金がない。愛しの母が喰い潰すから。/武田綾乃『愛されなくても別に』

文字数 1,095文字

『響け! ユーフォニアム』の著者・武田綾乃さんの吉川英治文学新人賞受賞作が、ついに文庫化します!!

お金と時間とコミュニケーション能力がなければ友達を持つことさえ難しい、貧困と孤独を抱える今の20代が息詰まる現実と「戦って」いく。


その痛々しくも力強い姿に、何度も心を揺さぶられました。間違いなく武田さんの新しい“代表作”になる。その確信を持ってお届けします。


ぜひご一読ください。


(文芸編集:N谷)


「ご一読」してみました。

これは、一読どころじゃない……!

刺さる言葉が多すぎて、三度四度と読み返しました。

私の大学生活を一言で表すなら、クソだ。

ページをめくるたび、出くわす言葉にどきりとします。

月8万を家に入れ、バイトと家事にすべてを費やす大学生・宮田。

彼女の人生と、自分の人生は大きくちがう。

……はず。

なのに。

身に覚えのある息苦しさは、いったいどこから来るんだろう?

私は、血が繋がっているだけの他人を親とは呼ばない。呼びたくない。

宮田の生活を見ていると「毒親」の2文字が浮かびます。

母から逃れ、行くあてのない宮田を家に迎え入れたのは、同じ大学の江永。

どこかなげやりな彼女はなんと、人殺しの娘と噂されているのでした。

この物語は、家族の呪縛から逃れようとする二人の女・宮田と江永の“駆け落ち譚”なのです……!


タイトル「愛されなくても別に」は江永の発言に由来します。

このシーンだけはぜったいに、ぜったいに、ぜったいに、直接読んでほしいです!

乱雑で広すぎるこの世界にもオマエが生きる場所はあるのだと、背中をつよく押された気持ちになりました。


なんとなくな日々。得体の知れない閉塞感にうだる夏。

行き場のない現実をあざやかに削り取るこの小説は、「クソ」な日常を強烈な光で照らします。

引き込まれすぎる覚悟を持って、彼女たちの生を目撃してください!


武田綾乃『愛されなくても別に』


※文庫版は2023年7月14日(金)発売予定です。

☆☆☆第42回吉川英治文学新人賞受賞作!☆☆☆

『愛されなくても別に』 武田綾乃 著

「幸せ」じゃなくたって、私たちは生きていく。

家族、友人、お金、愛――

本当に必要なものは何?

人生の必需品に翻弄される現代に放つ、心ふるわすシスターフッドの傑作。


遊ぶ時間? そんなのない。遊ぶ金? そんなの、もっとない。学費のため、家に月8万円を入れるため、日夜バイトに明け暮れる大学生・宮田陽彩。浪費家の母を抱え、友達もおらず、ただひたすら精神をすり減らす――そんな宮田の日常は、傍若無人な同級生・江永雅と出会ったことで一変する!


祝デビュー10周年! 「響け! ユーフォニアム」シリーズ著者の新たな代表作!

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