浅田次郎『兵諫』の地に立つ
文字数 1,235文字
▲ 張学良軍の急襲から逃れた蒋介石は、西安郊外の驪山中腹の岩陰に隠れているところを発見され捕らえられた。その地に建てられた「兵諫亭」。
中国清朝末期、西太后の時代の激動を描き『鉄道員(ぽっぽや)』の前年に“幻の直木賞受賞作”と呼ばれた大傑作『蒼穹の昴』、義和団事件の裏側に迫る宮廷ミステリー『珍妃の井戸』、馬賊から中国の覇者を目指した張作霖の大冒険『中原の虹』、張作霖爆殺事件の真相を日本の軍人が追う『マンチュリアン・リポート』、張作霖の力を引き継いだ張学良は欧州へ。ラストエンペラー・溥儀が皇帝となる満洲国と軍国化が進む日本の浅からぬ関係を綴った『天子蒙塵』。天命の具体「龍玉」の在り処を鍵として紡がれる浅田次郎氏の近代中国大河小説『蒼穹の昴』シリーズは、『兵諫』が第6部となる。
▲ 明代に築かれた西安の城郭は一周約14キロメートル、高さ12メートル、上部の幅が12~14メートルという巨大なもの。
1936年12月、長く続いていた国民党軍と共産軍との内戦は最終局面を迎えており、蒋介石はいよいよ共産軍を殲滅しようと南京から前線の西安へ進出した。だが12日未明、剿共戦に当たっていた張学良が突如叛旗を翻し、蒋介石を拉致監禁して内戦の停止や一致抗日を要求した。盟友だった二人の間にいったい何があったのか。解決に至る道筋も含めて現在まで謎に包まれている西安事件を、浅田氏は歴史ロマンとして読み解き、シリーズのターニングポイントとなる傑作『兵諫』を世に問う。
日本では陸軍参謀本部という秘密の匣の中で石原莞爾が情報を操っており、中国では西安事件の軍事法廷で、張学良は首謀者ではないとする証言がなされた。
日本と中国の運命を変えた2つの兵乱にはいかなるつながりがあったのか。
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