①愉快、爽快、痛快事件簿

文字数 2,046文字

オラオラ、「ドラよけお涼」のお通りだよ!

『創竜伝』『銀河英雄伝説』『アルスラーン戦記』など大人気シリーズを世に送り出してきた田中芳樹さんのもう一つの人気シリーズ、「薬師寺涼子の怪奇事件簿」。最新刊『海から何かがやってくる 薬師寺涼子の怪奇事件簿』が講談社文庫より刊行になるのを記念して、お涼さまの魅力を深堀りしていきます!

「コロナ禍生活ももう1年半以上。感染者が少なくなってきているとはいえ、なかなか気分が上がらない」

 そんなボヤキも聞こえてくる今だからこそ、読めばスカッとする小説を紹介しましょう。

 それはエンタメ界屈指の痛快さを誇る「薬師寺涼子の怪奇事件簿」なのであります!


 大人気シリーズだけに、「そんなこと知ってるよ!」なんて言われそうですが、久しぶりに講談社文庫から発売されるので、ちょっとだけおさらいにお付き合いください。


 著者は『創竜伝』『銀河英雄伝説』『アルスラーン戦記』などたくさんのシリーズを生み出した大ヒット作家・田中芳樹さん。男性キャラが活躍する作品のイメージが強い田中さんがなぜ薬師寺涼子を主役にしたのか? その答えは『女王陛下のえんま帳 薬師寺涼子の怪奇事件簿ハンドブック』(光文社刊)に収録された田中さんのコメントにありました。


 「ちょうど講談社文庫でフェアのための書下ろしを頼まれてまして。そのころ中国の歴史物で苦労してたので、気分を変えて現代物をやりたいなと思ったんです。「じゃあ、とにかく犯人に対してナサケヨウシャない探偵を出そう!」と(笑)。人間だけが相手だとものたりないから、お化けの出る話にして。とにかく情け容赦ない探偵、犯人の前で「ざまーみろ」と高笑いするくらいのキャラがいいなと。で、犯人にしてみると、男に「わっはははは!」と笑われるより、女性に「おっほほほほ!」と笑われるほうが、もっと傷つくんじゃないだろうか、と担当さんと意見が一致しました。それで女性探偵のキャラを考えたんです。」


 そうして生まれたのが薬師寺涼子(27歳)。

「社長令嬢」「東大法学部卒」「警察キャリア」で容姿も頭脳も財力も完全無欠。さらには「傍若無人」という大きなおまけ付き! 「ドラよけ(ドラキュラもよけて通る)お涼」と呼ばれて周りから恐れられています。


 こんなスーパーヒロインが活躍するとなれば、面白くないわけがありません! 『魔天楼 薬師寺涼子の怪奇事件簿』をはじめ、これまで11作品を刊行。漫画にもアニメにもなったのであります。


 さて、ここからは見逃せないポイントをご紹介!


【爽快! 薬師寺涼子vs.怪生物】

 人智を超えた怪生物たちとの戦いが「怪生物登場→困る人々→やっつける主人公」というストーリーであったならば、昔の特撮モノとさほど変わらなかったでしょう。


 女性探偵とあったように、このシリーズはミステリーの一面も持っています。お涼さまの推理によって導きだされた手段を使い、怪生物たちを叩きのめします。その手段たるや、お涼さまだからこそ出来た常識やぶりのモノばかりで、部下も同僚も巻き込まれ、酷使されることに。


 謎解き部分は知識もあふれ、読み応えあります。


【痛快! 薬師寺涼子vs.時代を代表する悪役】

 現実も反映するこのシリーズ。読めばスルスルと国内外の社会情勢が理解できます。


 さらには国民の批判の的になりそうなエラい人や組織も登場。「勧善懲悪」のうち「勧善」という文字など頭にない魔女王・お涼さまが痛めつけてしまいます。


 この風刺がたまりません。


【愉快! 薬師寺涼子vs.部下】

 お涼さまの直属の部下であるノン・キャリアの泉田準一郎警部補(33歳)は、「部下」以外に「助手」「奴隷」「家畜」「弟子」「副官」「椅子」など様々な呼称を持つ男。


 毎回無茶な上司命令にも関わらず、忠臣・泉田は警視庁イチ(世界一?)の過酷な労働をこなしています。その姿はまさに公務員の鑑……と自分自身では思っているようですが、怪奇事件を経験すればするほど、上司への的確なツッコミ(毒?)が増え、行動までも大胆に。

 

 絶対服従の関係であっても、お涼さまからのアプローチには、まったく気づかない泉田。いくら傍若無人なお涼さまであっても、そっち方面は苦手?(←本人は認めないでしょう)



 ……魅力をもっともっと語りたいところですが、お時間となってしまいました。

 おもしろくて「スカッ」とする「薬師寺涼子の怪奇事件簿」シリーズ。

 あとは作品でお楽しみください!


『海から何かがやってくる 薬師寺涼子の怪奇事件簿』


敵は深海怪獣、自衛隊、海上保安庁!?

警視庁の破壊の女神、絶海の孤島で

全軍突撃!

絶海の孤島に作られたリゾート地に怪生物が襲来。飛行艇が破壊され、島の人々に危機迫る。未解決事件の捜査で居合わせた薬師寺涼子警視は事態の収拾を急ぐが、海自と海保との主導権争いに巻き込まれ……。怪物と悪役(?)相手に「ドラよけお涼」の血が騒ぐ。部下の泉田を引き連れて不穏な謀画スタート!

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