第11回/話題の時事ネタについていけない夜

文字数 1,802文字

こちらはインターネットに生息するふしぎないきもの・にゃるらがインターネットと独り暮らしとそれ以外について深夜に執筆している画像付きエッセイです。→@nyalra


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 この原稿が掲載される時は、もう過ぎ去って時が経っている状態ですが、いまこの文章を書いている今夜は、M-1グランプリとワールドカップの決勝戦で話題が持ちきりです。リアルもインターネットも、お笑いとスポーツに染まっている。ウソ、まったく外に出ていないので現実世界がどうなっているかは想像です。


 こういう時、自分がついていけなくてちょっぴり悲しくなるわけで、特に深夜になって「さて、インターネットでも眺めていきますかっと!」とギアが上がってきたのに、ワールドカップでみんな一喜一憂している様子を直面して、「いま関係ないこと投稿する場面じゃないな……」と退散する哀愁。体育の授業をいかに目立たない位置に隠れてやりすごすかに必死な生徒みたいですね。まあスマホ閉じていればいいだけなのですが。


 このへん全くわからない。門外漢。M-1のファイナリストの名前も聞いたことないでしょうし、ワールドカップもどこの国とどこの国が試合しているのかもわからない。なんならお笑い芸人はプリキュアにゲスト出演した人たち、サッカーは『キャプ翼』の知識だけが頼り。なんと斜に構えた人間なのだ。


 一昔前は、こういった「テレビの流行りに乗らないオタク」がカッコいいみたいな風潮もあった気もしますが、今となっては「どう考えても面白いものには乗っかったほうが楽しい」と誰もが気づいたため、「お笑いやスポーツ? ……興味ないね」とわざわざ表明するオタクの方が面倒くさい扱いに変化したように感じます。まぁそうでしょう。自分が乗れないからって、楽しんでいる人に水を差す方が悪い。至って当然。インターネット界も正常になりつつあるだけ。どう考えても、面白いものは素直にみんなで共有したほうがいいよ。


 実際、M-1グランプリだってワールドカップだって、見ると絶対に面白いのでしょう。お笑いとスポーツではジャンルがまるっきり違いますが、どちらも「大人たちが何年もこの日のために努力してきた結果を披露する灼熱の瞬間」であることは変わらない。その熱は、これまでの文脈を知らない人間でもやっぱり盛り上がってしまう筈。乗れないといっても、テレビを点ければ視聴はできるわけだし、恐らく番組内でもインターネットでも色んな人が解説してくれるので、状況が理解できないことも少ないと思われる。この時期になると、いつもアニメやゲームの話をしているオタクたちも、急に応援している芸人や選手に一家言を持ち始めて、「おまえ……そんな熱意あるやつだったのか!」とビックリさせられる。


 正直、ズルいと感じてしまう。そりゃ絶対楽しいじゃん。昔から見てきた「推し」たちが、日本を、世界を舞台にトーナメントで切磋琢磨しあっている。誰が栄光を手にするかは、勝利の女神のみぞ知る。最大トーナメントや陰陽トーナメントを初めて読んだような興奮が、圧倒的なリアリティで体験できる。このうえない脳汁でしょう。羨ましい! もし、自分が大好きな大物漫画家たちが一堂に会して、「読み切りの面白さバトル」を行ったら死ぬほど燃える。たとえば藤田和日郎VS島本和彦のようなカードが実現したら、思わず「うおおおおお!!!!」と叫ぶ。きっと、いまそういうことが起きている。


「じゃあ、お前も観ればいいじゃん! リモコンをテレビに向けるだけなんだから!」と言われたら、ぐうの音もでない。おっしゃる通りすぎる。でも、わかってほしい。「いまさら何も知らない自分が半端に入ってみるのもなぁ」って気持ちを。あんまり知らなくても100%盛り上がることを承知で、「でも今まで観てこなかったわけだしなぁ」って思い続けてしまう複雑なオタク心を。そんなこだわり、今すぐにでも捨てたほうがいいと気づいて理解していることまで含めて、やっぱり人間って面倒くさい生き物なのですね。

【お気に入りの遊戯王カード】


好きな遊戯王カードを飾って並べています。この頃は、試しにネイルをしていたので指がかわいい。こうしてレアカードを保存していると、思いがけない値段に跳ね上がってしたりするのでビックリする。株って、こんな感覚なのか。

来週も月曜深夜に更新予定です。それでは、おやすみなさい。

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