『友達未遂』あとがきのあとがき/ 宮西真冬

 

 

『友達未遂』は、メフィスト賞に初めて応募した『秘密の花園』を、改稿・改題した作品です。


主人公は全寮制の女子高に在学する四人の少女たち。それぞれが悩みを抱え、葛藤する中で、小さな事件が起きていく、というストーリーで、この世代の子達はもちろん、かつての少年少女にも共感していただける物語になっていると思います。


舞台となる女子高には、美大への進学を目指す美術工芸コースがあるのですが、実は私も、似たような高校で美術を学んでいました。子供の頃から絵を描くのが好きで、何か大きな覚悟や決意があったわけではなく、漠然と進学したのを覚えています。


ですが、高校生活は、とにかく、苦しかったです。


中学生の頃はただただ、絵を描くのが楽しかったのに、高校に入学した途端、それに優劣をつけられ、競争させられ、時には怒鳴られ、次第に、絵を描くことが嫌いになっていきました。


何を甘えたことを言っているんだ! とお叱りを受けてしまうかもしれませんが、自分の才能の限界というものを突きつけられた気がして、とにかく、苦しかった。


高校三年生になる頃には、「自分は絵で食べていけるはずがない! 何か他の道を探さなければ!」と思い、大学では映画制作を学び、物語を作る楽しさに目覚め、卒業後、一人でもできる小説の執筆・投稿を始めたのですが……。


また、ここにも大きな壁がありました。


何度投稿しても、箸にも棒にも掛からないのです。


気がつけば、大学を卒業して十年程の時が流れていました。
「自分には才能がないのかもしれない」という思いが、幾度となく、頭をよぎりました。――小説家になるなんて、夢のまた夢なのかもしれない……。


この作品で、何のお声もかからなかったら、諦めて、また何か別の夢を探そう。


そう思いながら書いたのが『秘密の花園』改め、『友達未遂』です。


主人公の一人は、天才とも言うべき後輩が現れたことに恐れ、自分の才能を疑い、悩みます。それは、私がかつて感じた葛藤であり、執筆していた時も感じていた恐怖です。


初稿を完成させた時「この作品は今までとは違う」と手前味噌ですが、感じました。これまで自分が生きてきて、感じたことや、考えたことが、詰まっているような気がしたのです。


投稿した後は、とにかくやりきった、という気持ちでいっぱいでした。普通だったら気になるはずなのに、結果が載る『メフィスト』の発売日もすっかり忘れていました。


そんなときでした。編集の方から「座談会に載ったのは、もうご覧になりましたか?」と電話がかかってきたのは。


驚きと、喜びで、とにかく震えました。拾ってくださってありがとうございます、とここに感謝を述べさせてください。


もし、小説家になりたいと思っている方がいらっしゃったら、ぜひ、挑戦してみて欲しいと思います。


今まで出逢った編集者の方達は、少なくとも、高校時代の先生たちに比べたら、優しく、親切で、でも情熱的な人達ばかりです。

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宮西真冬(みやにし まふゆ)

1984年山口県生まれ。関西在住。
2017年に第52回メフィスト賞受賞作『誰かが見ている』でデビュー。2018年に第2作『首の鎖』を刊行。2019年の第3作『友達未遂』は約20紙誌で激賞される。
書き下ろしの小説を来年中にお届けするために執筆中。