◆No.1 最強の忍術は……
文字数 1,150文字
応仁の乱後、将軍義尚が幕府に背いた六角氏征伐のために湖南の鈎に陣を敷くと、甲賀忍者の三郎兵衛たちは甲賀山中でゲリラ戦を展開する。甲賀忍者の最強無敵の忍術「神遊観」をめぐって甲賀、伊賀、そして幕府が絡み合う……! 甲賀忍者と許されない恋を描いた忍者エンタメ小説『神遊の城』執筆の裏話を、著者・赤神 諒氏が語ります!
忍者は物語の無駄を省き、ドラマティックに動かすのに便利なので、私も小説でしばしば登場させますが、忍者を主人公とした小説は今のところ本作だけです。
司馬遼太郎のデビュー作は、忍者が主人公の『梟の城』でした。
私もこの作品で、〈鈎の陣(第一次六角征伐)〉という歴史を題材に甲賀忍者を描きました。
〈忍者〉の実像は、室町時代に限っても、年代と場所により、少しずつ違います。地方によって、武田の三ツ者、伊達の黒脛巾など、呼ばれ方も異なりますね。
個々の差はあれ、本当の忍者は地味で地道な存在だったらしく、現代人が抱いているイメージは、江戸時代以降、後世の人々が想像を膨らませた産物だとされます。
忍者ハットリくん(子供の頃ファンでした)のように、〈水蜘蛛〉ですいすい水の上を歩くのは、現実には不可能です。
あの道具は、図解と製法が残っており、現実に使われていたはずですが、「泥の上を歩くためだった」と言う説に説得力がありそうです。
〈火遁の術〉もうまく火薬と煙を使えば出来そうですし、〈変装〉もやり方次第では、今と違って写真もないので、かなり有効だったのでは。
忍者も人間ですから、魔法や超能力のような忍術を使えるはずもありませんが、せっかく後世の人々が忍者のイメージを作ったのですから、その延長線上で小説を書きました。
山田風太郎のように忍術を想像・創造すれば、無限の可能性がありえますが、ある程度オーソドックスな忍術の中では、どの忍術が一番強いのでしょうか。
本作では、まさしく最強の忍術を描きました。
〈〇〇の術〉です!
ごめんなさい、何が最強の忍術か、ネタバレになるので、書けないのです。
お読みいただいてからのお楽しみということで……。
※八丈岩(滋賀県湖南市)