[interview]「ぼくの考えたさいきょうのゲーム」を小説に/佐嘉二一

文字数 2,200文字

ゲーム文化を背景としたコンテンツが世間に定着した昨今だが、まさに「ゲーム実況の文学化」ともいうべき小説が人気を集めている。2020年6月に刊行された『ダイブ・イントゥ・ゲームズ 1 ぼっちな俺とはじめての友達』(佐嘉二一・著/U35・画)だ。まるで実在するかのようなゲームの世界を描きながら、ゲーム大好きな青年が初めての友人を得ていくという青春小説で、小説投稿サイトから書籍化された作品だ。著者の佐嘉二一氏は「ゲームと小説」の関係をどう考えているのか。話を聞いた。

聞き手:レジェンドノベルス

ーー『ダイブ・イントゥ・ゲームズ』はまさにゲーム文化を背景とした小説を刊行する「レジェンドノベルス」が出すべき画期的な作品だと思いました。この作品を書こうと思ったきっかけを教えていただけますか?

佐嘉 この作品は「小説家になろう」に投稿した作品で、そこから「レジェンドノベルス」に拾っていただき書籍化していただきました。実は「なろう」には、本作のようないわゆる「フルダイブVRゲーム」を題材とした小説は多くあります。そして、そのほとんどがいわゆるMMORPG(マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン・ロール・プレイング・ゲーム=大規模多人数同時参加型オンラインRPG)を題材としています。

ーー「なろう小説」では、主人公や登場人物がゲームの世界に入り込み、ファンタジーの世界で活躍するタイプの作品になりがちです。しかし、それとは一線を画する本作に出会い、ゲームを題材にした小説でもこんな作品があるんだなと、投稿小説の自由さを感じずにはいられませんでした。

佐嘉 たしかにそういうタイプの作品が多いことは事実ですが、当然ながらゲームのジャンルはRPGだけではありません。対戦格闘、アクション、レース、シューティング、パズル、シミュレーション、スポーツ、サンドボックス……。ゲームには本当にたくさんの種類があります。自分は、そのどれもが「フルダイブVRゲーム」になってもおかしくない、むしろない方がおかしいと思っていました。そんな視点から、RPG以外にもこんなゲームがあるはずだ、こんなゲームがあって欲しい、という考えが膨らんでいったことが本作を書こうと思った動機になります。「ぼくの考えた最強のゲーム」といえば子供っぽいですが、そういう背景がありますね。

ーーなるほど。それにしても、作中に出てくるゲームがタイトル含めて、極めてリアリティが高いです。こんなゲーム、本当にありそうだなとどの章を読んでも思います。こうした着想はどこから得ているのでしょうか?

佐嘉 今までにプレイしてきたゲームを参考にしていることが多いですね。それをベースに「こんなことができれば」という考えを盛り込んでいます。参考にするゲームはデジタルゲームだけではなく、TRPG(テーブルトーク・ロールプレイングゲーム)やボードゲームもあります。唯一、作中で始めに登場する「ザ・ライフ・オブ・オーシャン」だけは、仕事に疲れてなんとなく海を眺めている時にイルカが楽しそうに泳いでいるのを見て、イルカになって海で思いっきり泳いでみたいなぁと思ったのがきっかけです。

ーー本当にゲームがお好きなことが伝わってきますが、小説で表現するのではなくて、本当にゲームを作ってみたいという気持ちはなかったのでしょうか?

佐嘉 友人と遊ぶTRPGでシナリオを作ったことは何度かあります。しかし、プレイヤーを楽しませつつ適度な難易度になるシナリオ作りは難しいですね。出来上がりを見たらとんでもない難易度になっていたり、独りよがりな物語になってしまったりして頭を抱えることもありました。なので実物のゲームとなると、今のところは作る側よりもプレイして楽しむ側ですね。

ーーこの秋に『ダイブ・イントゥ・ゲームズ 』の2巻が出ますが、今後書かれる作品もゲームを題材にした作品になるのでしょうか。

佐嘉 今まで経験してきたゲームの影響は少なからず受けたものになるとは思いますが、今後は直接的にゲームを題材にしたものばかりではなく他のジャンルにもチャレンジしたいと思っています。さらに踏み込んで『ダイブ・イントゥ・ゲームズ』に登場するゲームの世界観を元にした小説を書くのも面白そうですね。

ーーゲームを小説で書くことの楽しさ、面白さはどこにあると考えますか?

佐嘉 現代は、パソコンや家庭用コンシューマーゲームだけでなく、スマートフォンでも気軽にゲームをすることができる時代です。老若男女を問わず多くの人がゲーム経験者になっています。動画投稿サイトでもゲームの実況プレイ動画が大人気だったりしますよね。そういう意味では、ゲームを題材にした小説というのはとっつきやすくていいんじゃないかなと思います。ネット投稿小説はそれが表現しやすい場なんじゃないかと思っています。
ーーいろいろなゲーム小説が読める時代になると面白いです。

佐嘉 SF小説を読んで育った世代が潜水艦を作ったように、現在のゲームを題材にした漫画、アニメ、小説などを経験した世代が大きくなった時、自分が子どもの時は技術的に空想の域だったゲームを実現させてやろう、と思ってくれたら最高です。なので誰か早くフルダイブVRゲームを作ってください。

※『ダイブ・イントゥ・ゲームズ 1 ぼっちな俺とはじめての友達』は現在発売中。2巻は今秋発売予定

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