「群像」2022年8月号

文字数 1,573文字

編集後記は、文芸誌の裏方である編集者の顔が見えるページ。

このコーナーでは、そんな編集後記を選り抜きでお届けします。

「群像」2022年8月号

「最初に読んだ三島由紀夫の小説は」(川上弘美さん)、「モンキードーン」(金原ひとみさん)、「父のキャラメル」(川崎徹さん)、「川はおぼえている」(くどうれいんさん)、「ごっこ」(紗倉まなさん)、「サイレン」(田中兆子さん)、「朝霧の」(沼田真佑さん)、「トーチカ2」(藤野可織さん)、「続・日本武尊」(町田康さん)。今月の「初夏短篇特集」で執筆していただいたみなさんのバラエティに富んだタイトルを並べてみました。きわめて個人的な「感じ」でしかないのですが、長篇と短篇を比べると、長篇は「読むぞ」と決めて身構えて入っていくことが多く、対して短篇には決めてなかったけれどふらっと入っていけるような気軽な楽しさがあります。それから長篇は面白ければ面白いほど自分に内向していきがちなのですが、読み終えてすぐに人に勧めたくなる、というのも短篇のよさではないかと。そのときタイトルはとても重要で、「面白そうだな」「なんだろう」と、読む前の大きなフックになる気がします。短篇小説は文芸誌の「華」と言われますが、何でもない日に花をプレゼントするようにして、周りの方にお気に入りの作品をぜひ勧めてみてください。


 今号の連作は柴崎友香さん「帰れない探偵 忘れないための歌を」と、伊藤春奈さんのノンフィクション「ふたり暮らしの〈女性〉史」を掲載。


◎本誌連載を単行本化した蓮實重彥さん『ショットとは何か』が刊行以来版を重ねています。映画監督の三宅唱さんと蓮實さんによる、蓮實批評のキーターム「ショット」をめぐる対話―「三宅さん、ショットとはいったい何なんでしょうか?」


◎「政治小説の復讐」は、島田雅彦さんが「政治」をとことん詰め込んだ近刊『パンとサーカス』に、石戸諭さんが切りこんだインタビュー。


◎4月に逝去された見田宗介さんの追悼文を、大澤真幸さんにお願いしました。「先生と私」は研究者のみならず、なにかを「学ぶ」すべての人間にとって胸に迫るものがあると思います。


◎朗読劇のDVDつき小説『湯布院奇行』を刊行した燃え殻さんに特別エッセイ「とにかく遠くへ行きたかった。」をお願いしました。


◎舞城王太郎さんの『短篇七芒星』の書評を木下龍也さんに依頼したところ、なんと七つの短篇にそれぞれ短歌をあわせた「短歌七芒星」が届きました。お楽しみください。


◎アメリカ小説の多様性を探究してきた諏訪部浩一さん「薄れゆく境界線 現代アメリカ小説探訪」が最終回を迎えました(単行本化予定です)。


◎コラボ連載「SEEDS」は、西平等さん「敵・野獣・犯罪者 殺す側の論理と倫理に関する国際法思想について」。


 6月1日から、編集部に新入社員Nが加わりました。これは昨年のデジャブではありません。編集Oが14年ぶりの新入社員として配属されたと一年前の編集後記でお伝えしたわけですが、なんと2年連続、創刊76年で6人目の新入社員が来ることに。雑誌の新たな活力源となってくれるはずです。活躍をご期待ください。今月もどうぞよろしくお願いいたします。 (T)



〇第167回芥川龍之介賞の候補作に、小砂川チトさん「家庭用安心坑夫」(本誌6月号・単行本は7月7日刊行予定)、高瀬隼子さん「おいしいごはんが食べられますように」(本誌1月号・単行本発売中)が選出されました。この機会にぜひ。


〇投稿はすべて新人賞への応募原稿として取り扱わせていただきます。なお原稿は返却いたしませんので必ずコピーをとってお送りください。


〇川名潤氏、竹田ダニエル氏、堀江敏幸氏、村田喜代子氏の連載は休載いたします。

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