メフィスト賞座談会2018VOL.1

メフィスト賞 座談会 2018VOL.1

※メフィスト賞座談会……メフィスト賞を決める、編集者による座談会

【座談会メンバー紹介】

本格ミステリマニア。古今東西ミステリの知識量が凄すぎる。
警察ミステリ、時代小説など単行本作品の担当が多い。サザンとホークスのファン。
講談社文庫編集部で数々のミステリを担当、世に送り出す。歴史好き。
理系作品の関わりが多くリサーチ力も高い。第59回『線は、僕を描く』 担当。
乗り鉄で鉄道ミステリ好き。第61回『#柚莉愛とかくれんぼ』担当。 
理論と情熱とアイデアの講談社タイガ編集長。第58回『異セカイ系』担当。
投稿作を優しい言葉で鋭く批評する達人。第62回『法廷遊戯』担当。
マンガ編集者歴12年。お菓子とゲームをこよなく愛する。
涙を誘う作品が特に好物。第57回『人間に向いてない』担当。
エンタメなら何でも来いのオールラウンダー。座談会でのガヤは天下一品。
ミス研出身。ミステリに強く、青春モノに甘い。第60回『絞首商會』担当。
元マンガ編集の目線でメフィスト賞投稿作をメッタ斬り。

___________________________________


去年はメフィスト賞がたくさん出たから、受賞者に贈っているシャーロック・ホームズ像(ロンドンのシャーロック・ホームズ博物館で市販されているもの)が、少なくなってきちゃったんだよね。仕方がないから、ロンドンに出張して買ってこようかな。ついでに大英博物館とロンドン・アイとウインブルドンテニスでも観て、フィッシュ&チップスを食べてこよう。

それは出張ではなく、単なる観光では?

そうですよ。バブル世代はこれだから私利私欲にまみれていて困るんですよね。ご安心ください。私が先日、正真正銘のロンドン出張した際に、ホームズ像を大量購入してきました。ホームズコスプレしたレジのおじさんが、怪訝な表情を浮かべていて辛かった……。で、費用は寅さんに請求していいですか?

そうか、買ってきてくれたんだ。それならロンドン出張に行く必要はないね(ちょっと残念)。僕が行ったわけじゃないから、費用は亥持ちということで。

セコ!

買いたてのホームズ像がたくさんあるので、これからも受賞者がどんどん出てくることを期待しています!!


センス光る暗黒ファンタジー!


最初の作品は『瓶詰のナナ』。金くんお願いします。

キャッチコピーは「彼女の人生は、塩と黄金の繰り返し。」ファンタジー短編集みたいな作品です。展開や構成に甘い部分があるし、全体的に暗いんですが、その暗さがどうにも癖になる。ヒロインが実は娼婦だったり、主人公が知らない間に片腕を失っていたり、容赦ない感じがいいんです。個人的にはサーカスでやってきた女のコに恋する系が死ぬほど好きなので! 推させていただきます!

ピンポイントかつユニークな性癖をお持ちで……。

私も、サーカスでやってきた女のコに恋する系は名作『からくりサーカス』をはじめ、心をくすぐるモチーフだと思います。ネーミングセンスとか、出てくる小物も素敵でよかった。淡々とした語り口と世界観が合っているのもいいなと思いました。ただ、ファンタジーだとしたら設定は甘いし、SFだとしたらますます甘いのでは。独特なセンスはあるけど、まだエンタメの小説にはなってない気がしましたね。

この小説は読み終わったあと、予想以上に体の中に黒いもの暗いものがたっぷりと残りましたねえ。読んだ直後にカップヌードルのCM、「ちゃんと好きです」っていうアレを見て「心が洗われる……」と思っちゃったぐらいで(笑)。普段そんなことは絶対に思わないんですけど、ある意味、読み手に影響力大な作品でした。

ただお腹すいてただけじゃないの?

違うって!

