No.4 『空貝』登場人物との対話その3
文字数 2,036文字
「戦国BASARA」でもおなじみの伝説的女武将・鶴姫と、主家への復讐を企む若き軍師・越智安成の悲恋を描いた『空貝(うつせがい) 村上水軍の神姫』。
『立花三将伝』や『大友二階崩れ』で戦国の武将たちを描いた赤神諒さん入魂の「恋愛歴史小説」であるこの物語の文庫化によせて、登場人物×赤神諒さんの架空座談会?をお届けいたします! 最終回!
赤神:では、いよいよ第三回は――
ウツボ:青神さん、実はな。あんたの企画書を見て、こいつはピリッと来ねえ座談会になるって見えてたからよ。ちょいと気を利かせて、スペシャル・ゲストを呼んでおいたんだ。
赤神:え? 誰がいらっしゃるんですか? 何も聞いてませんけど。
松:へえ、そいつは楽しみだねえ。
ウツボ:想定外の大物だ。任せな、青神さん。このウツボ、読者の皆様の度肝を抜いてみせる。
赤神:私は楽しくできたらいいなって思ってるだけで、別にそんなことお願いしてませんよ。で、どなたなんですか?
松:いらしてからのお楽しみなんでしょうけど、あたしは越智通重さんじゃないかって、踏んでる。
赤神:失礼ながら、あの善良な老紳士で、度肝を抜けますかね……。
松:ウツボは昔から策士なのよ。思いっきり期待させといて、あれ?って肩透かしを食らわせるわけ。ウツボなんかに大物を連れて来られるもんですか。
ウツボ:まあ、見てなって。ルール違反と言っていいほどの凄まじい衝撃をこの場に巻き起こしてやるぜ!
赤神:だから、衝撃なんて求めてませんって。最後だし、むしろほんわりと――
松:鮫之助さんかと思ったけど、それじゃ、想定内かな。てことは……あの音、何?
(ず、ずん、ずしん……)
ウツボ:おいでなすったぜ。廊下を歩いてなさるんだ。
赤神:ではまさか、鬼鯱さん……。
松:ああ、あの人、後半全然出られなかったからって、かなり不機嫌だったわよ。大三島でやったいつかの打ち上げじゃ、作者をいてこましたるって言ってた。関西人なの、あの人?
赤神:そんなややこしい負の感情を持ってるキャラを呼ばないでくださいよ。戦死なさったんですから、その後もう出しようがないじゃないですか。
ウツボ:登場人物にしてみりゃ知ったこっちゃねーや。小説家としての力量次第だわな。
――赤神ィ~
赤神:あ、あの太い濁声は、もしや……。
ウツボ:ささ、お待ちいたしておりました。約束のお酒はここに……。あ、まずった。全部、呑んじまったぜ。旨い酒をご馳走するって約束なんだが。
赤神:ウツボさん、いったいどう収拾つけるつもりなんですか?
――待たせたのう。
松:え? こ、このお方は、戸次道雪さま?!
道雪:まずは駆けつけ一杯もらおうか。バラン三十年をロックで頼む。
ウツボ:すぐに用意させやす。ほら、青神さん、とっておきのを出せよ。
赤神:お、畏れながら、この座談会は道雪公に登場いただいております<大友サーガ>ではなく、あくまで『空貝』の――
ウツボ:何人たりとも、予測も真似もできぬ型破りの用兵。道雪公は『大友落月記』文庫版304頁に、あんたが書いた通りのお方よ。驚いたろ? 実はあっし、大ファンなんだ。さ、秘蔵のバラン30年、取ってきな。
松:作品を飛び越してゲスト出演なんて、もう無茶苦茶ね。では、読者の皆様、またお会いできる日まで、ご機嫌麗しゅう。重版かかったら、姫にも出てもらいますよ!
■主な登場人物
《伊予水軍》
大祝鶴姫(おおほうり・つるひめ) 大祝家絶世の美姫。陣代で台城主。十六歳。
越智安成 大祝家直属の大三島水軍の軍師。二十歳。
ウツボ 安成の腹心。
村上通康 来島村上水軍の頭領。二十三歳。
村上尚吉 因島村上水軍の頭領。
鮫之介 大祝家に仕える水将。鶴姫の武芸の師。
松 鶴姫の乳母にして、侍女。
大祝安舎 第三十二代大祝。大祝家当主。鶴姫の長兄。
大祝安房 陣代。鶴姫の次兄。
越智通重 大祝家臣。安成の舅。小海城主。
磯 安成の妻。通重の養女。
シャチ 来島村上水軍に身を寄せる少年。
《大内水軍》
小原中務丞 剛勇無双の猛将。別名、鬼鯱。
白井縫殿助 大内水軍きっての謀将。