戦百景 大坂夏の陣 完全ガイド④

文字数 1,670文字

日本の歴史に残る有名な合戦を活写&深堀りして大好評の矢野隆さんの「戦百景」シリーズ

第8弾は、戦国時代の終焉を飾る大合戦を描いた『戦百景 大坂夏の陣です!


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「戦百景」シリーズ好評既刊

第1弾『戦百景 長篠の戦い』は「細谷正充賞」を受賞!

第2弾『戦百景 桶狭間の戦い』

第3弾『関ヶ原の戦い』

第4弾『川中島の戦い』

第5弾『本能寺の変』

第6弾『山崎の戦い』

第7弾『大坂冬の陣』


今回から3回にわたって、大坂夏の陣トリビアコラムを掲載します。

これから読む方にも、読んだ方にも、そして大河ドラマを楽しみたい方におすすめの、物語をより楽しむための作品ガイドです!

《「大坂の陣」のMVPを決めるなら》


 メジャーリーグでは大谷選手が2度目のMVPを獲得したところだが、「大坂の陣」のMVPを強いて挙げるなら真田信繁ではないだろうか。しかも敗軍からの選出ということになる。


 信繁は1567年、信濃国に生まれた。1590年の小田原征伐で初陣を果たしてのち、1600年に徳川家康と石田三成らの決戦を迎える。父・昌幸と上田城に籠った信繁は、3万8000とも言われる徳川秀忠軍を足止めし、西軍に大きく貢献した。


 それでも西軍は関ヶ原で敗北し、昌幸・信繁父子も処罰されて高野山の玄関口・九度山に配流となる。


 それから14年、ふたたび東西は手切れとなり1614年、大坂冬の陣が始まる。

すでに昌幸は亡くなっていたが信繁は豊臣方の要請に応じて大坂城に入城。城の南方に築いた「真田丸」で獅子奮迅の活躍をし、徳川方の前田利常らに大損害を与えた。にもかかわらず東西は和議を結ぶことになり、惣堀を埋め立てられるなど大坂城は裸城にされた。


 そして翌1615年、またしても東西は手切れとなり最終決戦・大坂夏の陣が始まる。こんどは豊臣方は籠城することができず、最初から野戦を選んだ。当初は道明寺で後藤基次、毛利勝永らとともに戦う予定であったが濃霧で合流できず後藤基次を死なせて退却。体勢を立て直し毛利勝永と共闘して打倒家康をめざす。


 一時は作戦が破綻をきたすも捨て身の突撃を繰り返し、信繁は徳川本陣に突入した。そのとき馬印が倒され、家康は切腹を覚悟したという。それでも衆寡敵せず、信繁は近くの神社で休んでいたところを討たれる。


 結局、「桶狭間」のような大逆転劇ホームランは出なかった。

慶長20年(1615年)3月、戦乱の気配が再び漂い始める。

前年の暮に成った、いわゆる「大坂冬の陣」の和議が早くも崩れようとしていた。和議の条件で棄却された二の丸、三の丸の堀や柵が再建され始めていたのだ。

それに対し徳川方は、牢人の解雇か豊臣家の移封を求めるが、豊臣家はそれを拒否。徳川と豊臣はついに手切れとなった。総勢15万を下らない徳川方に対し、豊臣方はその約半分。しかも「冬の陣」のときと違って、堀のない城では豊臣方は打って出るしかないのだ。

──緒戦で命を懸けて戦う後藤又兵衛や藤堂高虎、浅野長晟。豊臣を滅亡させることを躊躇う徳川家康。牢人衆を制御できない大野治長。乾坤一擲を狙う真田信繁。呪縛を乗り越えようとする豊臣秀頼。

諸将の思惑が入り乱れるなかで、いよいよ戦乱の世に終止符が打たれる!

矢野隆(やの・たかし)

1976年福岡県生まれ。2008年『蛇衆』で第21回小説すばる新人賞を受賞。その後、『無頼無頼!』『兇』『勝負!』など、ニューウェーブ時代小説と呼ばれる作品を手がける。また、『戦国BASARA3 伊達政宗の章』『NARUTO-ナルト‐シカマル新伝』といった、ゲームやコミックのノベライズ作品も執筆して注目される。また2021年から始まった「戦百景」シリーズ(本書を含む)は、第4回細谷正充賞を受賞するなど高い評価を得ている。他の著書に『清正を破った男』『生きる故』『我が名は秀秋』『戦始末』『鬼神』『山よ奔れ』『大ぼら吹きの城』『朝嵐』『至誠の残滓』『源匣記 獲生伝』『とんちき 耕書堂青春譜』『さみだれ』『戦神の裔』『琉球建国記』などがある。

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