慶大生本読みのおススメ「多様な<愛>に触れられる」小説10選

文字数 3,356文字

今、どんな作品を読んだらいいの?

そんな疑問にお答えするべく、大学生本読みたちが立ち上がった!

京都大学、慶應義塾大学、東京大学、早稲田大学の名門文芸サークルが、週替りで「今読むべき小説10選」を厳選してオススメします。

古今東西の定番から知られざる名作まで、きっと今読みたい本に出会えます。

「愛」は様々な形を有している。そこには性別に囚われることもなく、愛し合う者同士の中にだけ展開される彼らだけの世界があるのだ。そして恋愛だけでなく、友人との間に生まれる友愛や、家族の中で育まれる家族愛も、また「愛」である。だが、「愛」は時折周りから見ると狂気にもなり得てしまう。この本たちを通じて多様な愛に触れて欲しい。

慶應ペンクラブ(けいおうぺんくらぶ)/慶應義塾大学

慶應ペンクラブは、1957 年に創立した歴史ある文芸サークルです。小説はもちろん、短歌や漢詩にラップまで、「言葉」を使ったあらゆる創作をしています。そして年に数回部誌を発行し、その掲載作品の批評会を行う他、不定期にワークショップ等を開催して書くだけではない創作を楽しんでいます。これらの活動を通してメンバー同士、和気あいあいとそれぞれの才を切磋琢磨しています。慶應ペンクラブは、1957 年に創立した歴史ある文芸サークルです。小説 はもちろん、短歌や漢詩にラップまで、「言葉」を使ったあらゆる創作をしています。そして 年に数回部誌を発行し、その掲載作品の批評会を行う他、不定期にワークショップ等を開催して書くだけではない創作を楽しんでいます。これらの活動を通してメンバー同士、和気あいあいとそれぞれの才を切磋琢磨しています。 

『恋する寄生虫』三秋縋

紛れもなくそれは恋だった。


恋愛に、偽物・作り物は存在するのだろうか。 マインドコントロールのようにその感情が他人に誘導されたものだとして、それがその人の
偽物の感情かと言われたら、難しい問題だ。潔癖症などが原因で失業中の青年・高坂賢吾と
不登校の少女佐薙ひじり。社会になじめない二人が出会い、惹かれあい、やがて恋をする。
しかしその恋は<虫>によってもたらされたものだった。恋をしたのは<虫>のせいなのか、
<虫>はきっかけに過ぎず自らの意思なのか。この物語の結末をどう捉えるかは、読者次第。

○○○○○○○○殺人事件』早坂吝

読者への挑戦状は真相とタイトル。第 50 回メフィスト賞受賞作。


公務員・沖はネットで知り合った仲間たちと毎年南国の孤島でオフ会をしている。今年は、 大学院生の渚に想いを伝えようとしていた。しかし、急遽参加することとなった上木らいちに場を乱される。孤島に着けば、二人が失踪、さらには殺人事件。沖の恋の行方は? 犯人は誰? タイトルは何? 日本で一番尖った賞を受賞した、早坂吝のデビュー作!

③『春琴抄』谷崎潤一郎

あなたにこの愛は理解できないだろう


盲目の三味線師匠春琴に仕える、佐助の果てなき献身と愛を描いた谷崎潤一郎の名作。 わがままで気難しい春琴の身の回りの世話を全て担い、家業を継がずに彼自身も三味線奏者の道を歩んでいく。厳格な主従関係を維持しつつも、月並みの夫婦関係や恋愛関係とは異なったさらに密接な縁を結んでいく。ある日何者かが春琴の寝床に忍び込み、彼女の顔面に大やけどを負わせる。美貌が損なわれ涙する春琴を前に、佐助は決意しある行動に出る。句読点や改行を大胆に省略した独自の文体が紡ぐ、耽美的な世界に浸ってみてはいかがだろうか。