雰囲気のある作品ですが、既視感があるというか、新しさを感じませんでした。とくに漫画にこういうイメージを描き出した作品が多いように思います。読む人よりも書いている人が面白いんじゃないかな。カメラが向いているところ以外に世界がないというか、世界の作り込みの甘さも感じます。好きな世界観を持っていることは強みだと思います。もっともっと想像してください。

雰囲気はとてもいいですね。でも細かい部分が説明不足のため、夢かうつつか、という感じです。何だか魅力的な話が展開していくんだけど、わからない部分も多い、でもこれ夢だから仕方ないね、みたいな。ファンタジーは、著者の創造した世界観をどれだけわかりやすく読み手に伝えられるかが大切なので、その点は残念です。あと素敵な表現もあるんですが、それの使い回しが気になりました。どうして登場する人する人、歯の間に食べ物詰まってんだ、とか(笑)。

想像力がまだ行き届いてないというか、自分のわかる範囲でしか書かれてないのが弱点ですね。また少年がちょっと年上の女性と知り合って、その女性が実は娼婦かもしれない、みたいなモチーフはいわゆる純文学でも何回も書かれている定番です。それを多少ファンタジックな要素を含ませて書いているわけで、正直オリジナリティはあまり感じなかったです。僕は一番最後の金木犀の女の話、むしろあそこだけ取り出して短編にして、過去のフラッシュバックとかを付け足していってまとめたほうが完成度は高くなると思いました。ストーリーテリングの力がまだまだ足りないけど、若いから色々書いて鍛えてほしいですね。

「夏のお祭り」が、二人にはかけがえのないものだったことは胸に響くんだけれど、皆さんが言っていたように話の筋立て自体がよくあるようなパターンなんだよね。作者は既存の設定をモチーフにして自分なりの話をつくろうとしているんだけど、オリジナリティが足りないなという感じでした。あと、これは意図してやっていると思うけど、「男」とか「彼」という言い方を多用してるので、誰なんだか非常にわかりづらい。雰囲気をつくるには代名詞に拘るのではなく、言葉遣い、文章のテンポなどを工夫してもらいたいと思いました。

まだ色々と練り込めてないだけかなと思うので、連絡したいという思いはあります。

それではまずは連絡して、この方がどのような作品を書きたいのかを確かめてもらいたいですね。


座談会連続登場!
意欲作の評価はいかに?


じゃ、次は『緊張館殺人事件 〜名探偵は出張中です〜』、これは巳さんです。

前回と前々回に『浦島太郎殺人事件』と『桃太郎殺人事件』を投稿された方です。キャッチコピーは「ひと館で二度殺し」です。ストーリーは……(ネタバレにつき略)……と。あってますよね?

完璧な要約だと思います!

タイムリープ+吹雪の山荘ものといっていいのかな。書いてる人はすごく本格が好きなんだなということが伝わってきました。正直、私は「?」という感じだったのですが『浦島〜』も『桃太郎〜』も読んでなくて、二作の評判がよかったので、私が簡単に落としてはいけない、少なくともPさんには読んでもらわないといけないな!と。

じゃP君は後でってことで、亥君、お願いします。

最初に結論から言います。傑作でした! よっしゃ!! ほんとに面白かったです。ただ、明確な弱点もあって。この作品は要するにタイムリープものというか、二周目の存在がコアです。ここに動機のドラマがない。理屈は、作中に出てくる超能力者っぽい女が上手いことやっとると。最悪それはいいんですよ。ただ、なんで彼女がそんなことするかがわからない。ノリと勢いのタイムリープ、ダメ絶対! これが大・大・大問題です。

これはさ、P君に捧げられた作品だから。君じゃなくて。

面白かったから仕方ないじゃないですか!! この感動に噓はつけない!

ちょっと落ち着けって。Nさんはどうですか。

個人的には著者の企みに新鮮な驚きがあって、前回よりは面白く読んだんですね。ただ、企みについてきちんと説明がされてないのが残念で。時任さんの謎が明かされてないということと、あと、なんでループが一回しか起こってないのかという理由付けについてもされてないですよね……?

ちゃんとカッチリしたループ構造にして、被害者を出さないで解決しないとこのループが永遠に解けない――いわば、「煉獄としてのクローズドサークル」。そういうホラーとしてのオチにすれば……。

『七回死んだ男』ですよね。まあ『七回死んだ男』は殺され続けますけど。

もう少し設定やルールをうまく書いてもらえるといいんですが、そのあたりが前作と通ずる甘さなのかもしれません。殺人事件のトリックが辻褄を合わせただけでストーリーから浮いてしまっているところも懸念ですね。ソーセージを配る順番とか、そのへんは大丈夫?(笑)

うーん……。一家の長が一番でかいのを食うはずだという理屈は原始共産制っぽくないですか?

