◆NO.11 花札占いの符合

文字数 1,611文字

関ケ原の戦い当時、家康に西軍最強の武将と恐れられた立花宗茂。そのひと世代前の時代、地元・九州筑前に将来を嘱望される3人の若者がいた。美丈夫で剣に長けた勇将・藤木和泉、軍師としての才能に恵まれた薦野弥十郎、そしてその二人を慕い、運命をともにする米多比三左衛門。三人の友情と姫君たちとの恋を描いた戦国の青春群像劇『立花三将伝』をもっと楽しむために、著者・赤神諒氏がウラ話を語る!
■主な登場人物
藤木和泉  立花家臣。鑑載派、のちに毛利派。
薦野弥十郎  立花家臣(のちに軍師)。鑑光派、のちに大友派。
米多比三左衛門  立花家臣。のちに大友派。
野田右衛門大夫  通称、右衛門太。立花家臣。のちに毛利派。
佳月  和泉の妹。のちに出家して桂月院に。
皐月  鑑載の娘。和泉、佳月の従妹。
立花鑑光  立花家、第六代当主。
立花鑑載  鑑光の養子。のちに立花家、第七代当主に。
藤木監物  和泉の父。鑑載の腹心。
薦野宗鎮  弥十郎の父。鑑光派、のちに大友派。
安武右京  立花家の筆頭家老。鑑載派、のちに毛利派。
戸次鑑連  大友最高の将。のちの立花道雪。


『立花三将伝』では<花札占い>を小道具として使っています。

私の小説では、時どき運命をテーマとしています。

長らくデビューできなかった下積みの時期。私は「運を味方に付けねばならない」と考え、開運の研究をしました。パワーストーンも結構勉強して、集めたりしました。風水の本を数十冊読んで、ある先生に学ぼうと決めて、教室にも通いました。



その教室に通っている方がプロの占い師として、花札占いをされていました。

そこからヒントを頂き、時代考証上も無理ではないと判断して、物語に使いました。

いざ書いてみると立花ですし、まあ、こじつけがありつつも、札が意外と登場人物の名前にぴったり合うんです。「皐月」は創作名ですけどね。

小説を書いていると、このように<ただの偶然>として片付けるのがもったいないような符合があるものです。

「もしかしたら本当の話でないか」と、思われた方も……いませんかね。



「皐月」
イラスト:山田章博


物語では、三将の師である野田見山がある種の霊力を持っています。

実は上記の私の先生も、霊能力があります。

最初は、誤解されるので、隠しておられましたが、霊能力がないと説明できないエピソードばかりでした。

ちなみに私は、やるときは割と真面目にやるので、どうせなら風水師になろうと考えた時期もあったのですが、先生が結局、霊能者であると知って断念しました。

霊力があっても、知り得るだけで、どう対処するかはまた別問題なんですけどね。




有名なオイディプスは、おそらくは何の非もないのに、運命に敗北しました。

人間のようにちっぽけな存在が運命に逆らう意味があるのか。

『立花三将伝』では、霊力を持つ見山が敗れて、

霊力などとは無縁な、何も知らない三左衛門が運命に勝利するという皮肉を描きました。

私は運命と向き合う人間の姿をこれからも描いていきたいと思います。 

皆さんは運命を信じますか。



御所八幡宮:出奔した弥十郎を和泉が止めようと説得する思い出の神社です。


写真提供:道雪会

赤神 諒(アカガミ リョウ)

1972年京都府生まれ。同志社大学文学部卒業、東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了、上智大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。私立大学教授、法学博士、弁護士。2017年、「義と愛と」(『大友二階崩れ』に改題)で第9回日経小説大賞を受賞し作家デビュー。他の著書に『大友の聖将(ヘラクレス)』『大友落月記『神遊の城』酔象の流儀 朝倉盛衰記『戦神』妙麟』『計策師 甲駿相三国同盟異聞』がある。

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色