青木崇高×麻見和史 「公安分析班」シリーズ、ドラマ化&文庫化記念対談②

文字数 4,171文字

ドラマ化もされ、累計70万部超! 麻見和史さんが手掛ける大ヒット警察小説「警視庁殺人分析班」シリーズ。

その対となる「警視庁公安分析班」シリーズ(『邪神の天秤』『偽神の審判』)がついに文庫化、さらに2月からドラマが放送されることになりました!

文庫化&ドラマ化を記念し、主人公・鷹野秀昭を演じる青木崇高さんと麻見さんの対談が実現!

熱く語られるキャラクターの魅力――2日連続公開後編のスタートです!


構成:根津香菜子  写真:村田克己

見えてきた新しい「顔」



──麻見さんは青木さん演じる鷹野のどんなところに魅力を感じますか?


麻見 小説の「警視庁殺人分析班」シリーズは、如月塔子という女性刑事の視点で書いてきました。如月が捜査に行き詰まると、相棒の鷹野は「これはこういう風にしなくちゃいけないよ」と教えて、彼女の成長を促していくんです。だから鷹野って、実は最初から完成された人間だったんですよね。なので、原作の「警視庁殺人分析班」シリーズの方では鷹野はほとんど失敗をしないんです。それを「鷹野を公安に異動させましょう」となったときに、以前は刑事部のエースだった彼が、新しい部署に入ってけっこう戸惑ってしまう。周りとの軋轢もありますよね。でもそこで苦労しながらステップを上がっていく過程を描くうち、鷹野もまだ成長できるんだなと感じました。


青木 鷹野にもまだ伸びしろがある、ということですね。


麻見 悩んだり落ち込んだりする場面もあるけれど、自分のやり方を押し通して、新しい部署でどう頑張るかということを考えていく。そんな鷹野の人間くさいところも見せられると思いましたし、「鷹野にこんな面があったのか」と発見できたのは自分でも新鮮でした。


青木 今回演じていてちょっと気になっていたことが、今のお話で少しすっきりしました。演じながら自然にポロっと出た表情をモニターで見たときに「あれ? 今のは鷹野じゃなかったな」って思ったこともあったんです。そのことを監督に確認したら「いやいや全然問題ないよ。(鷹野に)そういうところあると思うよ」と言われたんです。

 それで気づいたのが、長いこと演じていたがゆえに「鷹野ってこうあるべきだ」「こうじゃないといけない」みたいな縛りがあったんじゃないかって。今までは如月の上司として完璧な姿を見せていたところを演じていたのですが、今回は鷹野が中心に立っていろいろな側面を見ることができるという意味では、ふとした表情が今までの鷹野じゃないっていうところはあってしかるべきというか、良いことなんだなと思うようになりました。


麻見 それは長く鷹野を演じられている青木さんだからこそ、新しい鷹野が見えたと感じたのでしょうね。

次作の舞台は海外、アクションも盛り盛りで!?



──青木さんから、今後こういう鷹野を演じてみたい、こういうシーンがあったら、といったリクエストはありますか。


青木 そうだなぁ……水中に潜る!(笑)。そういうのは今までないですよね。


麻見 そうですね、あとはカーチェイスとか?


青木 走って追うことは何度もありましたけど、乗り物に乗って追うっていうのはないですね。僕もまだ身体は動くので(笑)、アクション系はぜひやりたいです。


麻見 推理メインの「警視庁殺人分析班」シリーズよりも、「警視庁公安分析班」シリーズの方がスリル、サスペンス、アクションという要素が多いんですよね。だから、もしこの先を書くとしたら「ミッション:インポッシブル」とまではいかないまでも、鷹野が身体を張ってどこかに潜入するといったシーンがあれば、映像にしたときにも映えるんじゃないでしょうか。


青木 それは面白そうですね! 刑事部ではちょっと踏み込めないエリアに銃を構えて捜査に行くのは公安部ならではですよね。今回のドラマでも結構なアクションシーンがあったのですが、その日は僕も氷室沙也香役の松雪泰子さんも身体がバキバキでした(笑)。でも、そういう場面はより緊張感があって好きなんです。


──今後、「公安分析班」シリーズの続編でどのような構想があるのかを、ちらっと教えてください。


麻見 ミステリー要素はもちろん入れていきたいですが、公安ならではの潜入捜査や、協力者を使う場面など、ヒリヒリするようなサスペンス、それから男の闘いみたいなものも書いていけるといいなと思います。あとはどれだけ大きな敵を作れるかですね。公安ですから相手はただの殺人犯ではないかもしれないし、日本国内にとどまらず海外との絡みもあるかもしれない。公安部だからこそ広い世界でお話を作れるという感じはしています。


青木 海外が舞台になると、より一層スケールが大きくなって面白くなりそうですね。


麻見 裏に巨大な黒幕がいたり、組織的な犯罪があったりすると思うんですよね。公安だとそういうのが書けるのかな、と。


青木 そうか、公安の話になるとそれがナチュラルにできるわけですもんね。


麻見 スパイ的な活動がメインになってくるので、すごくスリルがあると思います。ドラマにとても向いている題材だと思いますし、鷹野がいろんなところに首を突っ込んでいくというのはありかもしれないですね。


