第10話   好きな人の妻ではなく妹になりたい、がわたしにとっての「家族」

文字数 2,207文字

程よい強欲を自負しているわたしだけれど、人生でめちゃくちゃ手に入れたいもの、絶対欲しいもののひとつに、「家族」がある。
生まれたときから決まってる家族ではなくて、自分で選べてつくれる新しい方の家族。

その「家族」で叶えたいのは、親がしてくれなかったことできなかったことをしたい、赤の他人と家庭を運営してみたい、という安易で舐めくさってるような願望だけれど、わたしにとってはわりと強い欲望でもある。
特にここ数年、自分がどこまで他人に向き合えるのかを知りたい、子育てという大きめのライブイベントに参加したいという、自分を楽しませたいがための、家族形成≒結婚願望がうずうずと湧いてきている。

ただ、そもそも家族とは、というものについてぼんやりと考えたとき、自分の婚姻関係を結んでいるパートナー、プラス子ども、みたいな像しか思い浮かばないのはおかしいのではないか、と悶々し始めてきた。
びっくりするほどオーソドックスな、なんというか、これが「普通だ」と思ってるだけの、これまで刷り込まされてきたような家族像だ。
多様性が増えつつある現代社会において、本気でそうしたいと思ってんの? それ以外に選択肢があることを知らないだけじゃないの? と唸り出した頃、「"結婚"ではなく親子になった」という男女のインタビュー記事を読んだ。

そのときに、わたしが本当に欲しいのってコレじゃね……!!!? と電流が走ったのだ。
風神雷神ほどではないけど、しばらく余韻が残る電気風呂ぐらいの電流。
わたしは好きな男の妻ではなく、娘になりたいんじゃね……!?! という衝撃。
母子家庭で育ったことも関係あるんだろうけど、好きな男につい父性を求めてしまう自分が本当に求めていたのは、好きな男との揺るぎない「元の家族」関係なのでは…!!?

思い当たる節はあった。
恋愛として好きで好きで、それ以上に意見を交換するのが楽しくて一生こうして話していたい、わたしの人生を見ていてほしいし彼の人生も見ていたい、と思えた男ふたりと別れたとき、彼らの恋人じゃなくて妹になりたかったな、と心底思ったのだ。
それなら一時の感情に揺さぶられて別れる別れないなどという脆くて危うい関係性じゃなくなるし、家族だから、という一種の諦めと寛容のもと一緒にいられる。
身近な人間のなかで一番信頼していて、尊敬している面もあり、げらげら笑いながら酒を飲んで散歩ができる。性的なことを抜きにすれば、最高の家族だろう。
元恋人のひとりである腐れ縁の男とは、自分たちに恋人という関係性は向いていないけれど、兄妹ならなんの気兼ねもなく一緒にいられるのにね、という話も幾度なくした。

そしてなにより、わたしはこの恋人を好きだけれど、俗にいう夫・妻(+子どもの親)として在りたいわけではない、ということにも気づいてなかった。
これまでは、恋愛の果てには結婚があり、結婚とはすなわち自分が好きな男と暮らし、その男と自分の子どもを育てていくこと、という漠然とした思い込みがあった。
だからこそその記事を読んでから、恋人→結婚じゃなきゃ駄目、とかいう思考停止の考えはどうやら違うっぽい、とごく当たり前のことに気がついたのだ。

家族とはまたべつに、わたしが将来叶えたい夢として、「好きな人間たちと同じマンションに住み、部屋を好きに行き来し、子育てなども支え合う」というものもある。
よくネットで見る、オタク友達と老後を過ごしたい的な願望だ。
ルームシェアなんて家事や暮らしのルールの面で揉めること間違いなしだし、コミュニケーションの楽しさや母数多めの大人で負担を分担するという、旨いとこ取りだけしたい。

最近はもはや結婚とかではなく、この暮らし方が正解なのでは、という気にますますなってきた。
相手がいないのに子どもをどうやって成すのかとか、養子にするのか子どもが可哀想だと思わないのかなどは置いといて、
大勢の大人で助け合う、子育てをし合う、という形式。
これがもしかすると一番安定して次世代の育成を行える環境なのではないか。
この案は子ども嫌いの友人を除けば、友人たちの親の離婚率が高いこともあり、わりと好反応が返ってくる。
結婚なんて確実じゃないしね。子ども産むってなったら女側が基本的にキャリア形成を諦めなきゃいけないってのもムカつくし、支え合っていきたいよね、等々。

このコミューン的な暮らしは、一昔前のムラ社会と同じだろう。
明治時代末期とかから家族、結婚の形がゴリゴリの枠にはめられるようになってきて、もうさすがに人類も気がついていると思う。
ふたりの人間(しかも所得は昔よりも苦しい)が子どもを成人まで育てる、というオーソドックスな家族の形式に旨みが少なすぎることに。

もう令和だしZ世代だし、家族の定義なんてもはやないし、性の多様性と同じように、家族の多様性も腐るほどあればいい。
のんびり試行錯誤しながら、バツとかも3つぐらいまで増やしながら、自分にとって面白くてしっくりくる「家族」の形を探していきたい。

★次回は2月22日(月)に公開予定です!

こみやまよも
 春から営業として働くこじらせ女子。
  好きな人は、いくえみ綾とoyumi。
  就活でことごとく出版社に落ちたのを根に持っている。

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