◆No. 4.『花の乱』の後

文字数 1,230文字

応仁の乱後、将軍義尚が幕府に背いた六角氏征伐のために湖南の鈎に陣を敷くと、甲賀忍者の三郎兵衛たちは甲賀山中でゲリラ戦を展開する。甲賀忍者の最強無敵の忍術「神遊観」をめぐって甲賀、伊賀、そして幕府が絡み合う……! 甲賀忍者と許されない恋を描いた忍者エンタメ小説『神遊の城』執筆の裏話を、著者・赤神 諒氏が語ります!

私が拝見したNHK大河ドラマの中で、最も好きな作品は『花の乱です。

全作品を視聴できていませんが、今でも不動の一番です。

自作品でも映像化されない限り、変わらないでしょう(笑)。

音楽、映画、美術、小説、あらゆる分野で同じですが、素晴らしい作品がいつも評価されるとは限りません。(ひがみかよ)

『花の乱』は、歴代大河ドラマでも視聴率ワーストの部類に入る作品だそうですが、「応仁の乱」を実に面白く描いた作品で、私は学生時代、毎週楽しみにしていました。特に足利義政の描き方が好きでしたね。

あの「隠れた名作」の後は、いったいどうなるのか……。

応仁の乱とその後の歴史は非常に複雑で、名前もよく似た人物が登場しては消えてゆきます。この時代を扱うと、読者がつかないみたいですが、圧倒的な英雄もおらず、単に分かりにくいからではないでしょうか。日本史の教科書でもあっさり飛ばしますし。

でも、実は面白いんです。

本当なんです、信じてください。

たとえば真保裕一さんの『天魔ゆく空』とか、素晴らしい小説もありますよ。

さて『神遊の城』の時代は、ちょうど応仁の乱の後。

〈鈎の陣〉を題材とした小説や、名前だけ知られた第9代将軍足利義尚を副主人公格で描いた小説は、他にないと思います。

私の小説はおおよそ9割がたフィクションですが、換言しますと、この作品も1割ぐらいは史実に基づいています。

主人公の三雲新蔵人も、三雲典膳も名前としては実在していますし、ヒロインの煕子のモデルとなる義尚の側室もいます。登場する甲賀忍者は、女性以外、実在した人物の名前を借用しています。

足利義尚が六角討伐のために遠征し、鈎の地に約一年半滞在し、その間に甲賀忍者に御所で襲われたこと、幕府軍が将軍の死をもって撤退したことも史実です。

実は『花の乱』をひそかに評価されている、そう、あなたにこそ、ぜひ『神遊の城』を読んでみていただきたいのです。

え? あまり、いらっしゃらない?

※現在の鈎御所跡(滋賀県栗東市)

赤神 (あかがみ・りょう)

1972年京都府生まれ。同志社大学文学部卒業。私立大学教授、法学博士、弁護士。2017年、「義と愛と」(『大友二階崩れ』に改題)で第9回日経小説大賞を受賞し作家デビュー。同作品は「新人離れしたデビュー作」として大いに話題となった。他の著書に『大友の聖将『大友落月記』神遊の城』『戦神』『妙麟』『計策師 甲駿相三国同盟異聞』 村上水軍の神姫』北前船用心棒 赤穂ノ湊 犬侍見参』『立花三将伝』などがある。

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