プロローグ・“宝物の部屋”からの便り
文字数 1,117文字
東京・池袋の隣町、要町に立つビルの1階に、日本で唯一のミステリー専門図書館「ミステリー文学資料館」がありました。
1999年4月に開館し(初代館長・中島河太郎氏)、2019年7月にビルの建替えに伴い閉館することとなるまでの20年間、ミステリー・ファンや研究家が多数訪れ、展示や資料を閲覧していました(現在は再開に向けて準備中)。
そのミステリー文学資料館では年2回のペースで「ミステリー文学資料館ニュース」という冊子を発行していました。
折々の企画展示の内容、資料館を訪れたミステリー作家たちの紹介、作家や評論家のエッセイ・インタビューなどを掲載し、過去から現在までのミステリー小説を俯瞰する情報を発信するというものでした。
「わが国最初の探偵小説といわれる、黒岩涙香の『無惨』(一八八九年)から、一世紀を越える時間が流れました。
この間に、ミステリー文学は著しい成長をとげ、江戸川乱歩、横溝正史、松本清張に代表される優れたミステリー作家が輩出しました。
(略)
一方、これまでミステリーを本格的に所蔵する図書館はなく、戦前からの貴重な資料の散逸が心配されていました。
当館はこうした状況を踏まえ、主に国内ミステリーに拘わる書籍、雑誌および主要作家の資料を蒐集、保存、公開するために開設されました。」
また、同じ創刊号では当時の展示「〈カッパ・ノベルス〉から飛翔した作家たちⅠ」の内容も紹介されています。展示されていたのは、森村誠一、夏樹静子、赤川次郎、西村京太郎という、「カッパ・ノベルスの第二期の隆盛期をになった作家」の直筆原稿や希少本などの資料。こういった記事からも、ミステリー隆盛の歴史を追うことができます。
今後、このコラム「発掘! ミステリー文学資料館ニュースより」では、20年間続いた冊子から面白い展示や貴重な写真資料、エッセイなどを再録紹介していきます。
ふと立ち止まって過去一世紀の日本ミステリーを振り返るような読み物を、ぜひお楽しみください。