慶大生本読みのオススメ「パニックだから読みたいパニック小説」10選
文字数 3,095文字
今、どんな作品を読んだらいいの?
そんな疑問にお答えするべく、大学生本読みたちが立ち上がった!
京都大学、慶應義塾大学、東京大学、早稲田大学の名門文芸サークルが、週替りで「今読むべき小説10選」を厳選してオススメします。
古今東西の定番から知られざる名作まで、きっと今読みたい本に出会えます。
大国同士が互いの利権を争って冷戦状態、かたや違う所では紛争が続く。しまいには、世界中に未知のウイルスが蔓延って人々の生活を脅かす。ありきたりなパニック小説の筋書きのようにも思える。ここにある十作品を読んだ時、展開される世界は「非日常」か「日常」か。それは、あなた次第。
(執筆:慶應ペンクラブ)
慶應ペンクラブ(けいおうぺんくらぶ)/慶應義塾大学
慶應ペンクラブは、1957年に創立した歴史ある文芸サークルです。小説は勿論、短歌や漢詩にラップまで、「言葉」を使ったあらゆる創作をしています。そして年に数回部誌を発行し、その掲載作品の批評会を行う他、不定期にワークショップ等を開催して書くだけではない創作を楽しんでいます。そのような活動を通してメンバー同士、和気あいあいとそれぞれの才を切磋琢磨しています。
その異変がいつから起こり始めたのか誰にもわからない。
ただ、時間が経つのが徐々に早くなっている。
最初は五分の遅刻が、十分、三十分とズレていく。
おれの生きる世界は、時間の加速度が大きくなって狂い始めていたのだ。
パニックに放り込まれた時の民衆感情、起流であろう事、それらをコミカルに描く。
その「オチ」にも注目の作品。
アルジェエリアのオラン市にて、医師であるリウーは幾つかのネズミの死骸を見つける。
それと時を同じくして、街中で原因不明の熱病患者が次々に発生。
リウーはこれがペストの影響だと気づき、ラジオや新聞が報じたことで街はパニックに。
感染対策の為に外部から隔離されたオラン市の中で起こる出来事が、様々な人々のエゴと思想が、「ペスト」と関わり露呈する。
コロナ禍で改めて注目されることとなった傑作。
緊急事態が日常茶飯となった今だからこそ。
小さなハチが恐怖と死を呼ぶ!
突如として八ヶ岳の山荘に閉じ込められた小説家・安斎。
外は激しい吹雪で脱出できず、通信機器も使えない。
さらに室内には凶暴な雀蜂の大群がいた。
以前雀蜂に刺されたことのある安斎は、もう一度刺されればアナフィラキシーショックを起こし死ぬ可能性がある。
彼は限られた物資の中、山荘にある家庭用品を駆使して蜂に立ち向かい、絶望的な状況の打開を試みる。
彼を監禁したのは何者なのか。
その目的は何なのか。
蜂との戦いのすえに衝撃の展開が待っている。
現実に起こりうるフィクション。突然に世界は終わる。
地球の死と再生を繰り返してきた破局噴火が、九州・霧島火山帯で発生。
日本国民は即座に避難を強いられる。
火山灰は降り積もり、太陽を遮る。
移動も困難ながら逃げ惑う黒木信夫。
ありとあらゆる対応を迫られる日本政府。
いずれ地球全体を覆う火山灰に世界各国はどう動く。
個人から世界まで、究極の災害を想定した、地球に生きることの心構えを学べる小説。
目を覚ますと、虫になっていた。
ある朝、目を覚ますとグレゴール・ザムザは自分が一匹の巨大な虫になっているのを発見した。
世界中は彼の人から虫へと変身した事態に驚き、彼を取り巻く環境は様変わり……しない。
虫に変わった息子を近所の人から隠そうとする両親、ご飯を運びにくるだけの妹。
特に代わり映えのしない日常が繰り返される。
まるで報告書を読んでいるかのようにすら感じる文体の中で起こっているのは、一人の男に降りかかる理不尽なパニックの連続。
冷酷にも、時間は流れていく。
小松左京の名作『日本沈没』のパロディ作品。
世界の著名人が日本に集合⁉
その名の通り、舞台は日本以外が沈没した世界。
生きる場を求めて世界中の人々が日本上陸を目指している。
先に上陸した各国要人や、ミュージシャン、俳優、物書き、etc.生活のためにどんな仕事も受けてしまう。
人間の欲望と愚かさをコメディタッチに描いた短編小説。
その他短編10作、SF御三家の一人・筒井康隆、昭和40年代当時のエッセンスがここに。
君の影、探してまよう帰り道。
高校生・阿良々木暦は、春休みに美しき吸血鬼と出逢って自身も吸血鬼のようなモノになった。
そんな年の夏休み、彼は知り合いの怪異である女子小学生の八九寺真宵(はちくじまよい)の死因ともなった交通事故を防ぐ為に過去へとタイムスリップする。
交通事故を防いで満足して帰ってきたら、正確には初めて来た、「現代」はとんでもないことになっていた。
西尾維新の〈物語〉シリーズの一冊。
これぞ現代の怪異!怪異!怪異!
世界は塩に覆われた。大人気女性作家の甘いデビュー作!
原因不明の塩害に襲われた世界は、日常を壊していった。
東京湾に落下した巨大な塩の結晶を見た人間は、塩と化して崩れてしまう。
ライフラインは壊滅、法律など関係なし。
マンションの大家・秋庭、住民の少女・真奈は、そんな世界でかろうじて生活を続けていた。
物語が動くのは、突然の訪問者のこの言葉。
——「世界とか、救ってみたいと思わない?」
黒魚を連れた者が、その街へと降り立つ。
海面上昇が過ぎた近未来、人々は北極圏にあるクアナークに住んでいた。
そこは、深海熱水噴出孔の上に建てられた洋上巨大建築物であり、高度なAI群によって統治されている都市である。
しかし、現在クアナークでは感染病ブレイクスが徐々にではあるが魔の手を伸ばす。
そんな時、街中で一つの噂が広まる。
それは動物に対して特別な力を持つ女性がやってくるという物だった。
この噂が人々の、街の運命を大きく変える。
クアナークに住む人々の視点で構成される群像劇は圧巻。
人は自分の子供と争い、親の手のひらの上で踊る。
人類の繁栄する300万年前、ホモ・サピエンスの祖先であるヒトザルは黒い謎の物体「モノリス」に触れる。
そこからヒトザルはモノリスによって、動物の骨を武器として使うことを覚え文明への道を歩き出す。
そして2001年モノリスが確認され、そこから発せられた信号の行方を追いデヴィット・ボーマンら船員を乗せたディスカバリー号は土星へと旅立つ。
その過程で、ディスカバリー号に搭載された人工知能であるHAL9000は、組員と話し協力しながらモノリスの存在を話さず隠せという矛盾した命令によって狂い始める。
そこでHALがとった行動とは。
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