〈8月26日〉 武田綾乃

文字数 2,232文字

一緒(いっしょ)(あそ)ぼう


 テレビ()(めん)(ちゅう)(おう)に、(ぼく)(そう)()する(しゅ)(じん)(こう)(うつ)()されている。コントローラーの(ビー)ボタンを()したらジャンプするし、(エー)ボタンを()したら(こう)(せん)(じゅう)攻撃(こうげき)する。ビビビビビと()(かい)(おん)がして(てき)(たお)れた。
 『きみの()ち!』と派手(はで)音楽(おんがく)(とも)()(めん)文字(もじ)()ているけれど、(ぼく)全然(ぜんぜん)(たの)しい()()ちになれない。いくら()ったって、一人(ひとり)じゃつまんない。
「あーあ、木下(きのした)(くん)(なに)やってるのかな」
 (たたみ)(うえ)(だい)()になる(ぼく)に、お(かあ)さんは「ゲームばっかりしてないでちゃんと宿(しゅく)(だい)もやりなさい」と()った。だけど(ぼく)全然(ぜんぜん)そんな()(ぶん)にならない。センチメンタルというやつだ。
 木下(きのした)(くん)(ぼく)のクラスメイトだった。(こえ)()けて()たのは()こうの(ほう)(ぼく)がゲームのキャラクターが()いてある(した)()きを使(つか)っていたら、「(おれ)もそれ()き」と(はな)しかけられた。
()かってんじゃん」と(ぼく)()ったら、木下(きのした)(くん)(うれ)しそうに「シシッ」と()()せて(わら)った。
 それから木下(きのした)(くん)(ぼく)(いえ)時々(ときどき)()るようになった。やることは勿論(もちろん)ゲームだ。(ぼく)(たち)はチームを()んで、一緒(いっしょ)(てき)(たお)しに()った。
 そんな木下(きのした)(くん)転校(てんこう)したのは一(しゅう)(かん)(まえ)だ。とても(とお)いところに()()した。「また(あそ)びに()くよ」なんて()われたけれど、本当(ほんとう)にまたなんてあるのだろうか。
 ふて()している(ぼく)に、お(かあ)さんが()った。
「そういえばさっき、木下(きのした)(くん)から()(がみ)(とど)いたわよ」
 はい、と()(わた)された便(びん)せんを(ぼく)(あわ)てて(ひら)いた。木下(きのした)(くん)からの()(がみ)には(みじか)(ぶん)(しょう)と、スマホの連絡(れんらく)(さき)()いてあった。
『インターネットを使(つか)ったらこれからも(あそ)べるんだって!』
 (ぼく)はお(かあ)さんから()りたスマホを使(つか)って、木下(きのした)(くん)連絡(れんらく)した。そして(つう)()(つな)いで、僕達(ぼくたち)はお(たが)いのゲームのアカウントを登録(とうろく)()った。
「よっしゃ、もう(いっ)(かい)(たたか)おうぜ」
「うん!」
 (いま)(ぼく)たちは(とお)(はな)れたところに()んでいる。(ちょく)(せつ)(かお)()(はな)すことはとても(むずか)しいことだ。だけどどれだけ(はな)れていても、こうして(こえ)()わして一緒(いっしょ)(あそ)ぶことはできる。
「すげぇ(たの)しい」と(わら)(ごえ)()げる木下(きのした)(くん)に、(ぼく)(おお)きな(こえ)()った。
(ぼく)も!」


武田綾乃(たけだ・あやの)
1992(ねん)(きょう)()()()まれ。(だい)(かい)()(ほん)ラブストーリー(たい)(しょう)(さい)(しゅう)(こう)()今日(きょう)、きみと(いき)をする。』で2013(ねん)にデビュー。「(ひび)け! ユーフォニアム」シリーズはテレビアニメ()もされ、(にん)()(はく)している。その(ほか)著書(ちょしょ)に、『(あお)(はる)(かぞ)えて』『その()(あか)()(そら)()んだ』、「(きみ)()ぐ」シリーズなど。(さい)(しん)(さく)(あい)されなくても(べつ)に』、(こう)(ひょう)発売(はつばい)(ちゅう)

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