青木 実は僕の中でまだクエスチョン(?)がついていることがあって、ぜひ麻見先生にお伺いしたいのですが、公安の仕事って、未然に事件を防ぐために、場合によっては何年もその案件にタッチしたり、もしかしたら周囲の人たちにまで危険が及ぶかもしれないから、簡単に恋人も作らず、家族も作らないという人もいたりするかもしれないですよね。そういった中で、公安の人たちは何をモチベーションとして、国家を守ろうと思っていらっしゃるのかな、という疑問があるんです。

 こればっかりはいくら考えても分かっているふりはできないし、実際に公安の方に会えたとしても話してくれるか分からないわけじゃないですか。


麻見 その点は私もこれから突き詰めて考えていきたいところです。捜査一課は花形なので、事件が起こって犯人を逮捕したら「それは素晴らしい」となりますが、公安部の人たちが何をモチベーションにしているのかは、私もまだはっきり分かっていないんです。今後続編を書かせていただくときに、大きなテーマになりそうな気がします。


──きっと各々に理由があり、矜持があって、それぞれにドラマがあって、ということなのでしょうね。


青木 きっと個々でしかありえないと思うんですよね。公安の捜査員になれるくらいの頭の回転の速さや知識、度胸を持っていたら、きっと他の仕事でも大活躍できるわけじゃないですか。


麻見 能力が高い人たちでしょうから、いろいろな技術を持っていそうですよね。単に仕事だから、命令されたからやっているんだということではなさそうだし、その辺はテーマとして入れていきたいと思います。


──その際は、ぜひドラマ化も!


青木 そのときは海外を舞台に、水に潜ったりクルーザーを使ったり(笑)。


麻見 できるだけ派手にいきましょう(笑)。




※本対談は、『偽神の審判 警視庁公安分析班』(講談社文庫)に収録されたものです。

青木崇高(あおき・むねたか)

1980年、大阪府生まれ。映画やドラマを中心に活動。主な出演作に、NHK連続テレビ小説「ちりとてちん」、NHK大河ドラマ「龍馬伝」、「平清盛」、「西郷どん」。映画「るろうに剣心」シリーズなど。映画『99.9-刑事専門弁護士- THE MOVIE』が公開中。また、ドキュメンタリー番組「セブンルール」(カンテレ・フジテレビ)ではMCの1人を務める他、2022年NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では木曽義仲役で出演。俳優業のほかにも、イラストや映像制作など活躍の場を広げている。

麻見和史(あさみ・かずし)

1965年千葉県生まれ。2006年『ヴェサリウスの柩』で第16回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。『石の繭』『蟻の階段』『水晶の鼓動』『虚空の糸』『聖者の凶数』『女神の骨格』『蝶の力学』『雨色の仔羊』『奈落の偶像』『鷹の砦』『凪の残響』『天空の鏡』『賢者の棘』と続く「警視庁殺人分析班」シリーズは、映像化され人気を博し、累計70万部を超える大ヒットとなっている。また、『邪神の天秤』『偽神の審判』と続く「警視庁公安分析班」シリーズも2022年2月にドラマ化が予定されている。その他の著作に『警視庁文書捜査官』『永久囚人』『緋色のシグナル』『灰の轍』『影の斜塔』『愚者の檻』『銀翼の死角』『茨の墓標』と続く「警視庁文書捜査官」シリーズや、『水葬の迷宮』『死者の盟約』と続く「警視庁特捜7」シリーズ、『擬態の殻 刑事・一條聡士』『無垢の傷痕 本所署<白と黒>の事件簿』などがある。

「連続ドラマW 邪神の天秤 公安分析班」

2月13日(日)スタート!

毎週日曜午後10時放送・配信(全10話)


青木崇高 松雪泰子 徳重聡 小市慢太郎 福山翔大 瀧内公美 奥野瑛太

渡辺いっけい 段田安則 菊地凛子 筒井道隆


[第1話無料放送]【WOWOWプライム】

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大好評発売中<警視庁公安分析班>シリーズ!
『邪神の天秤 警視庁公安分析班』(著:麻見和史)

内臓が取り出された惨殺遺体。心臓と羽根が載せられた天秤が意味するものは――?

現場に残された矛盾をヒントに、猟奇犯の正体を追え!


都内で爆発事件が発生、直後に有力政治家が殺害された。遺体からは内臓が抜かれ、心臓と羽根を載せた天秤が残されていた。公安部に異動してきた刑事・鷹野秀昭は、持ち前の推理力で事件に挑むが、組織犯罪を疑う公安のやり方に馴染めない。苦悩する鷹野は猟奇犯に迫れるのか。緊迫のサスペンス・ミステリー!

『偽神の審判 警視庁公安分析班』(著:麻見和史)

現場に残された矛盾こそが、「真実」を手にするためのヒントだ!

「公安警察」対「殺し屋」 手に汗握る激闘の行方は――!?



殺人現場に残される心臓と羽根の載った天秤。有力政治家と大学教授が殺害された二つの事件に見え隠れするのは、公安が長年追ってきた殺し屋「鑑定士」の存在だった。殺人を依頼したと思われる組織の情報を得るため、鷹野秀昭は一般人を協力者(スパイ)として潜入させるよう命じられるが――。手に汗握る公安ミステリー!

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