戦百景 大坂夏の陣 完全ガイド①

文字数 1,720文字

日本の歴史に残る有名な合戦を活写&深堀りして大好評の矢野隆さんの「戦百景」シリーズ

第8弾は、戦国時代の終焉を飾る大合戦を描いた『戦百景 大坂夏の陣です!


「戦百景」シリーズとは…

第1弾『戦百景 長篠の戦い』は「細谷正充賞」を受賞!

第2弾『戦百景 桶狭間の戦い』

第3弾『関ヶ原の戦い』

第4弾『川中島の戦い』

第5弾『本能寺の変』

第6弾『山崎の戦い』

第7弾『大坂冬の陣』

と、有名な合戦を深堀りしてリアルタイムで描く、矢野隆さんの人気シリーズ!

刊行を記念して、矢野隆さんにコメントをいただきました!


これから順次記事をあげていきますので、お楽しみに!

『人は変わらない』


 一度初めてしまったら、どうやったって収まりがつかなくなるということは往々にしてある。


 こうしている間にも、ウクライナとロシア、イスラエルとパレスチナの対立は、多くの犠牲者を生み出しながら、収束の糸口すらつかめぬまま続いている。

第三者の介入を拒む対立は、いずれかが屈するまで終わらない。


 人というものは進化していない。時とともに文明が育まれてきただけ。私はそう思う。だからこそ、温故知新、古い歴史から多くのことを学ぶことができるのではないだろうか。昔の人間と今の人間には、まったく違いがない。肉親を殺されれば怒りや憎しみに、子供が生まれれば喜びに泣く。いつの時代でも人の感情は変わらない。


 徳川家と豊臣家の間で争われた戦争は、一度、和睦という形で決着を見た。それが、大坂冬の陣である。大坂城本丸を丸裸にするという家康の強硬な申し出を豊臣側が呑むことによって、両家の戦は終わった。

しかしそれは、束の間の平穏だった。


 冬の戦の折、城に招き入れられた多くの牢人たちは、和睦後も大坂城の内外に溢れかえり、戦の収束に納得せず、徳川家ともう一度決戦に臨むよう、豊臣家に求めた。武勇で鳴らした牢人たちの圧力を豊臣家は抑えることができず、豊臣家を滅ぼさんとする家康の目論見通り、和睦はたちまち破られてしまった。


 そうして豊臣家は滅びの戦へと突き進んでゆくのである。


 今、世界で繰り広げられている戦争。そして、戦争の脅威をちらつかせ、不安を煽る大国。こんな不穏の時代にこそ、戦の世を生き抜いた先人たちに学ぶ時ではないだろうか。


 一度始まってしまったら、取り返しがつかないのだ。


 戦国の終わりともいえる戦である「大坂夏の陣」。武士たちがどのように戦い、どうやって戦国の世は終わりを迎えたのか。


 皆さんの目で確かめていただきたい。


慶長20年(1615年)3月、戦乱の気配が再び漂い始める。前年の暮に成った、いわゆる「大坂冬の陣」の和議が早くも崩れようとしていた。和議の条件で棄却された二の丸、三の丸の堀や柵が再建され始めていたのだ。それに対し徳川方は、牢人の解雇か豊臣家の移封を求めるが、豊臣家はそれを拒否。徳川と豊臣はついに手切れとなった。総勢15万を下らない徳川方に対し、豊臣方はその約半分。しかも「冬の陣」のときと違って、堀のない城では豊臣方は打って出るしかないのだ。──緒戦で命を懸けて戦う後藤又兵衛や藤堂高虎、浅野長晟。豊臣を滅亡させることを躊躇う徳川家康。牢人衆を制御できない大野治長。乾坤一擲を狙う真田信繁。呪縛を乗り越えようとする豊臣秀頼。諸将の思惑が入り乱れるなかで、いよいよ戦乱の世に終止符が打たれる!

矢野隆(やの・たかし)

1976年福岡県生まれ。2008年『蛇衆』で第21回小説すばる新人賞を受賞。その後、『無頼無頼!』『兇』『勝負!』など、ニューウェーブ時代小説と呼ばれる作品を手がける。また、『戦国BASARA3 伊達政宗の章』『NARUTO-ナルト‐シカマル新伝』といった、ゲームやコミックのノベライズ作品も執筆して注目される。また2021年から始まった「戦百景」シリーズ(本書を含む)は、第4回細谷正充賞を受賞するなど高い評価を得ている。他の著書に『清正を破った男』『生きる故』『我が名は秀秋』『戦始末』『鬼神』『山よ奔れ』『大ぼら吹きの城』『朝嵐』『至誠の残滓』『源匣記 獲生伝』『とんちき 耕書堂青春譜』『さみだれ』『戦神の裔』『琉球建国記』などがある。

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