事前に言ったからいいんだよ! ほら書いてるぞ! 家長がすげえって。

自分は非常に面白く読みました。野心作だと思います。みなさんが言うような欠点のある作品ですが、この人は本当に才能があると思いました。とにかく読者を楽しませようという気持ちが強くて素晴らしい。粗削りではあるけれど、毎回アイデアがあって、緻密さには欠けるものの、地の文なども含め細かなところまで楽しませようという意欲が感じられて好感をもちました。だから、この人には今までの座談会の記事をもう一度読み直した上で、頑張ってほしいです。

僕はミステリ部分の練り込みが足りないのが一番の問題だと思います。「治療ができてない」と言っていたかどうか、というのはレトリックの話で事実じゃないです。それと事実を全く同列にした推理が始まるところは残念でした。要するにメインの部分がアイデアのままで、トリックにできてないなという印象です。あと最初、緊張館で緊張してる人がどう動くのかと思ってすごい期待したんですけど、全員かなり饒舌なので……。

まあ探偵がいちばん緊張してるからなあ。

あともう一つ気になったのが、登場人物たちがテンション上がったときに全く同じ口調で荒っぽくしゃべるんですよ、全員。キャラクターの個性は何なのか、細部まで手を尽くしてほしいです。

じゃ、この作品を捧げられたP君、どうぞ。

捧げられたら、そりゃ読まなきゃ男がすたる。今回も読ませていただきましたよ。本格を書きたいという志とリーダビリティにいつも一定の評価をしているんですが、今作は特徴やクセを出そうと策を弄した結果、空振りしてしまった感じでした。検視のくだりは濃密だけれども、事件の全容を見るとネタが小さめでインパクトが薄く、時間を戻すという特殊設定もこれを必然とするほどの、また面白いポイントにするほどの構成に仕上げられていなかったです。今作は空振りだと思うんだけど、いつかホームラン打つんじゃないかと期待します。新たな挑戦待ってます!

この方は確かに楽しませようという意欲はすごく持ってる。ただ毎回詰めの甘さを指摘されるということは、ちょっと書き始めるタイミングが早いというか、エイヤッて書き始める前に冷静になって細部を決めて、突っ込まれないようにちゃんと準備してから書かないと、評価が変わらないままになってしまいます。
多分この方の今までの執筆速度を考えると、すでに次の作品に着手している可能性が高いと思います。なので加筆修正が利く投稿前に直接連絡をして、今回の座談会の内容も含め伝えておきたいです!

では期待してる人も多いので、火くんが連絡をして、引き続きのご応募をお待ちしてます。


新ジャンル出現?
ファンタジー╳サラリーマン!


じゃ、次は『東京地下街神飲神食神話 〜開け、シロゴマ〜』、これは金くんだね。

主人公は、大豆の味が一切わからなくなった男。あれよあれよという間に大豆の神様に仕えて色んなトラブルに巻き込まれ、神々の飲食街・狐狸道街にて大食いの大会に出るお話です。なんといっても設定がパーフェクトです。可愛らしかったり小憎らしかったりする神様が出てきてワチャワチャする大会というだけでいくらでも広がりはあるなと思いましたし、最後の落とし所で、一気にスケールを大きくするところは最高に楽しくなってしまいました。しかもこのファンタジーっぷりにもかかわらず、オチは「なるほどー」と手を打つ展開なんです。これは鉱脈ですよ――!

