『ふたりのトトロ 宮崎駿と『となりのトトロ』の時代』著者コメント

文字数 1,944文字

名作アニメ『となりのトトロ』公開から今年で35年。元ジブリ制作デスクの木原浩勝さんが、公開30周年の年に上梓した『ふたりのトトロ 宮崎駿と『となりのトトロ』の時代』(単行本 2018年刊行)が、超大幅に増補して文庫化です!

アニメ界の歴史に残るあの名作誕生の裏にあった、感動のリアル・ストーリーとは…⁉

木原さんが単行本刊行時によせてくださった著者コメントを今またここに!必読です!

『ふたりのトトロ 宮崎駿と『となりのトトロ』の時代』著者コメント

※2018年単行本刊行時のものです

 2018年の今年は、映画『となりのトトロ』公開30周年の記念すべき年にあたります。


 現在もテレビで放送される度に高視聴率を上げる『トトロ』ですが、実のところこれほど愛される作品であるにもかかわらず、その制作の実情が知られることはほとんどありませんでした。


 本書『ふたりのトトロ ―宮崎駿と『となりのトトロ』の時代―』は、この点を記録として残そうと思い立って書き著したものです。おそらく著者である私は、世間的に怪談の人で知られていると思います。その私が何故本書が書けたのか? それは今から30年前、宮崎駿監督からの要望で『トトロ』の制作デスクに抜擢されたからです。おかげで大変な責任と苦労を背負うことになりましたが、30年後の視点からいって実に楽しく、幾つもの奇跡のような幸運に恵まれた仕事であったと思っています。


 この30周年の年、私はアメリカのボストン、ワシントンD.C.、国立議会図書館、カナダのモントリオールで『となりのトトロ』の特別講演をさせて頂きました。驚くべきことに、その人気っぷりは、ひょっとすると日本国内を上回っているかもしれないと感じるほどの熱烈な歓迎を受けたのです。ことに、この講演テーマのお陰で、国立議会図書館の壇上に立った最初の日本人となれたのです。またこの講演によって、ワシントン・ポストにも取り上げて頂くという栄誉をいただきました。


 本書が出来上がったからこそ、しみじみと思うのです。これほど世界的に愛されている、おそらく日本を代表するアニメーションと言っても過言でない『となりのトトロ』が、これほどまでに作品以外のことは何も知られていないということを……。それだけに、本書の内容のほとんどは驚きをもって読んでいただけるものと思っています。


 ですが私が何より、書き残せて良かったと思う点が2つ。1つは第1章の「トトロ前夜」です。この章で初めて、『天空の城ラピュタ』が公開された1986年8月2日から『となりのトトロ』公式制作開始時の1987年4月1日までの、8ヵ月あいた空白期間に何があったかを書き残せたからです。2つ目は今年4月5日に亡くなられた高畑勲監督への追悼文が残せたことです。この中で初めて解き明かせたと思える事柄を書きました。それは、『となりのトトロ』といえば誰もが思い浮かべるあのトトロと謎の少女が並んでいるポスターの秘密です。おそらくこの文章を目にした人は、「謎の少女? メイでしょ? サツキでしょ?」とおっしゃられると思います。果たしてそうなのでしょうか。


 私も含めて、この謎の絵の答えだと思えることに気付いたのは、公開30年後の本書を書き上げた後だったのです。


 どうか興味をそそられた方は、本書『ふたりのトトロ』を是非一読していただければと思います。

木原浩勝(きはら・ひろかつ)

1960年兵庫県生まれ。アニメーション制作会社・トップクラフト、パンメディア、スタジオジブリに所属。

『天空の城ラピュタ』、『となりのトトロ』、『魔女の宅急便』などの制作に関わる。1990年『新・耳・袋』で作家デビュー。以来、「新耳袋」、「九十九怪談」、「隣之怪」、「現世怪談」シリーズ、『禁忌楼』など怪談作品を次々発表。怪談トークライブやラジオ番組も好評を博す。 また、本書の前作にあたる『増補改訂版 もう一つの「バルス」-宮崎駿と『天空の城ラピュタ』の時代-』が話題となり、欧米を中心に世界各国から日本のアニメやスタジオジブリに関する講演の依頼がきている。

……今年2023年はこの『トトロ』の初公開から35年の節目に当たる年です。
ワンポイントリリーフで設けられた小さなスタジオジブリ第2スタジオで誕生した映画が、これ程世界の人々から愛される作品になると誰が想像したでしょう……。(文庫版あとがきより)

「木原君、二人で『トトロ』を始めます」
前作『天空の城ラピュタ』公開後、宮崎駿監督が新任制作デスクの背中を叩いて言った。
それが始まりだった。伝説のスタジオジブリ第2スタジオで、世界中を虜にした名作『となりのトトロ』はいかにして生まれたのか?新資料とともに明かす感動のノンフィクション!

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