◆No.3 三という数 ~ なぜ「三」将伝なのか
文字数 1,251文字
「偶数か奇数か、どっちが好きですか?」
わりと有名な質問です。
0とか、無限大とか、変化球で答える人もいるかも知れませんが、私は昔から奇数が好きです。もう少し欲を言えば、素数が好きだと答えたりします。
スパッと割り切れる数が好きな人もいますが、私は割り切れないほうが好きですね。
これは、小説の好き嫌いと同じく、嗜好の問題なので、もちろん正解などありませんが。
『立花三将伝』では<友情>を描きたいと考えていました。
固い絆で結ばれた友情が、敵に味方に分かれて相争う中で、どのように変化していくのか。あるいは、変化しないのか。
この関係を描くには3人が適切だと考えました。
3人というのは不思議な数です。
4人だと、2対2で二つの会話が成立してしまいますが、3人だと会話はひとつしか成立しない。多数決が成立する最小単位でもあります。
3人と4人とでは、<関係>に雲泥の差があるんです。
数といえば、この物語では、薦野増時(弥十郎)以外の登場人物の年齢が不明でした。
長幼と年齢差を、どのように設定するか。
<死んだ人の年齢に近づいてゆく>
そして
<その人の年齢を追い越す>
しばしば当たり前に経験するこの現象は、一抹の寂しさを我々に与えませんか。
ただ一人、若くして人生を終える主人公の一人を最年長に設定したのはそのためです。
<その人が自分よりずっと若くなっていく>
苦い。苦いですよね。
屏風岩:乱勃発の直前、主人公たちがこの岩の前で談笑しています。
写真提供:道雪会
赤神 諒(アカガミ リョウ)
1972年京都府生まれ。同志社大学文学部卒業、東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了、上智大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。私立大学教授、法学博士、弁護士。2017年、「義と愛と」(『大友二階崩れ』に改題)で第9回日経小説大賞を受賞し作家デビュー。他の著書に『大友の聖将(ヘラクレス)』『大友落月記』『神遊の城』『酔象の流儀 朝倉盛衰記』『戦神』『妙麟』『計策師 甲駿相三国同盟異聞』がある。