物の気持ち、というものがあるのです。おそらく登場人物が普段生活の中で使うのがキーボード入力ではなくフリック入力なので、彼らの本音がこぼれてくるのです。おかげで、小説内で彼らがついた嘘に、早い段階で気づくことができています。このプロジェクトは、私にとって初めての共作です。登場人物の嘘に気づけずに皆さんを困らせるわけにはいかないので、小説と同時に歌詞も執筆させていただけて 本当に良かったです。 

 茜さす日に誰がどんな嘘を隠したのか、目で、耳で、楽しんでいただけると幸いです。


真下みこと(ました・みこと)

1997年埼玉県生まれ。

2019年「#柚莉愛とかくれんぼ」で第61回メフィスト賞を受賞し、2020年デビュー。

最新刊は、「あさひは失敗しない」(講談社)。

共作『青く滲んだ月の行方』(青羽悠)のことばはこちら

<書誌情報>『茜さす日に噓を隠して』


「誰かに言えるわけない」私がこう思っている時、あなたは。

就活面接でうまく話せず、彼氏とも疎遠な日々に思いつめる皐月、

寂しさを埋めるため、急に人と会いたくなる衝動を抑えきれない愛衣、

自分の経験を切り売りして曲を作り、シンガーとして活動する文、

大切な友達に言えない秘密を抱えながら過ごす智子ーー

誰かに理解してほしい葛藤をひとりで抱える、"大人未満"の4人の物語。


◆発売日:2022年7月1日

◆定価:1540円(税込)

◆四六変判 264ページ

◆ISBN:978-4-06-524800-3

◆講談社第五事業局 文芸第三出版部


★小説の世界にリンクした各話の楽曲も配信中。MVはこちら

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