禁断!他社本を褒める交換POP対決 担当編集のプライドが激突!

文字数 2,479文字

幾多のベストセラーを生み出してきた作家・堂場瞬一。その手になる昭和を描いた大河シリーズが、早川書房、講談社から相次いで発売された。

皆さんも書店でご覧になったことがあるだろう。書棚に置かれ、書籍の惹句などが手書きされた小さな紙片、通称「書店POP」。その一枚の紙きれが、時に全国的なベストセラーを生み出すこともある。

しかし、今回は早川書房の担当編集が講談社文庫の本のPOPを、講談社の担当編集が、早川書房の本のPOPを作成するのだ。しかもそれをPOP界の巨匠と著者の堂場氏にもご照覧頂くというのである。

敵に塩を送る、禁断ともいえるこの企画。まさに両社の威信を賭けた戦いでは全然ない。だが、ここから出版界のボーダーレス化が始まると言ったら過言であろうか。そう、過言である。

先攻:小塚麻衣子(早川書房担当編集)

『焦土の刑事』堂場瞬一/著(講談社文庫)
POP作成後記

推したい要素が多すぎて本当はもっと戯曲が挿入される構成の妙や、検閲官の仕事のと面白さと苦悩、娯楽の大切さや、幼馴染み警官二人のズッ友ぶりやこの先の展開、戦争の落とした影の深さなども入れたかったのですが、絵心も美しい字もまとめ能力もなく、無念のうちにイラレで逃げを打ちました。

(早川書房・小塚麻衣子)

『焦土の刑事』堂場瞬一/著(講談社文庫)

1945年3月。防空壕の中で他殺体が発見された。京橋署の刑事・高峰は早速捜査を開始しようとするが、上司から下されたのは事件の揉み消し指令。納得のいかない高峰は、旧友で憲兵に所属する海老沢とともに捜査を進め、敗戦をまたぎながらも犯人を追い詰めていく。
警察小説の旗手が満を持して描く、壮大な警察大河シリーズ、ここに開幕。第二弾『動乱の刑事』、第三弾『沃野の刑事』も好評発売中。

さらには、単行本にて平成元年を舞台にした第2シーズン『鷹の系譜』が6月20日発売!

後攻:森山悦子(講談社担当編集)

『小さき王たち 第一部:濁流』堂場瞬一/著(早川書房)

POP作成後記

この機に作画アプリを使いこなしてスマートに作成しようと目論みましたが早々に挫折……コピーと切り貼りで超アナログに作るハメに。なので肝心の書名を始め全体に歪んでいますが、手描きの味のうちとご笑覧いただけたら幸いです! 二人の主人公の対峙、そして70年代という舞台から、自ずとこの名画のタイトルロゴが思い浮かびました。

(講談社・森山悦子)

『小さき王たち 第一部:濁流』堂場瞬一/著(早川書房)

現代日本の政治と報道をめぐる三部作。
一九七一年、新潟。政治家と新聞記者が日本を変えられた時代――。
高度経済成長下、日本の都市政策に転換期が訪れていた1971年12月。衆議院選挙目前に、新潟支局赴任中の若き新聞記者・高樹治郎は、幼馴染みの田岡総司と再会する。田岡は新潟選出の与党政調会長を父に持ち、今はその秘書として地元の選挙応援に来ていた。彼らはそれぞれの仕事で上を目指そうと誓い合う。だが、選挙に勝つために清濁併せ呑む覚悟の田岡と、不正を許さずスクープを狙う高樹、友人だった二人の道は大きく分かれようとしていた……大河政治マスコミ小説三部作開幕!

7月20日には『小さき王たち 第二部:泥流』が発売予定!

そして、勝敗は……

結果発表:内田剛(ブックジャーナリスト・POP王)


POPを評価するポイントは技巧的な上手さよりも作品に対する愛情の深さで判断するのだが、まったく甲乙がつけ難く極めてハイレベルな闘いであった。


講談社・森山さんのPOPは見せる系秀逸なイラストと「仁義なき戦い」のキャッチフレーズがズバリと突き刺さる。


一方で早川書房・小塚さんのPOPは読ませる系。作中のセリフもズバッと効いており読みどころを畳みかけている。


いずれのPOPも物語の良さを的確に表していて見本のような出来栄えだ。


勝敗の行方は……


熟考を重ねた結果、両者相譲らず引き分けに決定!どちらから読んでも間違いなし!


内田剛(うちだ・たけし)

アルパカにしてブックジャーナリスト。POPを描き続け、POP王の称号を得る。近年は、好きな小説の布教に身を捧げている。堂場作品のファンで、著者が認める「堂場ファミリー」の一員。

Twitter:@office_alpaka

総評:堂場瞬一


「読むプロ」である編集者は、他社の本をどう読むのだろう——作家の素朴な疑問です。今回のPOP対決は、その一部が伺える面白い企画ですね。


昭和の刑事シリーズ、『小さき王たち』、どちらも長いスパンの物語ですが、POPになると雰囲気が違います


文字量たっぷりの早川版『焦土の刑事』、ビジュアルに振った講談社版『小さき王たち』。どっちもそそられる!……しかし「他社の宣伝」なんて、やっぱり無茶な企画だよね(笑)。


堂場瞬一(どうば・しゅんいち)

1963年茨城県生まれ。2000年、『8年』で第13回小説すばる新人賞を受賞。警察小説、スポーツ小説など多彩なジャンルで意欲的に作品を発表し続けている。著書に「警視庁犯罪被害者支援課」「刑事・鳴沢了」「警視庁失踪課・高城賢吾」「警視庁追跡捜査係」「アナザーフェイス」「刑事の挑戦・一之瀬拓真」「捜査一課・澤村慶司」「ラストライン」などのシリーズ作品のほか、『傷』『誤断』『黄金の時』『Killers』 『社長室の冬』『バビロンの秘文字』(上・下)『犬の報酬』『絶望の歌を唄え』『宴の前』『帰還』『凍結捜査』『決断の刻』『ダブル・トライ』『コーチ』『刑事の枷』『沈黙の終わり』(上・下)『赤の呪縛』『大連合』『聖刻』『0 ZERO』『小さき王たち』など多数ある。

この二つのシリーズでは「交換投げ込みチラシ」の試みも行われています。

6月15日に発売された講談社文庫の「昭和の刑事シリーズ」の第三弾『沃野の刑事』と6月20日に発売される単行本『鷹の系譜』には「小さき王たち」シリーズのチラシが入り、7月20日に早川書房から発売される『小さき王たち 第二部:泥流』には「昭和の刑事シリーズ」のチラシが入っています。まさにボーダーレス作家・堂場瞬一!

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