私は好感を持って楽しく最後まで読みました。ファンタジックな世界観でサラリーマンの憂いを描く絶妙なバランス感! 上司や同僚との気持ちのすれ違いとか、サラリーマンの成長を描くエピソードがすごくいいなと思います。早食い対決のあたりのストーリーがちょっと子どもっぽいので、そこだけアレンジして書き直さないといけないかな。食べ物の描写とかもすごくおいしそうで、神様の国で食べる折り鶴の揚げ春巻きがすーごい食べたくて(笑)。そのあたりもっと出していけば食べ物小説的な面白さも強化されますね。

私も面白く読んで、神様物と食べ物、グルメの組み合わせは読者がいると思うし、新たなジャンルの出現かもしれない。一方で、キャラクターの魅力がないように感じて、全体的にオヤジくさいといいますか……最終的にこの世界に行きたいかと言われると行きたくないと思っちゃうんです。

致命的!

世界観やキャラにファンがつかないといけない作品ですが、そうなってない。設定が面白いだけに惜しいです。

大豆の神様が、もっと可愛かったらいいのにな、と思いました。人間も含め、キャラクターが古い感じがします。大食い大会という設定にも「何故?」という気がしましたし、準備期間も含め大会が終わるまでが長い。むしろ会社パートが良かったです。実際に仕事している人しか書けないリアリティがあるし、そこを舞台にしたフィクションを読みたいなと思いました。池井戸潤さんが、元銀行員であるキャリアを生かして会社員たちがスカッとする作品を書いていらっしゃいますが、そういう作品にチャレンジしてみたら良いのでは?

作者自身が楽しんで書いている感じが読み手にダイレクトに伝わってくるのはいいですね。出てくるメニューはどれもおいしそうだし、言葉遊びのセンスもなかなか。巳さんが言ったように会社パートはめちゃリアリティあって読まされました。でもそれだけで、物語としての面白さという意味では今ひとつなのが残念です。特に女性キャラの魅力のなさは、かなり苦しいですね。

亥はなんか感想ないの?

うーん……。つまらなくはないけど、特に言いたいこともなく。なんというか小さくまとまってるなあと。

珍しく短いね(笑)。さっきテンション上げすぎて疲れたの? じゃ、P君お願いします。

発想はユニークで期待を持って読みました。友情・努力・勝利という王道コンセプトではあるのですが、縦軸をうまく提示できず、各シーンの面白さへの注力だけで終わった感がしましたね。読み応えに不満が残るというか……。日本の神々って多彩でそれぞれがキャラ立ちしているし、グルメネタも人気がある。うまく構成できれば脈ありかも。例えば縦軸を明確にしつつ、連作短編形式で見せるのも手かもしれませんね。

そもそも神々の早食い競争ってそんなにニーズあるのかなって、題材が気になってしまいました。やっぱり女性キャラが書けてないというのが明らかにバランスを欠いていますね。僕は最後の鯉が龍になるところを楽しく読んで、そういうスペクタクルな部分を書けるんだなと驚きました。この人のいろんな手の内を見せてもらったという意味では非常に面白かったです。

評価は高いんだけれど、キャラクターに難ありという感じなのかな。次はより魅力的なキャラ作りに挑んでもらえたらと思います。


『コズミック』超えを狙うアイドル・ミステリ!


で、最後、『コズミック・トリック』は亥君です。

さあ! 本格ミステリ界の当たり屋物件の登場だ!(身を乗り出しながら)キャッチコピーは「探偵神話が終わり、絡繰伝承が始まる」! フゥー!! さて、ストーリーは、世界中のありとあらゆるトリックを収集してそれを分類してるトリックスターという人物のエピソードと、全然売れてない三人組アイドルJK十字軍のエピソードが交互に語られる構成です。メインはアイドル。で、ツアーで全国をまわっている最中に、小道具のティアラが盗まれるだとか、衣装がなくなるだとか、アイドルにまつわるちょっとしたトラブルを謎として解いていき、ラスト、二つの物語が意外な形で交錯します。『コズミック・トリック』という名の通り、『コズミック』の強い影響下にある作品です。他方で文章はすごくしっかりしていて読みやすい。ラストの謎解きが若干地味なきらいはありますが、メフィスト・スメルが濃厚で、とてもいいと思うな!(投げやり)

構成にまず脱帽しました。読者の予想するラインを見極めて、きっちりとミステリを書くことを意識されている。ミステリ作家の奥義をすでに会得してますよね。ただ……僕、アイドルのコたちがあんまり好きになれなかったんですよ。彼女たちがもがき続ける話なのに、淡々としすぎというか……。はいトラブルが起きました、彼女たちがドタバタします〜っていう感じで。このお話を楽しく読ませる上でいちばん必要なキャラクターの魅力を殺してるのが惜しい。

