(8)門井慶喜【石田三成】

文字数 613文字

現代を代表する作家・漫画家・学者・舞台で活躍する芸人やタレントの方たちに、好きな戦国武将のアンケート調査を実施いたしました。

激動の令和において、人気のある武将は果たしてだれなのか?!

門井慶喜(かどい・よしのぶ)さん


──1971年群馬県生まれ。2003年「キッドナッパーズ」で第42回オール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。16年『マジカル・ヒストリー・ツアー』で第69回日本推理作家協会賞、18年『銀河鉄道の父』で第158回直木賞受賞。近著は『銀閣の人』。

【わたしの好きな戦国武将】


石田三成

石田三成の生まれたのは戦国時代後期である。もはや世には出る人が出そろい、社会階層が固定され、下剋上が夢と化したころ。


つまり三成は、出発が完全に出遅れた。その上さらに城もないし、兵力もないし、実戦経験もない。そのないないづくしの三成が十五、六で秀吉の近侍となるや頭角をあらわし、政権の中心となり、秀吉の死後もうちょっとで天下を取るところまで行ったのは何が優れていたのだろう。


それは「ことば」だ、というのが私の見方である。三成は「ことば」の天才だった。詩人という意味ではない。腕っぷしにものを言わせる時代が過ぎ去ったあとで、非軍事的な、もっぱら論理的説得によって他人を支配したのである。秀吉のいわゆる太閤検地も、その実質は、三成による諸大名との交渉の集大成だった。


高度成長のあとの低成長の時代に生きる私たちには、ことに学ぶところが大きい。

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