予言されていた「寝とられ」性癖の市場拡大。古典変態小説は人類の宝。

文字数 890文字

ポーリーヌ・レアージュ『O嬢の物語』


SMの世界にこだわらず、今や日本のメジャーな性癖のひとつに食い込もうとしているジャンル、「寝とられ」。「寝とられ」に謎に興奮する彼らは、なぜわざわざ恋人を寝とられる必要があったのか。


それは、稀代の変態小説であり、知る人ぞ知るSMの傑作である『O嬢の物語』によって解明された……。


一般的な(?)「寝とられ」から少し視野を狭めてみよう。

SMの世界の「寝とられ」は、あえて「寝とら」せ、帰還を待つ。つまり、「貸し出し」的な意味を孕んでいる。そんな雰囲気がある(私調べ)。


だけど、どうしてそんなことするのだろう。

そこで我らが『O嬢の物語』のこの言葉をご覧ください。


「自分のものでなければ、どうして他人に与えることができよう。」


そう、つまりはそういうことだったのだ。「自分のものである」からこそ、「他人に与える」ことが可能なのだ。


SM世界の「貸し出し」的な「寝とられ」であれ、もう少し一般的な「寝とられ」であれ、根底は同じ。「自分のものである」という強い認識、所有欲が、ちょ~っとだけ拗れると、そういうものに興奮してしまうようになってしまう、と。


自分がそういう性癖か否かは別として、「寝とられ」というかなり理解しがたい性癖が、なぜここまで市場規模を広げてきたのかが、少しだけわかる。


そんなふうに、「変態」や「SM」を、その根底にある人間の心理のところまで鋭く考察した人類の宝

それが『O嬢の物語』である。

『O嬢の物語』ポーリーヌ・レア―ジュ/著 澁澤龍彦/訳
↑写真/静川文一
吉行ゆきの@変態文学大学生

「文学」と「変態」と「酒」を偏愛する北大生。主にTwitterで活動し、全国で無駄にリテラシーの高い変態文学イベントなど開催。ミスiD2021受賞。

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