メフィスト編集部員による特別座談会

文字数 2,775文字

「メフィストのリニューアルにあたって、メフィスト賞はどうなってしまうの?」

「そもそもメフィスト賞ってどんな作品が選ばれやすいの?」

「メフィスト賞に送るメリットって何?」

編集者が選び、賞金はないかわりに受賞作の書籍化を約束するメフィスト賞。

これまでミステリーを中心に、エンターテインメントの異才を輩出してきましたが、

リニューアルにあたって賞の選考は変わるのか、どんな作品を求めているのかを

メフィスト編集部員がお答えします。

Q.メフィスト賞の応募規定、何が変わるの?

A一番大きいのは、WEB応募のみになることです。

M メフィスト賞の募集は「メフィスト」が「小説現代」の増刊号だった頃からはじまり、かれこれ25年が経ったんですよね。「メフィスト」のリニューアルに合わせて今回応募要項を更新しました。一番大きいのはWEB応募のみにしたことです。プリンターを用意して相当の枚数を出力し、郵便や宅急便で送るのはたいへんですよね。コロナ禍でリモートも定着してきたので、書いて送るまでのストレスを限りなく減らしたいと思いました。

 

E そして少し原点回帰を目指したいと思っています。一番最初の応募要項では上限なし、下限ありだったのですが、WEB応募で枚数の負荷がなくなったので、これを復活させます。詳しくは応募要項をご覧ください。

Q応募する際、投稿規定のほか意識したほうが良いことは?

A作品の先には読者がいることを想像してください。

P 今後原稿はすべてWEB応募のみになりますが、原稿を送る際気をつけていただきたいことがいくつかあります。たとえば応募に際してはPDFでA4サイズ1枚あたり、40字×40行にしていただくなどです。規定をご覧いただければ大丈夫だと思いますが、他にお伝えしておくことはありますか?

 

H 「二作品を送ってもいいですか?」というお問い合わせをたまにいただきます。OKなのですが、個人的には一作勝負のかたの方が、最終選考まで残る確率が高い気がします。

 

I 枚数制限がなくなりますが、思いつくままに書くのではなく「本になる」ことをイメージして書いていただきたいと思います。その物語にそのページ数は必要か、自分がその長さの本を読みたくなるか? は、ぜひ一度考えてみてください。

 

S 誤字脱字は見直しをすることでだいぶ防ぐことができます。ぜひ原稿を見直してからご応募ください!

 

T 書き上げたあとに、少し時間をおいて最初から読み直すことが大切だと思います。この少し「寝かす」作業を挟んで全体に手を入れるだけで、作品と客観的に向き合うことができます。そしてもしできれば、応募前に誰か身近な人に読んでもらうことができたら良いと思います。

 

O 改行が多すぎる、または改行がなくてみっしりしすぎている、という原稿は、読み手を意識していないのかな? と感じることがあります。プロを目指す賞なので「読者」の存在をつねに頭の片隅に。

 

E 「デビュー作のタイトルはその作家の名刺代わりになるから大切」とある作家さんにデビュー担当の編集者がお伝えして、何度もタイトル案をやり取りしたと伺ってから、余計にタイトルって大事だなと意識するようになりました。もちろん、本にする前にまた考えれば良いことですが、原稿に面白いタイトルがついているとワクワクします。

Qどんな作品を求めていますか?

A究極のエンターテインメント作品です!

P メフィスト賞はミステリーの賞だと思われていますが、そんなことはないですよね?

 

H 作品の内容もスケールが大きいほうがいい、ということもありません。地球が爆発したり人が1000人亡くなったりする小説でも、登場人物の切実な感情が描かれていなければぐっとこないです。反対に、コップ一杯の水を飲む物語でも、登場人物がいかにその水を飲みたいと思っているかが鮮やかに描かれていれば、傑作になると思います。後者の方が難易度は高いですが……。

 

E 直したら良くなるとは思うけれど、突出したところがない作品はメフィスト賞に送ってもらっても厳しいのではないかと思います。それと、結論が出ていないシリーズの一作目、シリーズ二作目以降の原稿は、一作ごとに選考する新人賞なので不利だなぁと感じます。

 

M メフィスト賞の特徴の一つですが、応募の際自分自身の作品にキャッチコピーをつけることをお願いしています。たとえば自身の作品が世に出た時、帯に入る文言のような、コンセプトがはっきりしているというのは「一作家一ジャンル」ともうたっているメフィストの求めていることとも重なると思います。

 

H 「小説を書く」を目的とするとバランスが悪くなってしまうかも。「人の心を動かす」ということが目的であり、小説はあくまで手段です。自分よりも読み手のことを優先して原稿を書いてほしいです。その読み手は世間でも、自分でもかまいません。

 

I 「この人にしか書けないな」と圧倒される作品が読みたいです。特殊でなくていいんです。その人が生きている現場が、魅力的に描かれた作品に惹かれます。たとえば学校や会社の「朝礼」を笑える、深刻になる、恐怖する、泣けてくる物語として読ませることが出来る才能に出会いたいです。

 

O そうですね、感情の閾値を広げてくれる作品というか。普段生活していても味わえないくらい驚いたり、嬉しい気持ちになったり、笑ったり、悲しい気持ちになったりするようなものを読めたら最高です。

 

S 作者の姿が見えるものが読みたいです。この人は何が好きで、何を伝えたいのかがわかるようなもの。日常の些細な出来事を書くのでも構いません。その人「らしさ」が欲しい。好きな作家や作品の模倣ではなく、そこから一歩でもいいから抜けたものを。個人的には「イヤミス」の次の書き手が欲しい。人間の深層を抉るので、書くには気力も体力も経験もいるかもしれないのですが、中毒性が非常にあるジャンルだと思っています。

 

E 読んだあとに「明日も頑張ろう」と思わせてくれる小説。自分の実生活に元気をもらえると、小説の力を感じます。必ずしも「良いお話」である必要はなくて、すごく怖かったり、驚かされたりする小説だったら、それはそれで、現実の辛さを忘れさせてくれるのでとても好ましいです。

 

T 華麗な手品みたいな物語が読みたい。嘘なのは大前提なのに、本当のことのように感じて驚いてしまう。もっと気持ちよく騙してほしいと感じる物語が読みたいです。

 

M 作品の中身ではありませんが、年2作、できれば3作書ける馬力のある作家さんを求めます! 

 

H 書きたいものは、いまあなたが読みたいものであるべきです。ご自身で「こんな小説があったら、知らない作家さんでも1600円すぐに払うよ!」と思える作品が書けたら、きっと届きます。

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