読書のハードルをさげる

文字数 945文字

 本のジャンルに「キャラクター文芸」「ライト文芸」「新文芸」などの表現を見かけることが、少しずつ増えてきました。定義は様々あるようですが、個人的には「マンガを読むように活字が読める」ものだと思っています。ですからコミカライズやドラマ化との親和性も高く、つまりは「気楽に読める活字の連続」であり「読書に対する心理的ハードルをさげてある」ことが重要なのではないかと考えています。
 毎日の生活でひどく疲れている時には、イージーでハッピーな物語でリフレッシュして欲しい。人間関係に疲れている時には、素敵なキャラクターたちに取り囲まれて欲しい。抑えすぎた感情に押しつぶされそうな時は、笑って泣いて発散して欲しい。キャラクター文芸やライト文芸が、そのための「知的な自己メンテナンスのアイテム」となれるように願いながら、本作の「あやかしクリニック」シリーズも5巻を迎えることができました。
 口べたで一途なイケメン院長、バブルがいつまでも弾けないホスト風の理事長、子犬系の弟気質が全開の薬剤師に、絶対服従を誓う無双執事のイケオジなど——そんな彼らはみんな妖怪と人間のハーフやクォーターであり、現代医療を駆使して日常診療に取り組んでいるクリニックに、主人公は医療事務として運命的な就職をします。
 しかし私が小児科の医師ということもあるのでしょうか、じれったくなるほど恋愛要素は全年齢対象。物語のテイストはノリと勢いで、あくまでもテンポ重視のマンガ調です。その代わり大人の方たちに飽きられないよう「出産」「育児」「保健衛生」から「小児科マメ知識」や「病院あるある」まで、日常診療ネタも広く浅くちりばめてあります。
 そんな5巻ではついに「シリーズ最凶」のあやかしが登場し、みんなの心を引き離そうとするのですが——読み終わった後に爽快な気持ちでサブタイトル「ふたりの距離」の意味が伝われば、この上なく嬉しく思います。

藤山素心(ふじやま・もとみ)
東京都在住。2017年、HJ文庫大賞【金賞】を受賞してデビュー。著書に「テキトー男の異世界スローライフ」シリーズ、「江戸川西口あやかしクリニック」シリーズなどがある。


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