「群像」2022年1月号

文字数 1,612文字

編集後記は、文芸誌の裏方である編集者の顔が見えるページ。

このコーナーでは、そんな編集後記を選り抜きでお届けします。

「群像」2022年1月号

10月号から3ヵ月にわたって続いた創刊75周年記念、書き手はもちろん、イベントなどご協力いただきましたみなさまに、あらためて感謝いたします。今号は新年号、雑誌の暦のうえでは、2022年となりました。「文」×「論」と銘打って誌面リニューアルを行ったのが、2020年の新年号。毎号試行錯誤を繰り返しながら、とにかく書き手の「熱」を伝える「場」をつくることを目指してきました。3年目も、編集部は楽しみながら、あつい雑誌を編んでいきます。本年も引き続き、よろしくお願いします。


今号から新連載が続々スタートします。まず巻頭は、古川日出男さんによる恋愛小説「の、すべて」。つぎつぎと新たな試みに挑戦する古川さんの「新交響曲」に耳をすましてください。


◎磯崎新とは何者なのか―二〇世紀鼎談でおなじみの田中純さんが世界的建築家に迫る「磯崎新論」。


◎講談界を牽引する六代目・神田伯山さんが本誌初登場。「講談放浪記」では講談ゆかりの地を訪ね、その魅力を語っていただいています。


◎小誌連載「視えない線の上で」が単行本化されたばかりの石戸諭さんが次に見つめるのは、「起きてしまった後」のこと。「「後」の思考」で、「現実」の手がかりを見つけていきます。


◎第74回野間文芸賞はリービ英雄さん『天路』に、第43回野間文芸新人賞は井戸川射子さん『ここはとても速い川』に決定しました。リービさん、井戸川さん、おめでとうございます。


◎その井戸川さんの受賞第一作「キャンプ」がさっそく登場。津村記久子さんの「二千回飲みに行ったあとに」は、定年を迎える人の送別会の店を決める話(じつは、担当編集のSは次号で定年を迎えます)。高瀬隼子さんの中篇一挙「おいしいごはんが食べられますように」を読んで、「食」にかんしてのスタンスの違いが気になるようになりました。「ケア」をめぐる飛躍作です。


◎ジュンク堂書店池袋本店・「群像」創刊75周年オンライントークイベント第2弾、多和田葉子さん×野崎歓さん「地球にちりばめられた私たち」を誌上再録。


◎尾崎真理子さんの批評「『万延元年のフットボール』のなかの『夜明け前』」も必読です。大江文学の想像力の「根拠地」に、藤村がいた―。


◎小川公代さん×鴻巣友季子さん×森山恵さんによる「ウルフとコモンリーダー」は、日本ヴァージニア・ウルフ協会で行われた鼎談を再構成して誌上再録したもの。ウルフをめぐる熱気あふれる鼎談を読んでいると、あらゆる「いま」につながっていることがわかってきます。


◎今月の「論点」は、井谷聡子さんと小泉義之さんに、それぞれ「オリンピックとジェンダー」「病の善用」をテーマに論じていただきました。


◎現代新書編集部とのコラボ連載「DIG」が今号からリニューアル。掘った後は、新書になるかもしれない「タネ」について明かしていただく「SEEDS」となりました。1回目は難波優輝さんに、「反出生主義・宇宙資本主義・絶滅主義」について書いていただいています。


◎戸谷洋志さんによる技術と暴力をめぐる思考連載「スマートな悪」は最終回。2022年単行本化予定です。今号も盛りだくさん、どうぞよろしくお願いいたします。



本誌で「その日まで」を連載されていた瀬戸内寂聴さんが逝去されました。ゆかりの深い、伊藤比呂美さん、平野啓一郎さん、横尾忠則さんに追悼文をいただいております。謹んでお悔やみを申し上げます。 (T)



〇投稿はすべて新人賞への応募原稿として取り扱わせていただきます。なお原稿は返却いたしませんので必ずコピーをとってお送りください。


〇大澤真幸氏、堀江敏幸氏、若松英輔氏、鷲田清一氏の連載、創作合評は休載いたします。

登場人物紹介

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