『ゾンビ3.0』サバイバルガイド/石川智健

文字数 3,235文字

石川智健さんの『ゾンビ3.0』が、読売新聞の「本よみうり堂」(2023年1月15日)で宮部みゆきさんにとりあげてもらえました!


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昨今の気候変動に起因する災害増加により、皆さんの防災意識も高まっていると思います。

生き残るために、今までは考えもしなかった災害が襲ってくることを当然意識しなければなりません。

そこで、今回は今後起こりうるかもしれないゾンビの災害が発生した場合における適切な行動をゾンビオタクである城田竜二が「緊急編」「備え編」に分けて解説いたします。


「緊急編」は、準備をしていない段階でゾンビが発生してしまった場合に有効です。また、「備え編」はゾンビ発生前の事前準備に役立つかと思います。

ちなみに、ここだけの話ですが、城田竜二のモデルは『ゾンビ3.0』の担当編集者ですので、ほぼ実在すると思っていただいて構いません。

《城田監修・いまほんとうにゾンビが発生したらガイド》──緊急編

城田竜二(しろた・りゅうじ)

予防感染研究所に隣接する大学の学生。日本でゾンビが発生した翌日に研究所に合流した。大のゾンビ・ファンで、その手の映画やゲームにとても詳しい。研究者たちが取り組むゾンビ化の原因究明に、彼の知識は一役買った。

【武器】

なんといっても、ゾンビが発生した際は武器が必要です。ゾンビ作品を観れば分かりますが、武器の選択は生き残るために欠かせないものです。

銃社会ではない日本では、映画のように銃で〝ヘッドショット〟ができません。必然的に身の回りのものを武器にする必要があります。ここでは、自宅にいる場合と、学校や会社にいる場合に分けて説明します。


●〈自宅にいる場合〉

日本の普通の家には銃社会のアメリカと違って、武器と呼べるものがありません。逆にもしあれば、免許を持っているか不法所持ということになりますね。

野球をしている方は朗報ですが、日本家庭における武器のファーストチョイスは金属バット(ウォーキング・デッドではニーガンが使用)でしょう。

次点で、ゴルフクラブ、包丁、ナイフといったところが有効です。免許があれば日本刀(同ミショーンが使用)、クロスボウ(同ダリルが使用)などですが、所持者は稀有でしょう。ほかに高枝切鋏+包丁(『ゾンビ3.0』作中の北海道の兄弟が使用)や消火器なども武器になり得ます。


ゾンビ作品でたびたび見かけるチェーンソーは重いうえに扱いづらいのでNGです。見た目にこだわる方や、ゾンビ作品ではお馴染みの仲間割れのケースでは有用かもしれません(チェーンソーの音、怖いですから威嚇になります)。

●〈会社・学校にいる場合〉

最近の学校では不審者対策で、さすまた・ネットランチャー・催涙スプレーなどが置いてあります。催涙スプレーはゾンビ化の状態によって有効ではないケースがありますが、これらは使えると思います。しかし、数が足りません。生徒分用意できているのなら別ですが、そんな学校はおそらく校長がゾンビフリークでない限りありえません。

攻撃もさることながら、防御も絶対条件です。とにかく腕を防御したい。野犬に立ち向かうとき腕に服をぐるぐる巻きにしますが、ゾンビとの格闘もその要領です。『ゾンビ3.0』本編で僕は長袖シャツの重ね着などをしているので対策ばっちりです。ただ、フルフェイスのヘルメットは視界が悪くなるのでNGですね。

会社にいる場合は、武器が非常に少ないです。オフィスでのゾンビ対策は喫緊の課題と言えます。


ここまで武器になりそうなものについて説明しましたが、やはり日本では複数のゾンビが発生した場合に有効な武器は少ない印象です。まずは、「ゾンビを見たら逃げろ!」というのが鉄則でしょうか。ただ、走るゾンビだったら難しいですね!僕は歩くゾンビも走るゾンビも大好きです!