④『バケモノの子』細田守

見た目が違くとも、家族は家族だ。


同名のアニメ映画『バケモノの子』の原作。9歳の少年である蓮は、両親を失い渋谷を彷徨っていると、バケモノの世界である「渋天街」へ迷い込む。そして渋天街に住む熊徹というバケモノに九太」と名付けられ寝食を共にする。最初はいがみ合っていた二人だったが、段々とその間には親子のような関係が築かれていく。そんな折、九太は偶然人間の世界に戻ってしまい、渋天街と現世の狭間で生きることになる。映画では描かれないキャラクターの細かな心情描写にも注目の一冊。

⑤『くまちゃん』角田光代

薄れていくようすも、また愛の形。つながっていく「ふられ」小説


かわいらしいタイトルとは裏腹に、ダメな大人たちが恋を終わらせる物語を描いた短編小説集。ふられることはつらいこと。しかしそこには、やさしさがあふれている。恋とか、仕事とか、いろいろなことに悩む年代に、一つ休みを取って、この作品を読んでみてはいかがだろうか。

⑥『東京バンドワゴン』シリーズ 小路幸也

「LOVE」を大切にする古き良きホームドラマ


舞台は東京、下町の古本屋「東京バンドワゴン」。8人の家族とご近所さんたちによるドタバタ事件は、すべて「LOVE」が解決する。メフィスト賞受賞者・小路幸也が「あの頃、たくさ んの涙と笑いをお茶の間に届けてくれたテレビドラマへ。」をキャッチコピーに展開する、現代の日本では忘れられてしまったハートフルな物語に浸ることができる。

 ⑦『一瞬の風になれ第一部 -イチニツイテ-』佐藤多佳子

友達と一緒に走ったあの日が、蘇る。


中学ではサッカー部に所属していた主人公の神谷新二。彼は高校ではサッカーをしないつもりでいた。それは彼の兄である神谷健一がサッカーの天才だったから。そんなある日スポーツテストの一環で50m 走を足の速い幼馴染一ノ瀬連と一緒に走る。結果は新二の惨敗。だが、その敗北が新二の心に風を巻き起こす。蓮に追いつき追い越したいという思いが芽生え、彼と共に陸上部に入りスプリンターの道を走り始める。友と共に駆け抜ける三年間に悔いなど、ありはしない。

⑧『恋愛中毒』山本文緒

もう二度と人を愛さない、つもりだった。


夫と離婚したばかりで、「もう二度と人を愛さない」と誓った主人公の水無月美雨は、弁当屋 で働いていた。そんな水無月に偶然出会った小説家創路功二郎が関わってきたことでその決 心はいとも簡単に崩れ、二人は不倫関係になる。創路は既婚者でありながら、同時に何人も の女性と不倫関係を結ぶ、不埒な男だった。そこで数多くの愛人の中で一番になろうとした美雨は、作戦を考え実行していく。「愛」の甘美と恐怖を見事に描き切った一作。

⑨『ツナグ』辻村深月

何か言えなかったことはありますか


ツナグ(使者)は死者に会いたいという依頼人の要望に答えて、依頼人が会いたいと希望している死者を呼び出す。そして死者と交渉し、依頼人と死者を面会させる人のことをいう。本作の主人公である渋谷歩美は、祖母であるアイ子からツナグの仕事を引き継ぐことを頼まれ、見習いとしてアイ子が呼び出した死者との仲介役を務める事になる。彼女の前に現れる依頼人達は、死者に何らかの思いを抱いた者ばかり。ここには人の優しさも嫉妬も後悔も、愛情も満ちている。

⑩『星々の舟』村山由佳

それぞれに結ばれた奇妙な愛の糸。それは家族という一枚の布へと昇華する。


架空の一家である水島家の六人の生活を基にした短編集。水島家の中には、兄妹での近親相姦とそれを目撃した異母妹。そして、幼い頃に強姦被害にあった長女、既婚者でありながら部下と不倫する長男、自分の友人に恋をする娘。父親は戦争中に出会った慰安婦のことを忘れられない。この一家には愛という蜘蛛が巣喰い、人と人を結びつける。

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