【せめて昼メシ講座】①芽を食べよう、新入社員諸君!/江上剛&枝元なほみ

文字数 1,809文字

新刊『ラストチャンス 参謀のホテル』でコロナショック後のホテル業界を描いた作家の江上剛さん。ビジネス小説でおなじみの江上さんが、料理研究家の枝元なほみさんに「簡単昼ごはん」の作り方を教わりました。

 緊急事態宣言下、テレワークの方や時短勤務の方も多いかもしれません。新入社員の門出を祝いつつ、手軽に作れるレシピをご紹介します!

芽を食べよう、新入社員諸君!


「新入社員を応援する、芽が出る料理を作ります」


「めって、これ?」


私は自分の「目」を指してボケる。


「めっ!」と師匠が睨み、ツッコミ。「違うわよ。スプラウトよ。ブロッコリーとかカイワレ大根などよ」


「今回は、新入社員が東京で一人暮らしをして、自炊している様子を想像してみましょう」


 師匠が頭に人差し指を突き立てる。想像しろということなのだろう。


「想像しました」


 私が答える。


「何が見えましたか?」


「一人でインスタントラーメンを作って、贅沢にも卵を割って入れようとしています」


「やっぱり江上さんは昭和男ね」師匠があきれ顔。「それじゃ野菜不足でしょう。野菜をたっぷり食べられて、なおかつ簡単にできる料理を作りますからね」

ブロッコリースプラウトと小エビフライのサラダ

【材料】


むきエビ(小、冷凍)150g、ブロッコリースプラウト1パック、タマネギ2分の1個

ハッサクなど柑橘類適量


〈フライ用〉

塩・胡椒少々、卵1個、小麦粉大匙4、パン粉適量、油1カップ(200ml) 


〈ドレッシング〉

スイートチリソ-ス大匙3~4、ナンプラー小匙2、レモン果汁大匙1を混ぜる

※上記の材料がない場合は麺つゆ(2倍濃縮)大匙2、酢、みりん各大匙1で代用可



 

①むきエビに塩、胡椒で下味をつけ、卵と小麦粉をいれてもみ込むように混ぜる

②混ぜたむきエビの上にパン粉を振りかけてまぶす(混ぜないこと)

③170℃の油で揚げる

④玉ねぎをスライスして酢水(水3カップ、酢大匙1~1.5)に5分ほど晒す

⑤ブロッコリースプラウトの根元を切り落として洗う(水を張ったボウルに放つと種の殻が浮くので取り除く)

⑥小エビフライ、水けを切ったスプラウトと水けを絞った玉ねぎスライスの各半量とドレッシングをよく混ぜる

⑦残りのスプラウトと玉ねぎスライスとハッサクを綺麗に盛り付けてできあがり

豆苗と牛肉の中華蒸し

【材料】


豆苗2袋(300g)、牛コマ切れ250g、紹興酒(無ければ酒)・水各大匙2、塩1つまみ


〈タレ〉


生姜みじん切り・ニンニクみじん切り各小匙2、酢大匙1、豆板醤小匙2分の1~1、オイスターソース大匙2、醤油小匙1を混ぜる(作るのがめんどうな場合はポン酢でもOK)

① 根元を切り落として洗った豆苗をフライパンいっぱいに敷き詰める

② 豆苗を覆うように牛肉を広げて載せる

③ 紹興酒、水、塩を振る

④ 蓋をして3分ほど蒸して牛肉の色が変わればできあがり


まずはブロッコリーとスプラウトと小エビのサラダ、これは美味い。小エビのぷりぷり感と玉ねぎのシャキシャキ感、ブロッコリースプラウトのほのかな香りがスイートチリソースで上手くまとまっている。

「デパートで売れますよ。このサラダ。パンに挟んでも美味しいと思います」

「確かにパンにも合うわね。新玉ねぎなら、もっと甘くなるでしょうね」と師匠。

豆苗と牛肉の中華蒸しは、タレをつけると、牛肉の甘みが引き立つ。タレに豆板醤が入っているため、少しピリ辛なのがいい。とうみょうに肉汁が絡んで美味い。極めて安心できる味だ。


今日の料理はどれもこれも安心できる味で、ご飯がすすむ。ご飯がすすめば、明日も仕事をしようという気力が湧いてくる。上司に叱られようが、「がんばるぞ」という気になる。

―――師匠が女将さんの料理屋があれば、新入社員で満員になるだろう。そして彼らの芽が、馬鹿な上司の手で無惨に摘み取られそうになったら、彼らを励まして、美味しいご飯を食べさせて、元気を取り戻させるに違いない。

「師匠、今日の料理は新入社員向けで最高でした。簡単に作れて美味しいですからね」と私。 


(IN☆POCKET2017年4月号より)

『ラストチャンス 参謀のホテル』

老舗ホテルの立て直しは日本の真価(プライド)の再生だ!
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