さて、歩く走るの話になりましたので、次は移動手段にいきましょう。

【移動方法】

移動といえば車ですね。全方位守られていますし、ガラスを割られなければ安全が保たれます。ただ、災害が起きると道路はすぐに人が殺到して動かなくなります。ゾンビ発生初期も同様のことが起こりえますので、その場合、自動車はNGになります。狭い道でも通れるバイクは良い選択です(決して転ばないように)。ただ、自動車もバイクも燃料がネックとなります。その心配がなく、静音性のおかげでゾンビが寄ってこない自転車は意外とナイスチョイスです。


そもそも、ゾンビが発生したら、極力移動しないほうが良いでしょう。ただ、今いる場所に食料が豊富にあるとは限りません。ということで、食料編&場所編です。


【水・食料】

食料は数日摂れなくても死にはしませんが、はすぐに命にかかわります。ゾンビ発生がわかったら、すぐにバスタブに水を溜めてください。食料は当初は防災グッズなどに頼っても、いずれは近所の食料品店に出向き、リスクを冒さないといけないかもしれません。その場合の移動手段は、先ほどお伝えした移動方法を参考にしてください。

【場所】

ゾンビ発生時にどこに逃げるかは、よく映画のテーマにもなる生死を分ける重要な問題です。オフィスビル、マンション、学校平屋以外の一軒家は逃げ込むには良い場所です。その場合、1階を放棄してエレベーターを止め、階段を封鎖すると防御力が高まります。逆に、食料が期待できるスーパーや小売店、ゾンビ映画の聖地・ショッピングモールは防御力が低く、人が殺到するためNGです。「バイオハザード」の舞台となった警察署、さらに病院も同じような理由で✕です。

ここまで「緊急編」について話してきました。

安全な場所に留まり、食料を求めて移動し、再び安全な場所に潜伏する。その上で、戦うことも辞さないという覚悟が必要です。それが生き残るために必要なことです。

こうして読んでいると、どうしてそんなに熱心にゾンビ対策を考えているのかと疑問に思われる方もいるでしょう。でも、ゾンビ対策を考えるのは重要なことなのです。現に、アメリカ国防総省は、CONPLAN8888-11というゾンビ襲来時の緊急軍事対策マニュアルを作成し、大規模な軍事作戦を現実に検討しています。

備えあれば憂いなし、です。

それでは「備え編」へと続きます。

【参考文献】ゾンビサバイバルガイド マックス・ブルックス著 (翻訳監修)森瀬繚他 (翻訳)卯月音由紀 エンターブレイン

【本文内写真】アフロ
著者・石川智健さん、週刊文春(2022年12月29日号)文春図書館「著者は語る」に登場!

石川智健(いしかわ・ともたけ)

1985年神奈川県生まれ。25歳のときに書いた『グレイメン』で2011年に国際的小説アワードの「ゴールデン・エレファント賞」第2回大賞を受賞。’12年に同作品が日米韓で刊行となり、26歳で作家デビューを果たす。『エウレカの確率 経済学捜査員 伏見真守』は、経済学を絡めた斬新な警察小説として人気を博した。また’18年に『60(ロクジユウ) 誤判対策室』がドラマ化され、『20(ニジユウ) 誤判対策室』はそれに続く作品。その他の著書に『小鳥冬馬の心像』『法廷外弁護士・相楽圭 はじまりはモヒートで』『ため息に溺れる』『キリングクラブ』『第三者隠蔽機関』『本と踊れば恋をする』『この色を閉じ込める』『断罪 悪は夏の底に』『いたずらにモテる刑事の捜査報告書』『私はたゆたい、私はしずむ』『闇の余白』など。現在は医療系企業に勤めながら、執筆活動に励む。

「呪いでもない。ウイルスでもない。ではなぜゾンビ化する? 

生命科学者なら誰もが知りながら誰も正面から書かなかったアイデアに感嘆した。
これは『パラサイト・イヴ2.0』でもある」
──瀬名秀明氏に絶賛され、さらにKゾンビが好調な韓国からのオファーによって日韓同時刊行を果たした、ゾンビファン注目の書下ろしホラー長編!

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