10代に捧ぐ! 読書感想文におすすめの10冊

文字数 2,556文字

今回、「読書感想文」に取り組む10代の方々にぜひ読んでほしい本を厳選して10冊ご紹介。

本を選んでくれたのは、プロの書評家として活動する三宅香帆さんです。

書き手:三宅香帆(書評家)

1994年生まれ、高知県出身。著書に『妄想とツッコミで読む万葉集』『副作用あります!?人生おたすけ処方本』『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』『人生を狂わす名著50』がある。

Twitter: @m3_myk

『謎の独立国家ソマリランド』

(高野秀行)

読書感想文のコツはただひとつ。「自分が面白いと思えるエピソード」が載っている本を選ぶことだ。なぜなら面白いと思える箇所がひとつでもあれば、そのエピソードを紹介し、なぜそれが面白かったのか書き、字数を稼ぐ……という手が使えるから。


高野さんのソマリランド潜入記である本書は、読むと「えっこんな国あるの!?」と驚く場面がひとつはあるだろうから、読書感想文におすすめです。


変わった紀行文としても面白いよ!

『バッタを倒しにアフリカへ』

(前野ウルノ浩太郎)

なにかがすごく好きで、だけど世間にはそのなにかのすごさが知れ渡っていない……そんな趣味を持つ人もいると思う。


この本は、「バッタ」が好きで、バッタのために人生をささげた研究者のエッセイ。ものすごく何か好きなものがある人は共感できると思うので読んでほしい本。


研究者の話だから、中高生なら、大学の志望学部を選ぶときの参考にもなりますよ~。

『青い春を数えて』

(武田綾乃)

『響け! ユーフォニアム』シリーズの作者による、少しにがめの青春小説集。


短編小説たちなので、時間のないときにも細切れに読める。友達にちょっと嫉妬したり、家族にざらっとした違和感を覚えたり、将来どうなるか分からなすぎて泣けたり、自分のことが嫌いだったり。どこかしら感情移入できるポイントがひとつはあると思うので、青春がキラキラしすぎている物語が苦手なあなたに、ぜひ。

『あのひとは蜘蛛を潰せない』

(彩瀬まる)

親子関係に悩む方がいたら読んでほしいなと思ってしまう、母との関係に葛藤する娘が主人公の小説。


大人の女性が主人公だけど、「親からはいつでも自由になることができるし、勇気をもつのはものすごく難しいことだけどもった先にはなにかある」と思える物語なので、学生さんにも読んでほしい。

『夢を与える』

(綿矢りさ)

SNSの使い方や自分をコンテンツにすることについて考えさせられる、とある芸能人の女の子の人生を描いた物語。


他人の欲望に自分の人生を売り渡すと、そのあと、どこかで自分の欲望との折り合いがつかない日がやってくるんだと思う。


自分のSNSの使い方を考え直してみる、みたいなテーマで読書感想文を書くのもおすすめの小説。

『海と毒薬』

(遠藤周作)

名作と呼ばれるような、ちょっと昔の時代の小説で感想文を書きたいなら、遠藤周作がおすすめ。


なぜ戦争中の日本人は、「生きた人間を生きたまま殺す」……つまりは生体解剖をおこなうに至ったのか? 実際に行われた実話をもとに、当時解剖に携わった医師の心情を描いた小説。


物語のなかで問われていることに答えを出す気持ちで読書感想文を書いてみてはどうでしょう。

『氷点』

(三浦綾子)

驚きの結末に、「いったいなぜ?」と思ってしまう人もいるであろう小説。


自分の娘を殺した犯罪者の娘をひきとった若き夫婦。何も知らずに育つ娘・陽子。キリスト教で「汝の敵を愛せよ」という教えがあるけれど、それは実際、どういう教えなのか?


面白いだけじゃなく、自分の中で問いを持たずにはいられない小説を読みたいあなたに。

『ミズーラ 名門大学を揺るがしたレイプ事件と司法制度』

(ジョン・クラカワー著、菅野楽章訳)

社会問題を扱ったノンフィクションだと、その問題について自分の考えたことを書けばよいので、読書感想文の題材に最適だと私は思う。


アメリカの大学で、エリート集団であるアメフトチームが、複数のレイプ事件を起こしていたことが発覚、どうしてそんなことが起こったのか? を探っていくノンフィクション。


近年日本でも問題になっている男女差別、格差社会、裁判制度についての問いかけが真摯になされているので、ぜひ大学に入る前にいちど読んで、頭の柔らかいうちに、自分なりにどうしてこんなことが起こったのか? を考えてみてほしい。

『大きらいなやつがいる君のためのリベンジマニュアル』

(豊島ミホ)

小説家・豊島ミホが、自分の学生時代に不登校になっていた経験を受けて、その後の人生でどうやって他人への憎しみをあつかっていったらよいのか? を丁寧に教えてくれるエッセイ。


ものすごく嫌いな存在がいるとき、その憎しみにとらわれないで生きていくのは、実は大人でも至難のワザだと思う。豊島ミホが編み出した「憎しみへの対処法」、ぜひ一度読んでみてほしい。岩波ジュニア新書の本なので、図書館で見つけやすいかも。

『私とは何か 「個人」から「分人」へ』

(平野啓一郎)

「分人主義」って言葉を聞いたことがあるだろうか?


作家・平野啓一郎は、この本のなかで、「本当の自分をみんな探すけれど、本当の自分はいないと考えたほうがいい。そのかわり、他人の前にいるときの自分がそれぞれいるのだ、と分けて自分を考えたほうがいい」という考え方を提唱する。


自分ってどんな人間なのか? どうしたら自分を好きになれるのか? そんな問いを持っている人は、ぜひこの新書を読んで、自分はどう考えたいか読書感想文に書いてみてほしい。

終わりに:書き手から10代の人たちにむけて

いまでは書評家という、読書感想文が仕事、みたいな職業に就いているのですが、学生時代に読書感想文を書くのはあんまり好きじゃありませんでした。だって本を読むのは面白くても、それをどうして作文にしなきゃいけないのかよくわからなかったから。


何で作文にしなきゃいけないのか、は、人によって答えが異なるとは思いますが、今思うと、もっと素直に自分の考えや面白かった部分の感想を書いていたらもっと楽しく書けたのかもな〜、と。


読書感想文を書くことで、本を通して学生さんたちがもっと自分の意見や感情を素直に書けるようになれるといいな! と思いながら本を選びました。


どうか素敵な、夏休みを!

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