編集長ジミーがオススメ、10月の光文社文庫!

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 藤井道人監督『宇宙でいちばんあかるい屋根』を観てきました。多感な時期の少女が謎の星ばあと出会って成長していく姿が、美しい映像とともに描かれます。主演の清原果耶さんは『透明なゆりかご』『なつぞら』でジミーもファンになりましたが、この作品でますます好きになりました。まさに「令和の原節子」だと思います。ちなみに野中ともそさんの原作は光文社文庫から刊行されています(としっかりPR)。



 さて10月刊のオススメ、まずは佐伯泰英さんの『乱癒えず』です。「新・吉原裏同心抄」の三巻目になりますが、吉原と、京は祇園で繰り広げられる陰謀と闘いは圧巻。まさに巻を措く能わず、です。先月も長い物語について話しましたが、新シリーズになって三巻目。まずこの三冊を読んでから原点の「吉原裏同心」に戻る方も増えているみたいですし、ぜひ。とは言うものの長いのはちょっと……という方には6月に出ました『新酒番船』をどうぞ。これ一冊で完結していますし、「佐伯泰英入門書」としても最適です。



 冒頭で映画の話をしましたが、続いては畑野智美さんの『シネマコンプレックス』を挙げましょう。地方のシネコンの、クリスマスの1日を描いたこの作品。何気なく映画を観に行っていましたが、シネコンの中には様々な仕事があるんですね。そんな上映を支える人々の人間模様がリアルに迫ってきます。



 さらにもう一冊。鮎川哲也さんの『りら荘事件』を。何度か文庫化もされていますし、本格ミステリファンなら必読の作品ですが、今回は「増補版」として、原型となった中編「呪縛再現」も収録しています。こちらには「あの人」も登場して……。本編と合わせて二倍楽しめること請け合いです。



 今月はここまで。コロナ禍はなかなか収束が見えませんが、去年の今頃は、イタリアでカラヴァッジョ巡礼をしていたことを思い出します。また行ける日が来ることを祈るのみです。今年は仕方ありません、河島英昭さんの『ローマ散策』を読んで、気分だけでも旅に出ることにします。そういえば『薔薇の名前』はもう文庫化しないのかな。

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