No.2 『空貝』登場人物との対話その1

文字数 2,171文字

「戦国BASARA」でもおなじみの伝説的女武将・鶴姫と、主家への復讐を企む若き軍師・越智安成の悲恋を描いた『空貝(うつせがい) 村上水軍の神姫』

『立花三将伝』『大友二階崩れ』で戦国の武将たちを描いた赤神諒さん入魂の「恋愛歴史小説」であるこの物語の文庫化によせて、本編には入りきらなかった、とっておきのエピソードお届けいたします!

(日時:非公開、場所:都内某所) 


赤神:本日はご多用の中――


ウツボ:前置きはいいんでねえの。裏の事情はこういうわけだ。すでに『空貝』のエッセーはこれで13本目。さすがにtreeに書くネタがなくなっちまったあんたは、いよいよ切羽詰まって、バランタイン17年ものをだしに、あっしをわざわざ遠方から呼びつけた。あっしの渋くてお茶目な魅力で、読者の皆様を虜にし、あわよくばブレークを狙おうっていう、みえみえの魂胆さ。


赤神:のっけから内幕を明かさないでくださいよ。


ウツボ:とはいえ、しょせんあっしは小者、端役、脇役だけどな。


赤神:何を仰いますか。ウツボさんは物語のカギを握る名脇役じゃないですか。あなたがいなかったら、物語が成立しないんです。特にラストは本当に考えたんですから。


ウツボ:ま、そうだわな。あっしが物語を引っ掻き回さねえと――


松:あたしもメールもらった時には、姫とご一緒に首をかしげたわよ。こういう時って、普通は主役を呼ぶんじゃないの? 何で侍女なわけ?


赤神:だって、鶴姫は絶世の美少女でしょ? お会いするだけで緊張するじゃないですか。安成さんもやたら切れ者でとっつきにくいし、ひとまず無難で穏当なところから始めてみようかと――


ウツボ:どうせあっしは、無難で穏当でい。


赤神:す、すみません、言葉が不適切でした。十分やばい方だと存じ上げております。それはともかくウツボさんて、江戸っ子の設定でしたっけ?


ウツボ:よくぞ訊いてくれた。実は――


松:ねえ、あんた。話を前に進めなくていいのかい?


赤神:失礼しました。ではまずレディ・ファーストで、松さんから『空貝』で最も印象的な場面を――


松:そりゃ、何といっても、姫が安成さまの過去をお知りになる場面でしょ? あと、ラストに近いところで、作り物の人形みたいになってた姫がご自分を取り戻される場面。さらにいえば、後日譚であたしがシャチさんに手紙を――


ウツボ:待ちな、松。確かに名場面だけどさ。それって、全部お前が出演してるとこばっかじゃんか。


松:何よ、文句あるのかい、あんた?


赤神:お二人は昔からお知り合いですもんね。この設定も、ストーリー展開が作者都合にならないように――


ウツボ:読者の皆様は覚えてらっしゃらねえよ、そんな枝葉末節。


松:そういうあんたは、どこが名場面だと思うんだい?


ウツボ:そうさな。やっぱ鬼鯱さんとの手に汗握る死闘の場面で、あっしがスマルを投げるところかな。後は何といっても、ラストのあっしの死に様――


松:やっぱりあんたが出てくる場面ばっかりじゃないか!


ウツボ:悪いのはあっしじゃねえ。あっしらをこの場に呼んだ青神さんだろ。こーなることくらい、わかってたはずだ。


松:ま、そりゃそうね。


赤神:ちょっと、私にも喋らせてください。お二人が出てこない場面で、意外にいい味出してるところとか――


ウツボ:青神さん。もう、今回の枚数尽きたんじゃねえの?


赤神:そうですけど、ウツボさん。わざと間違えてるでしょ。いくらなんでも青神って――


松:それじゃ、読者の皆様。ぜひ次回も、お付き合いくださいませ!


▲大山祇神社

赤神 諒(あかがみ・りょう)

1972年京都府生まれ。同志社大学文学部卒業。私立大学教授、法学博士、弁護士。2017年、「義と愛と」(『大友二階崩れ』に改題)で第9回日経小説大賞を受賞し作家デビュー。同作品は「新人離れしたデビュー作」として大いに話題となった。他の著書に『大友の聖将『大友落月記』神遊の城』『戦神』『妙麟』『計策師 甲駿相三国同盟異聞』 村上水軍の神姫』北前船用心棒 赤穂ノ湊 犬侍見参』『立花三将伝』などがある。

■主な登場人物

《伊予水軍》

大祝鶴姫(おおほうり・つるひめ)         大祝家絶世の美姫。陣代で台城主。十六歳。

越智安成             大祝家直属の大三島水軍の軍師。二十歳。

ウツボ        安成の腹心。

村上通康             来島村上水軍の頭領。二十三歳。

村上尚吉             因島村上水軍の頭領。

鮫之介        大祝家に仕える水将。鶴姫の武芸の師。

松              鶴姫の乳母にして、侍女。

大祝安舎             第三十二代大祝。大祝家当主。鶴姫の長兄。

大祝安房             陣代。鶴姫の次兄。

越智通重             大祝家臣。安成の舅。小海城主。

磯              安成の妻。通重の養女。

シャチ       来島村上水軍に身を寄せる少年。

《大内水軍》

小原中務丞         剛勇無双の猛将。別名、鬼鯱。

白井縫殿助         大内水軍きっての謀将。

伝説的女武将・鶴姫は、巫女であり総司令官であった。村上水軍を率いて西国最強の水軍を迎え撃つ──数奇な運命を描く長編歴史小説!
↓↓こちらも是非!『立花三将伝』

登場人物紹介

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