いや、面白かったです。この人、少なくともアイドルというものの何かに対してすごく愛着を持ってる人だなと思います。

前田敦子の引用は、最高でした。脳天まで痺れましたね……。

丁寧に書かれているのがわかりました。欠陥としては、アイドルとトリックスターの組み合わせが悪すぎるところでしょうか(笑)。

ミステリとアイドルがちゃんと化学反応していないんですよね……。

僕は好きなタイプの作品じゃないけど面白かったです。オチ以外あんまり文句ないです。他にも傷はいっぱいあるけどあんまり文句言いたくないです。ただキャラ方向で頑張る場合、この人が魅力的なキャラクターを書くには結構長時間かかりそうだなあ……(笑)、そちらを磨く方向には行かないほうがいいと思います。細部を詰めて書いていく力と、それを連発する力が高い。ただこれを商品にするにはどうしたらいいかと言われると困りますね(笑)。

物語の構造はとても面白い。でもエンタメとして物語を読ませるには、仕掛けの部分に気が行き過ぎなんじゃないのかなというのがいちばん気になったところです。トリックデータベースを作る、世の中にあるトリックを全て集めるというキャラクターとかは非常に面白いなと思ったんですが、やはりアイドルの部分とのかみ合わせが悪い。好きなものを全部取り込んで座組みを整えたという点ではすごい力作だと思うし、ほんと楽しく読ませてもらったんですけれども、世の中に出すときにどうしたらいいか迷いますね。
寅 繰り返しになるけどトリックスターの部分とアイドル部分の組み合わせって必然性があるのかなと。でもトリックスターのパートがないと、イマイチなアイドル事件物になってしまう。

個人的に好きなタイプの作品なので評価が甘くならないように気をつけて話しますね(笑)。とにかく細部まで本当によく考え抜かれているのが素晴らしい。アイドルである彼女たちが様々なピンチを、知恵を働かし、トリックを使い解決していくという展開は非常によくできているし、それを最後の意外性につなげていくという構成力も新人離れしているなと思います。その意味で言うとアイドルというギミックは話をうまく回していく存在として機能しており、ミステリとして完成度が高いと感心しました。情報をきちんと伝えていくミステリに向いた文章になっているというのも、この方の強みだと思います。結局、ホメてばかりになってしまった(笑)。

いずれにしても亥が鬼押ししているので、作者の方に連絡をするということで。

うす!

今回の座談会はこれにて終了。数は少なかったけれど、個性的な作品が揃っていました。今後に期待大です。ここで報告。第五十四回の受賞作『毎年、記憶を失う彼女の救いかた』は続々重版中と、大好評! また前号で三作同時受賞したメフィスト賞作品ですが、第五十五回の『閻魔堂沙羅の推理奇譚』が三月に講談社タイガから出て、第五十六回の『コンビニなしでは生きられない』が四月に講談社ノベルスから、そして六月に第五十七回の『人間に向いてない』(応募時のタイトルは『異形性変異症候群』)が単行本で刊行されます。

そして、前回の座談会で話題となった『異セカイ系』が、第五十八回メフィスト賞に!! こちらの作品は夏くらいの発売をめざして鋭意改稿中です。かつて「セカイ系」を愛した人々に、また、今、普通の小説では物足りない、という読者の方々にこそ、読んで欲しい鋭く尖った物語です。

どれもエンタメ感溢れる傑作なので、ぜひとも読んでください。今回はHP上の二〇一七年九〜十二月分の応募作を選考いたしました。「座談会」および「もうちょいで座談会」で取り上げられなかった作品は残念ながら選外です。それではシャーロック・ホームズ像目指しての応募をお待ちしています!

『毎年、記憶を失う彼女の救いかた』 望月拓海

『閻魔堂沙羅の推理奇譚』 木元哉多

『コンビニなしでは生きられない』 秋保水菓

『人間に向いてない』 黒澤いづみ

『異セカイ系』 名倉 編

 

 

(メフィスト2018VOL.1 より)