第5回/夜の「魔」に気をつけろ!

文字数 1,949文字

こちらはインターネットに生息するふしぎないきもの・にゃるらがインターネットと独り暮らしとそれ以外について深夜に執筆している画像付きエッセイです。→@nyalra


第1回はこちらから

 深夜のインターネットには魔物が棲んでいる。正しくは、自分に魔が入り込むと言いますか、もっとわかりやすく言えば「ダウナーな方向での深夜テンション」が発生します。深夜の薄暗い部屋で青白いモニターを眺めているうちに、だんだんと気持ちがどんよりし始め、日中は思ってないような鬱々とした内容を投稿してしまう。


 けっしてウソや構って行為ではない……つもり。その時は、本気でそれくらい気持ちが沈んでいて、とにかく頭の中がネガティブなことでいっぱいなのですね。そういう日ってあるでしょう。そんな時、思わず魔が差してしまって、現在の感情を誰かに見てもらおうと、心配されてしまうような文章をSNSに投稿、または最悪の場合誰かにDMしたりする。その時は、本気なんですよ。たしかに。


 ……が、一旦寝て起きて読み返した際に、真の地獄がやってくる。


 なんだこの恥ずかしいポエムもどきは。なんなんだ、このバカ丸出しのメッセージは。しかも、優しい人たちはちゃんと心配して連絡してくれている。本当に申し訳ないけれど、あれは深夜の「魔」であって、思いの外ぐっすり寝ちゃった今はビックリするほど平常だったりするのです。は、恥ずかしい〜!!!


 当時は、もう正常な判断とかつかなくて、「え……この鬱屈した感情を言語化できた僕って……天才!?」って落ち込みつつもピンチをチャンスに変えた自分の才能にウキウキするまであったのに、いざ読み返してみると一ミリもセンスを感じられない。だらだら意味ありげな文章を並べているのに、冷静な頭で読むと「誰かかまって〜!!!」くらいしか中身がない。なんて薄い人間なんだ僕は。もちろん、即消す。


 ということが若い頃は多々ありまして、それこそ深夜特有のローテンションに睡眠薬で不安が消えた頭の組み合わせにより、わけのわからんポエムの量産工場だったりしたのですが、数年経ったいま考えると「逆に」あれはあれで味があったかもなと思ったりします。まあそれも、あくまで「逆に」であって、真っ当に評価されるとヤク中の戯言でしかないのですが。でも、酔っぱらいが急に本質的なことを言い出すみたいなシチュエーションあるじゃん! 奇跡的に、そんな感じの雰囲気出ている時もあるんだよね。起きてからも、「意外とこれ悪くないな……」みたいな。まあ、9割は恥ずかしさに耐えきれず消すんですけど。


 あれから数年。今では、僕が深夜に若者からポエムを送られてくる側になったのですが、この前なんかは全く知らない人から急にDMで遺書が送られていた。


 これが、なんと不幸なことに僕が気づくのが遅くてですね。起きたら、なんか長文でその方の半生的なものが綴られていて、「返事は要らないよ。読んでくれてありがとう」みたいな文末で締め括られている。十中八九、返事を待っているパターンですね。寝てたけど……。


 で、絶対そうだろうな〜と思って本人のアカウントへ飛んでみると、やっぱり生きている。生きている上で、「あーーーにゃるらさんに変なメッセージしちゃったよ」とめちゃくちゃ後悔していており、なんだかこっちが恥ずかしくなってきます。本気で死の覚悟があったなら、恐らく一度もコミュニケーションしたことのない僕でなく、もっと大切な人か不特定多数にメッセージを出す筈ですからね。たぶん深夜にも起きてそうなのが僕だっただけで、夜の「魔」にあてられて妙に感情が揺れ動いてしまったのでしょう。こうなると僕も見て見ぬふりしてあげるしかない。冷静になって昼に「すみません。寝ていました! 大丈夫ですか!?」なんて時間差で心配されたら、それこそ本当に死にたくなってくるでしょうし。


 しょうがないさ。流石に、無関係の人物から自殺を示唆する連絡はやめて欲しいけれど、そういう夜もある。夜の静寂には、月の光にはそういう効果がある。ぜんぶ、月のせいにして忘れましょう。数年経って思い返した時に、「あれ? あの時の文章意外と悪くなかったじゃないか?」ってなったりしますよ。それ以上に、夜が来るたび思い出して顔真っ赤になるでしょうけどね。月を見るたび思い出せってね。あー死にたい!!!

【えみるとルールーの等身大タペストリー】

プリキュアには、数年前から等身大タペストリーが発売されるようになりまして、これ一つ飾るだけで一気に部屋が女児アニメの煌めきに包まれる。キュアマシェリとキュアアムールは、歴代プリキュアでもトップクラスに顔が良いと個人的に感じております。

来週も月曜深夜に更新予定です。それでは、おやすみなさい。

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